会長のコラム 188
4月のコラム 188です。
今年の桜開花が例年より早く、毎年恒例の花見レストランの予約日は、開花にミートせず50%散っていました。それでも、この隠れ家的レストランは満席状態、常連のグルメ仲間と楽しい食事会となりました。
前号187 にて、拙宅のマルチチャンネル・アンプ・システムをご紹介するとお約束しましたが、年度始めの4月は、時節柄コンサートが多く、この関連の事案を優先させて頂き、拙宅のシステム紹介は別の機会に改めさせて頂きます。
4月2日 「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」と言うコンサートがオペラシティー・コンサートホールにて行われ19:00開演で行ってきました。
このコンサートは、トヨタ自動車の主催で、東京、名古屋、豊田、福岡、北海道で行われ、トヨタ自動車の企業メセナを掲げたコンサートでした。
チケットは音楽関係の方から頂いたもので、コンサート当日の小学生の子連れ客をみるに至り、トヨタのセールス活動の一環で軽いものと疑ってしまいました。しかしそれは、とんでもない誤解であることが判明した次第。どうして、どうして、半端なコンサートでありませんで、企業メセナの見本のような素晴らしいコンサートでした。反省を兼ねて少し詳しくレポ-トすることにします。
「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」の音楽監督は、ウィーンフィルのコンサートマスターを務めるフォルクハルト・シュトイデで、当オーケストラのコンサートマスターも務めています。オーケストラは、チャンバーオーケストラの規模で、バイオリンの第一、第二合わせて8名、ヴィオラ、チェロがそれぞれ3名、コントラバスが2名、フルート2名、オーボエ、クラリネットが各2名、その他ファゴット、ホルン、トランペットがそれぞれ2名、ティンパニー1名と言う構成。
オケ・メンバーは、ウィーンフィル、ウィーン交響楽団、ベルリン・フィル、などのメンバーで構成されています。音楽監督の裁量で招集されたものでしょう。指揮者は、置かずにコンサートマスターの弾き振りの演奏にすっかり酔ってしまいました。
選曲も適切で、前ステージが、モーツァルト/オペラ「フィガロの結婚」序曲、伯爵夫人が歌うソプラノのアリア2曲を続けて、安藤赴美子が歌い、これが、飛び切り素晴らしかった。そして、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」のアリア「あの恩知らずは私を裏切り」、最後に交響曲第41番「ジュピター」と続きます。どうですか、この硬軟交えた選曲、しかも選りすぐったプレイヤーの演奏です。普通に接するコンサートや正月公演のウィーン・シェーンブルン・オケとは次元が違いました。
後ステージが、J.シュトラウスⅡ世、ヨーゼフ・シュトラウス、レハール/「メリー・ウィドウ」等で、大太鼓の無いステージにマッチした選曲も流石と言うもの、演奏がまた世界トップレベルの最高のものでありました。
このコンサートは、ウィーン国立劇場のスポンサーたるトヨタ自動車でなければ、出来る内容ではありません。私も元気な時期には、ウィーン楽友協会ホールに足を運びましたが、旅行の疲れもあって、鑑賞力の感度は鈍くなります。普段の生活環境で聞くこのようなレベルの高いコンサートは、特別な贅沢と改めて感じ入った次第です。
4月5日 新国立劇場にて、 新国立劇場20周年を謳う、ヴェルディ/オペラ「アイーダ」に 18:00開演で行ってきました。
指揮者は、パオロ・カリニャーニでこの人は、イタリア生まれヴェルディ音楽院を出て、ウィーン国立劇場、メトロポリタン歌劇場、バイエルン州立歌劇場など世界一流劇場の常連指揮者です。
アイーダ役のソプラノが、イム・セギョン 韓国人です。イタリアを主に活動している人で、素晴らしいスピント・ソプラノ、 その声量がスバ抜けていました。新国立劇場初登場であり、噂には聞いていましたが私は初めて聞くすごいソプラノ歌手でした。
ラダメス役のテノールがナジミディン・マヴリャーノフ 新国立劇場初登場、ウズベキスタンの出身でヨーロッパの歌劇場で活躍している人気歌手の一人です。
アムネリス役のメゾソプラノがエカテリーナ・セメンチュク、ヨーロッパを始め、米国メトロポリタンなど世界一流歌劇場にて活躍している人で、この人も新国立劇場初登場であります。
今時点の世界で活躍する旬の歌手が、所属に関わりなく出演する舞台は、新国立劇場ならではと言うことでしょう。この3人が、外国人で残りすべてが日本人歌手でした。中でもランフィス役のバス 妻屋秀和は変わらずの素晴らしい歌を披露してくれました。
このオペラの舞台装置は、何時ものことながら、大規模なものでした。何が飛び出すのか、その規模と言い、出てくる動物などにも注目が集まるのですが、今回は2頭の馬でした。
舞台装置が大掛かりのためと思いますが、上演時間が3時間50分でその内、休憩が3回で25分、35分、20分と計80分となり、18:00開演で終演22:00ですから、食事の時間が無いのは毎回のこと、帰宅してから例に依ってでありました。
私、新国立劇場の来年度シーズンも既に、初日公演を手配済で来年も同じような観劇パターンになるのです。最近は、この夜の鑑賞に少し疲れを感じるようになり、次のシーズンからはウィークデイのマチネを選ぶことを考えています。
今の申し込み方ですと、誰よりも早く案内パンフが送られ、初日公演に丸だけ付けて、申し込みに手間いらずです。これが良い席を宛てがってくれる理由と思うのですが、そうなると良い席ばかりとは限らなくなるかも知れません。鬱陶しい案件であります。
4月7日土曜 みなとみらいホールにて神奈川フィル定期演奏会に14:00開演で行ってきました。新シーズンの開幕第1回目の演奏会となり、常任指揮者の川瀬賢太郎の特別な思いによって選曲された、バーンスタイン特集でした。
前ステージが、華やかでバーンスタイン的な曲「スラヴァ!」(政治的序曲)で始まりました。次に「ウエスト・サイド・ストーリー」よりシンフォニック・ダンスでした。この曲は、バーンスタイン自身が映画の音楽から編曲し、オーケストレーションしたもので、映画の印象的な場面を喚起する部分を自身でつなぎ合わせ、コンサート向けに聞かせる作品になっています。
後ステージは、交響曲第一番「エレミア」でした。バーンスタインは、アメリカ生まれ、両親がロシア系ユダヤ人の移民で有ります。アメリカ生まれと言うことで、その作品はアメリカ的との印象が強いのですが、クラシック音楽の指揮者として数多くのオーケストラを指揮した名演が残されていて、この人の豊かな才能を偲ぶもので有ります。
しかし交響曲の作曲者としての知識は、私、持ち合わせませんで、解説書を読むと交響曲などにはユダヤ教に纏わる歴史的要素を多分に含んだ作品と記され、作曲当時はコンクールに応募するも入選から漏れ、その後フリッツ・ライナーが演奏に取り上げる計らいをしてくれて、初演が成ったと言う経緯や、その時期がナチスのユダヤ人を虐殺した時期と重なり、作品の意味が重く感じられるようになったと記されます。その第一楽章「予言」はティンパニーと弦楽器の不協和音に始まり、ホルンがユダヤ教の朗誦のカデンツァを主題としていると言うのです。
この曲は、何と言ってもバーンスタインの作品で有ります、ユダヤ人でない私に理解出来るのか、これからレコードをゆっくり聞いて含蓄を試みたいと思います。
シーズン開始は、恒例のホワイエでの乾杯式があり、最近特に人気が出てきた指揮者 川瀬賢太郎も定期演奏会メンバーと乾杯で、4月は楽しさに溢れた忙しさでありました。
4月15日 日曜 14:00開演で川崎市民交響楽団の演奏会に多摩市民会館に行ってきました。このオーケストラは、川崎市民で構成されたアマチュアです。何故わざわざアマチュアオーケストラを聞きに行くのか。
実は、私、微力ながら神奈川フィルハーモニーを応援しており、ここの渉外担当をしていた人が神奈川フィルの仕事を辞めて、趣味のチェロ演奏に専念するというのです。この方は、横浜銀行を定年退職されて神奈川フィルの仕事をされていたのが私との関係で、この新しい門出を祝ってお付き合いしたということです。
アマチュアのオーケストラ演奏は、内容の割に安価と言うこともあり、若い時期は私も将来いつの日かとの淡い希望を持って、度々聞きに行きましたが、ここ永い事行っていませんでした。
しかし、この川崎交響楽団はすごい演奏力で驚きました。私の知るアマチュアのレベルを遥かに超えるものです。しかし、所詮アマチュアですから欠点は色々あるものの、音楽を聴く初心者には実に打って付けの鑑賞機会と思いました。聞いていて、何か私の気が付か無い音楽の「心」のようなものを感じてしまうのです。隣の席で家内はいつも以上に真剣な眼差しで聞いていました。
当日の演奏曲目が、メンデルスゾーン/交響曲4番「イタリア」、グリーグ/ピアノ協奏曲、シベリウス/交響曲5番、以上3曲でした。
ピアニストの伊藤 千晶さんは、洗足学園大学出身のプロですが、ステージ慣れしていない初々しい姿が印象的でありながら、全身全霊を向けた演奏には、観客の熱い拍手を浴びていました。多分フルオケとの共演に経験が浅いのでしょう、それが返って演奏に集中するエネルギーとなり、久しぶりに清々しい思いにいたりました。
このオーケストラの指揮者は、三原明人と言う方で、芸大の先生を務めて居られるとのこと、芸術への思いを込めた教育者の成果の現れと感じ取れました。
普段プロ演奏の完璧なものを聞いている為か、アマチァ演奏にはプロと違った「心」のようなものを感じ取れます。特にシベリウスの交響曲5番は、シベリウスらしからぬ曲との印象が強く、私ともあろう者が、改めてこの曲の素晴らしさを認識させられると言うお粗末な結果も呼び起こされた次第です。
多摩市民会館は、当社の防衛機器の受託事業所だった場所の近くであることに気が付き、その存在を全く知らなかったと言うお粗末ぶり。このホールは、900人足らずの収容客で、その容積が音響に良い結果を生んでいると思います。とても素晴らしい音響効果と感じ入り、なにかと、狭くなりがちな視野を持つ自分の性格に反省しきり(反省ならサルでも出来ると言われますが)でした。
オーケストラ・メンバーのなかで、特に管楽器には個人のレベル差が顕著に表れます。音外しとかの致命的ミスは別として、それが返って温かみを醸すように感じる、指揮者の手腕もあるのでしょうが、この川崎市民交響楽団にはエールを送り続けたいと思うのです。
コラム188 を夢中で書いている間に大分長くなってしまいました。以下簡略化して事象お話ししますので、もう少しお付き合い下さい。
ミュージック・ペンクラブ・ジャパンが今年50 周年を迎えるとのことで、過去に表彰された人のなかから、選択して寄稿を依頼したとの事で、私にも寄稿の依頼があり、それに依って記念パーティーに招待され、出席して来ました。
招待者には作曲家、演奏家、指揮者などの音楽関係の錚々たる方々で、とても私など場違い的存在でありました。それでも、私が大好きなバッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木優人とはFMの朝番組の話題などでの懇談や、一緒に写真を撮ったりで、ミーハー的と言われそうな行動ですが、生涯の喜びで有りました。
4月19日 私が入居する介護付老人ホームに往年の日本ジャズ界を盛り上げた人達がコンサートを以て訪問されました。
メンバーは、歌手が伊藤ゆかりと娘の宙美(ヒロミと読むそうだ)、バックにドラムの原田イサム、ピアノの秋満義孝、ベースの谷口雅彦、その他サックスが1、トロンボーンが1、と言うクインテット構成、我々学生時代のダンスパーティーのあこがれの構成を以て訪れてくれました。歌手とのコンビには少し違和感を覚えるものの、何とも粋な計らいに元気が蘇った次第です。
今月は、28日 土曜と29日 日曜の2日続けて みなとみらいホール にて神奈川フィルメンバーによるコンサートが続きます。4月は、友人の突然死なども有って、ボケの暇がない状況で、このコラムやっとの思いで書き上げました。
30日 月曜から5月6日迄の連休を入れると9連休になります。月末を待って当コラムのアップとなると、5月の初旬を過ぎるので、4月のコラム188はこの辺りで〆させて頂きます。