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colums会長のコラム

会長のコラム 214

6月のコラムです。新型コロナによる非常事態宣言は、解除されましたが、予定のコンサートは、全てクローズのままです。この機会を利用して、手持ちのレコード コレクションを超音波洗浄機で洗浄し、整理に掛かっています。超音波洗浄には、1枚当たり凡そ6~7分係るので、その間、あまり積極的に読まないレコード ジャケットを読んでみると実に面白い事に気が付くのです。評論家に依る違う角度からの解説は、勉強になって面白く読んでしまいます。「今さら、何を言ってるか」と言われそうですが、会社の起業から始まった者の性で、仕事優先の癖が、コロナのお陰?(本当は個人の性ですが)で、新境地を発見、楽しみが増えたのです。自分が介護の身になったときを考えたりして、「待てよ、今の俺の立場では、考え過ぎではないか」、「いやそれは無い」、などと行き来するサマは何とも、恥ずかしい限りであります。
整理作業中のご利益として、モーツァルトの協奏交響曲KV-364のアナログ盤を見つけました。ワルター・バリリとウイーンフィル版を発見すると、確か? レイチェル・ボッチャーのCD盤が有った筈と思い、早速比較試聴するのです。バリリ盤は、テープ音源をLPに リカットしたモノーラル版。そして、ボッチャー盤は最新デジタル録音のCD です。
レイチェル・ボッチャーは、古楽器演奏の新進バイオリン奏者であり、バリリは第2次大戦時の招集回避のために、若くしてウイーンフィルのコンサートマスターに押された、天才バイオリン奏者であります。この2曲を聞き比べてみると、時代の違うこの二人の演奏に、私としたこと、涙が出て来るのですね。この曲には、バイオリニストと言われる演奏者は、大体レコードを残している名曲ですから、手持ちにも色々有って、珍しい曲ではないのですが、演奏界の両極を担う二人の演奏家に興味が有ったわけです。聴いていると、音楽を勉強していない我が身も満更では無いと思うに至るのです。バリリの時代を超越した演奏力、そしてボッチャーの古楽器奏法による現代感覚、いずれも素晴らしい表現力であり、モーツァルトが聞いたら何と言うだろうと、想像するのも楽しくなります。
録音技術も大きく異なる盤ですが、それを超越した感動が伝わるのです。オーディオ再生技術は、所詮音楽有ってのものであり、奏者の表現力には敵わない、改めて音楽の再生技術の在り方を考えさせられ、感動を新たにした次第です。
モーツァルトの凄さ、そして時代の異なる二人のトップ奏者の凄さ、と言っても二人の奏者と作曲者との時代差はもっと大きいのですが、何はともあれ、クラシック音楽に触れた者として、改めて感慨に耽る体験は、どうやら私の老後生活、いや余生の過ごし方に目覚めた気がするのです。
本コラムは、これ以上の材料が見当たりません。今月は、以上を以てご勘弁頂き、これからも書き続けますので、宜しくご高覧頂けますようお願いし、終わりと致します。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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