会長のコラム 208
12月のコラムです。
10月半ばに左眼が失明して以来1.5ケ月経過します、片目の生活に慣れないことも有って、諸事に煩わしさが伴い、イライラ続きに、さぞ周りは迷惑を被っているだろう、と思いつつも我儘を言っている自分の存在、そろそろ断捨離を実行しますか。
夜のオペラ観劇は、益々困難となり、シーズン通しで購入したチケットの内、マチネは良いとして、夜の公演は、いよいよ以て手に負えない状況に至り、社内の若手社員に勉強させる積りで行かせる事にしました。将来に繋がるとの思いは、気が楽になるから不思議です。
私の分ですか ? 実は、以前からマチネを希望する件を、劇場の事務局に相談していまして、賛助会員になって頂ければ、席にゆとりが有る時、席のグレードを選ぶことは出来ないが、買ったチケットとは別に都合してくれると言う事でしたから、賛助会員になった経過があり、今月はその1回目でした。購入した夜公演チケットは、若手社員に行くことになり、私はマチネにと、諸事ハッピーな結末になった次第であります。
その後、車の運転は控えていますが、眼鏡屋の技術者は、免許の書き換え時の検査は両目同時の視力テストで、片目毎の視力テストは無いから問題ないのでは ? と言う。確かに両目同時の視力テストでしたよね、それなら視力 1.0 だから問題無い。「そうだったなー」と言うことで、再度の運転チャレンジに練習する積りでいますが、周りの者は「やめろ」の大合唱。しかし私は、27歳から車に乗り続けて、新車を何台も乗り継いでいる。往時はゴールドの優良免許だ、問題無いような気がしているが如何なものか。
12月3日火曜 新国立劇場にヴェルディー/オペラ「椿姫」に14:00開演でマチネ公演に行ってきました。
前記の事情でマチネコンサートに変わり、マチネ公演に行ってみると、夜の公演と違い、何人かの懐かしい知人に会えました。やはり、我々世代の夜公演は皆さんも厳しいと言うことのようで、私もすこし安心しました。
当日の演奏は、指揮 : イヴァン・レプシッチによる東京フィルハーモニーの演奏、この人はザグレブ音楽院で学んだ後、バーデン州立歌劇場で大野和士などのアシスタントを務め、研鑽を積んだ人、成るほど新国立劇場初出場は、かくなる事からかと納得。
ヴィオレッタ : ミルト・パパタナシュ、この人はギリシャのラリッサの生まれ、ローマ歌劇場の「椿姫」公演にヴィオレッタ役でデビューし、今世界で最も評価されているソプラノ歌手のひとりです。新国立劇場には2度目で ’10年に「フィガロの結婚」伯爵夫人に出演していました。
アルフレード : ドミニク・チェネス、アメリカ生まれ、マリオ・ランツァ・コンクールなどで優勝している人です。ヴィオレッタ役のミルト・パパタナシュのソプラノがずば抜けているので、少し損をしていると思いますが、この人も中々の実力を備えていました。このふたりが外国人、そして、ジェルモン父には須藤慎吾が出演していました。この人の押し出しは、良いのですが、やはり、この役は少し無理なように感じます。なんと言っても、歴史に残る名歌手の面影を背負う役ですから、気の毒ですが、試練と考えるなら、良い機会でしょう。
12月7日土曜 神奈川フィル定期演奏会に14:00開演で行ってきました。
当日の演奏は、指揮が常任の川瀬賢太郎、コンサートマスターが石田泰尚、演奏曲目がワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」”第一幕への前奏曲”、とツィマーマン/ユビュ王の晩餐のための音楽 の2曲が前ステージ。そして後ステージがムソルグスキー展覧会の絵(ストコフスキー編曲)でした。
このコンサートは、常任指揮者の川瀬賢太郎のタクトで締め括る、’19年最後のコンサートとして、高揚を掻き立てるワーグナー、そして国や時代の境界を越えて変容する様子を示す曲として選んだ、楽しさ満載のコンサートと位置付ける選曲と、マイスター川瀬賢太郎の弁でありました。
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」はお馴染み、この上無く高揚を掻き立てるに相応しい曲であります。そして、ツィマーマン/ユビュ王の晩餐のための音楽です。この曲は、私の最も苦手とする形の曲でありまして、弦楽器はコントラバス、エレキギター以外に何も無く、管楽器主体で構成されます。それにパイプオルガン、ハープの構成で、現代音楽の、更に、前衛音楽でありました。
そして後ステージが、ムソルグスキー/展覧会の絵でした。この曲は、お馴染みでありますが、我々の良く知る曲は、ラヴェルの編曲と言われるものです。
作曲者のムソルグスキーの生存中には、演奏されたことの無い曲で、リムスキー・コルサコフが改訂して出版したものを、ラヴェルがこの改定譜を見て編曲したもので、自筆譜を見ていないと言われています。それ故に、この華麗なラヴェル版は、原曲の味を損ねていると言われています。
当日の演奏は、ストコフスキー編曲のもので、よりムソルグスキーの原曲に近いと言われています。しかし、ラヴェル版は人気があり、より膾炙されているのではないでしょうか。
我々アマチュアには、聞いて楽しければ良しと言うもの。
そのストコフスキー版は、凄いです、ラベル版とは受ける感動がまるで違います。例えば、「キエフの大門」は鳴り物を派手に用いて、弦合奏の豊醇なコラールを聞かせると言う壮大な音楽となっていて、素晴らしい曲でした。当然、楽器編成も大掛かりでマエストロの言う今年最後の演奏に相応しいものでした。
12月22日 日曜 ミューザ川崎ホールに14:00開演で、川崎市民交響楽団の市民第九コンサートに行ってきました。
ミューザ川崎ホールにて第九を聴くのは初めてであり、大太鼓の響きが如何なるものか、川響の演奏は如何か、大変興味を以て行ってきました。
始めに演奏されたのが、ワーグナー/「ローヱングリーン」より第一幕への前奏曲 でした。この短い曲の後に15分の休憩を挟んで、いよいよ第九の演奏なのですが、この短い前奏曲は、私の大好きな曲であり、この極めて難しい曲をアマチュアのオーケストラが演奏できる等とは信じがたい興味でした。しかし、川響は、見事な演奏でアマチュアとは思えない演奏に、すっかり感激してしまい、やるもんですね、川響さん。
そしていよいよ、年末最後の〆は、やはり第九であります。今年は、川響のミューザ川崎ホールでの演奏です。神奈川フィルも第九の演奏を毎年定番としていますが、神奈川県民ホールでの演奏なので、ここには行きません。ミューザ川崎での第九は初めてであり、川響に興味を持ち、応援もしたいとの思いから行ってきました。
ソリストの4人は全てプロです、合唱は川崎市民の有志で、なんと280名であります。相当の時間をかけて練習したと聞いておりまして、流石にその迫力はすごかった。そして、私が気にする音響です。合唱途中で入る大太鼓の音、こんな変な太鼓の音を聴くのは初めて、何か電子楽器を使ったのではないか、後に続く大太鼓の音も殆ど聞こえない、このホール何が如何してこうなるのか。それはともかく、演奏者には惜しみない拍手を送っており、この点は私も同様でした。