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colums会長のコラム

会長のコラム 071

新年明けましておめでとう御座います。本年もご愛読頂けますよう頑張りますので宜しくお願い致します。
毎年、年末になるとオーディオ雑誌の各社は、その年に発売されたオーディオ機器メーカーの新商品の格付を行うイベントが行われ、記事として発表されます。対象となるメーカーはその評価に気を使う傍ら、年末の消費者の財布の紐の緩みを期待してデリバリー業務に追われます。
煩雑な年末を過ぎて、一息入れてみると世の中容易ならざる不況の深刻さに改めて気が付き、我が社の台所を預かる財務部からは悲鳴が轟いている始末。世情の悲鳴も嫌がうえにも聞こえてくるから、経営に携わる我々には必然的に縮み思考になってしまいます。
資源国としてその繁栄を欲しいままであったロシアもオイルの暴落によって経済は見る影もない状態であり、貿易黒字を溜め込んだ中国、インド、と共にロシアもその集めたカネの使い方を誤り、本来自国の経済発展に投資すべきところ、先進国の金融投資に走りバブルの要因を作ったと言われており、地球上まるごと不況の状況になりましたが、わが日本国は、国民の個人資産が豊富であるために、円高となりご承知のような、今のありさまであります。
不況だと、全ての物が売れなくなるのでしょうか。自動車なども高級車は大衆車 の減産量の半分程度であったり、高級レストランなどは客足が衰えていません。ただし、高級でも社用族の行くような特徴の無い店や高級車も社用相手の車は別のようです。
オーディオのような生活に関係の無い商品が不況だから売れないと言うのは説得力に欠けます。ユーザーの中には、社用族もいると思うので不況が全く関係無いとは言えませんが、売れない理由は先の高級品同様に理由は別にあるかも知れません。輸入品などは買い方で随分安く手に入ると聞いています。

人気のコンサートチケットなどは、かなり前から計画し手配しなければならないので、今回の様な急激な経済不況の場合、その場になって行ける状況では無くなってしまう事もあって、楽しい筈のコンサートや食事も却って憂鬱なものなってしまい、人間の諸行も複雑なものとつくづく思う次第です。
1月10日は、「佐藤しのぶwithベルリン・フィル八重奏団」と題するコンサートがみなとみらいホールにて行われました。このコンサートで「佐藤しのぶ」の歌う歌は、たったの三曲で、しかもオペラは「メリー・ウィドー」より「ヴィリヤの歌」の一曲だけと言う寂しさ。彼女の歌うヴェルディーやプチーニはもう望むのは無理なのでしょうか。1月10日といえば正月気分も抜けて厳しい現実を見せられる時期であり、その影響もあると思いますが何か裏切られた感じがして寂しい思いをしました。しかし、彼女の舞台は声は衰えたものの、その存在感は立派なものであった事を附記させて頂きます。
ベルリンフィル八重奏団に付いてですが、結成から70年以上と言うベルリンフィルのトップメンバーを集めて編成された伝統のある団体で、それだけに素晴らしい演奏でありました。特に第一バイオリンのロレンツ・ナストゥリカの音が際立っていました。そもそもこの楽器編成は、中世の宮廷お抱えの管楽バンドであるハルモニー・ムジークから発展したもので、当日演奏されたベートーベン七重奏曲はモーツアルトのディベルトメントを思わせるところがあり、これもベートーベンかと思わせる側面など興味深く聴くことができました。
1日おいて、1月12日に鈴木慶江と水口聡が出演するウイーン・シュトラウス・フェスティバル・オーケストラ(SFO)によるニューイヤー・コンサート2009と言うコンサートが同じ「みなとみらいホール」で開催されました。
前々日に佐藤しのぶを同じ場所で聞いていただけに、その存在感に雲泥の差を感じるものでありましたが、彼女はCDでブレイクしその年の紅白にも出演したので、知名度と集客力は抜群と思います。しかし、オペラ歌手としては大村博美や幸田浩子に一歩譲るものと思っています。
この長い名前のオーケストラ(SFO)ですが、一時的な寄せ集めのオーケストラの様に思っていましたが、30年の歴史を持ち特に音楽監督を務める指揮者のペーター・グートは、ヴァイオリンを弾きながら指揮をする名手でありまして、ウイーン音楽の伝統的様式を踏襲した正統派オーケストラとして認められているものだとのことです。このところ、生演奏と言うと神奈川フィルと新国立劇場の東京フィル、東京交響楽団を聴く機会が多く、久し振りに続けてヨーロッパのオーケストラを聴いてみるとその大きな違いを感じてしまいます。
え!その違いですか。それは一口に言って遊び心です。演奏と言う作業(?)に余裕があります。この二つのコンサートは、歌手の佐藤しのぶ、鈴木慶江、水口聡に惹かれて行ったようなものですが、結果としてこの二つのヨーロッパのオーケストラを聴けた事が、私にとって大きな成果でありました。

蝶々婦人の舞台(プログラムから引用)

今月の神奈川フィルの定期演奏会ですが、常任指揮者の現田茂夫の最後のコンサートでありました。演奏されたのは、コープランドの「交響曲第三番」でした、私は現代音楽を敬遠する悪い癖があり、暫く距離を置いて聴いていましたが、この曲、なかなか素晴らしい曲で特に第4楽章のファンファーレなど、曲もさるもの素晴らしい演奏に悦に入ってしまいました。この曲は、楽器の編成が大きくオーケストラで使用する大概の楽器が舞台に集められるのではしょうか、壮大で複雑な楽器編成は、オーディオ技術的に面白いのではないかと思っています。たまたま、CDの持ち合わせが無いので早速探してみる事にしますが、オーディオ機器の性能確認や録音の良し悪しを評価するには好都合な曲と思います。
さて、神奈川フィルの来期ですが、常任指揮者の現田茂夫の後を金聖響が就任する事になります。この人のコンサートは、人気があり切符の売れ行きも良いと聞いていますが、私は一度も行ったことが有りません。この人、他人の話ですが、在日韓国人の三世で韓国語が殆ど話せない大阪人だそうです。音楽的には小沢征爾の薫陶を受けており中々の指揮者と言われていますが、私は現田さんと神奈川フィルの関係を初期から知っている事もあって、ここを切り離す事は何とも複雑な心境であります、しかし、新しい時代を迎える神奈川フィルが楽しみで、大いに期待しています。

小田急線の代々木上原駅の近くに私の良く行くレストランがあります。ここのマスターはクラシック音楽好きで、客もその筋で集まっているようです。このレストランは決して広いスペースでは有りませんが、バックに流れる音楽の選曲によってマスターのセンスの良さが伺えます。実は、ここのオーディオアンプは当社のシグニチァシリーズの2A3シングルアンプで、このアンプを聞いて何人かのお客様が付いたくらいですから、ここのバックグランド音楽にも結構注目されているようです。
何しろ、スピーカーを置く場所が無いと言うオーディオ機器の設置には致命傷的な条件なのですが、ここは音楽を聴く場所では無く、食事をする場所であると開き直り、オーディオが前に出ないように考えた結果が今の状況です。私は、コンサートの帰りに良くここを利用しますが、特に新国立劇場の帰りは途中下車なので大変便利ですし、何と言っても、マスターに自慢気に今日のコンサートの様子を話したり、当日のプログラムを上げたりするのがとても楽しいのです。ここの料理は、繊細な日本料理をベースにした創作料理で、グルメの方に好評ですが、グルマンの方にはどちらかと言えば不向きでしょう。店内とアンプの写真を添付します。

2A3シングルアンプ レストラン ボンテの店内

1月最後のコンサートは、新国立劇場のオペラ「こうもり」です。このヨハン・シュトラウスⅡ世のオペラ「こうもり」は、毎年この新春の時期に公演される事が多く、良く観劇するオペラですが、何度見ても飽きないし、見るたびに新しい感激が生まれます。
今回の公演は、アイゼンシュタイン役がヨハネス・マーティン・クレンツレ、ロザリンデ役がノエミ・ナーデルマン、オルロフスキー公爵がエリザベート・クールマン、アデーレ役がオフェリア・サラ、と言うキャストでした。この4人の役がこのオペラでのキーとなるでしょう。このうち、アデーレ役のオフェリア・サラが2度目の新国立劇場出演で他の3人は初出演です。この初出演の3人は素晴らしい歌手で特にロザリンデ役のノエミ・ナーデルマンは、声は良いし容姿も言い分無く言う事なし。また、オルロフスキー公爵役のメゾソプラノエリザベート・クールマンも大変素晴らしい歌唱力、声量加えて容姿も良いので、このオペラの出来を左右するキー役の配置に喝采です。ただ、キー役の一人であるアデーレ役のオフェリア・サラが今一でした。お手伝い役には体格が良すぎるし、声量も他の2人に比べて落ちるし、出来栄えもあまり宜しくなかったようです。この役柄であればわざわざ外人を使う必要は無いのではと思います、この程度の歌手は日本人に沢山います。この辺りの配役人選は、何故外人なんだと多くの日本のプロの方々の批判を浴びる点ではないでしょうか。
しかし、前公演の「蝶々夫人」にしても、この「こうもり」にしても大変満足するものであり、この値段でこれだけの出しものは大変お得と言わなければなりません。
指揮は、アレクサンダー・ジョエルでドイツのオペラ劇場で活躍する実力者であり、東京交響楽団の指揮でも活躍しております。当日のオーケストラは、その東京交響楽団でコンサートマスターが何時も笑顔の大谷康子でありました。
新国立劇場の東京交響楽団はこのところメッキリ腕を上げており、「蝶々夫人」同様に素晴らしい出来でした。
この日の新国立劇場は、マチネでありまして、昼の劇場正面の写真を撮りました、また、マチネのポワイエもご欄下さい。

新国立劇場の外観 マチネのポワイエ風景

最後に、大事な事を忘れるところでした、1/22はステレオサウンド社のグランプリ表彰式に於いて、当社のフォノカートリッジ「P-1G」が、唯一アナログ部門として受賞しました。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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