会長のコラム 024
9月から10月にかけては、短期間での3つの大作オペラの観劇でした。しかし、充実したと言うよりも、些か満腹未消化の気配に終わっています。最初が9月4日のサイトウキネンフェスティバルに於けるシェーンベルグ「グレの歌」、オーケストラが大掛かりで演奏機会の少ない演目と聞いていましたが、正しく大掛かりで「まつもと市民芸術館」のオーケストラピットは演奏者が入りきれずにピットの仕切りを外して客席にはみ出した設定のため、演奏者の一部が客席から出入りする様でした。
このフェスティバルでのオペラ開演は、小沢征爾の実験工場と悪口を言う人もいますが、この大掛かりな演目は小沢でなければ資金や聴衆の動員などの条件を満たすことは出来ないでしょう。その意味では意義のあるフェスティバルであるし、逆にミーハー的、ブランド志向的価値が生まれ、その場にいる事自体に価値を感じてしまいます。
今年のフェスティバルでも、本当にミーハー的になっているような現象を感じてしまいます。ジャケットレスはまだしも、ランニングシャツに半ズボン、裸足にサンダルと言う姿の人を何人か見かけました、これだけでも優雅な気分は消滅です。熱心な人は大変な思いをしてチケットを購入しているかたわら、コネでチケットを購入し、話の種にと訪れる非常識者も多々居られるようですが、折角の世界的注目度の高いフェスティバルです、品格を落としたくないものです。
演奏に付いて語るのは止めますが、サイトウキネンがここ「まつもと市民芸術館」での公演は今年で2回目です。前回も少し気になっていたのですが、低音域が些かブーミーに感じてなりません。音響に関するかぎり、上野の文化会館が上ではないかと思います。
さて次に、国の税金で運営されている新国立劇場でのオペラ「ニュールンベルグの名歌手 」です。休憩時間も入れてのことですが公演時間が6時間に及ぶ大作です。毎度の事ながら、これだけの内容をよくもこの値段で出してくれるとの感激が先にはしります。このオペラ、随所 に名場面があり、断片的に演奏される機会が多く、お馴染みのオペラと言う事なのですが。たまたま、今年はバイエルン国立劇場の引越し公演も演目に加えておりラッシュ気味でしたが、全曲を通して聴く機会は、大曲であるが故に少ないオペラです。
このオペラは、ドイツ国粋主義的な要素があるものの素晴らしいオペラで、その「臭い」部分も、ノンポリ的な日本人には、丁度良いのではないでしょうか。演奏演出はもちろん、雰囲気、音響、ロケーション何をとっても言う事無しの超一流、世界に誇れるオペラシーンです。納税者の皆さん、行かなければ損ですよ。チケット購入のコツは、演目毎に4公演ほど有りますから、他人が行きにくい日や時間を選ぶことでボックスオフィスでも良い席を買う事が出来ます。
最後は、10月7日バイエルン国立オペラ劇場の引越し公演、上野文化会館でのヘンデル作曲「アリオダンテ」です。私が、本格的なバロックオペラを観るのは初めてです、オペラと言えばベルディーやプッチーニを連想しますが、それとは全く異なる異次元の世界です。カストラートを主役に置くのがバロックオペラの定番とかで、このオペラはヘンデルの油の乗り切った時期の正統バロックオペラと云えます。
全曲を通して流れる音楽はよどみ無く美しいものです、どこをとっても無駄が無く、その美しさは優れたBGMとして自宅に備ええたくなるソフトです。繰り返しになりますが、上野の文化会館はやっぱり素晴らしい響きです。私の生涯で印象に残るものが、不思議とこの文化会館での催しであった事を思うと、音響の素晴らしさと無縁では無いように思います。もちろん、今回のヘンデルのオペラ「アリオダンテ」も生涯に残る素晴らしいオペラでした。蛇足ながら、当日のオペラの終演が10.30で帰宅したのがAM:12.00、 翌日のゴルフは辛かった。
補足になりますが、今般フェーズテックでは下記の新商品を発表しました、我々は「3シリーズ」と称していますが、「1シリーズ」の性能を維持しつつ、多くの方々にアナログの素晴らしさを体験していただくために、製造技術を駆使して価格低下に努めた商品です。これから、暮れにかけて各オーディオ誌から紹介される事になります。