会長のコラム 055
2月初旬は、寒い日が続きました。皆様には、お変わりありませんでしたでしょうか。私は、寒い中相変わらずコンサートライフを続けておりました。
始めに、2月1日に上野の東京文化会館小ホールにて行われた「加藤えりなヴァイオリンリサイタル」をレポートします、このコンサートはオーディオ評論家の角田郁雄氏の進めによるもので、私は存じ上げないアーティストでして、氏の特別な思いが込められた催しと察知いたしました。
当日のプログラムによると、「加藤えりな」氏は東京芸術大学付属音楽高校を卒業後、海外の音楽学校を終了され、数多くの世界的なコンクールで優勝を果たしておられます。彼女の演奏は、流石と思える腕の持ち主で久し振りに新鮮な感動を覚えました。
翌日は、「よこはまみなとみらいホール」にて諏訪内晶子さんのコンサートがありまして、演奏の比較に良い経験をしましたが、諏訪内さんはチャイコフスキーコンクールに最年少で優勝されて既に18年が経過し、世界を舞台に活躍されている方ですから、加藤さんとは比較の対象には成りませんが、意地悪な目で比較鑑賞していまいた。
このコンサートは、ユーリー・バッシュメット率いるモスクワ・ソロイスツ合奏団のコンサートで諏訪内さんがゲスト出演しているものです。諏訪内さんの舞台は流石の貫禄です。それに、これぞ諏訪内と言う独特の味を持っています。この「味」を聴きたくて駆けつけるファンがいるわけで、新人ソリストとなるとその集客力に差が出るのは当然のような気がします。「ザ・加藤えりな」として、強調する魅力ある「味」が欲しい気がします、加藤さんの今後の期待を祈りつつ両会場を後にした次第ですさて。
当日の主役のユーリー・バシュメット率いるオーケストラですが、なかなかの芸達者な人たちの集まりで、弦楽器の音色の美しさとアンサンブルの素晴らしさは、昨年の「パノハ弦楽四重奏団」を思わせる何かを感じさせ、渋い存在ながら今後が期待出来るものを感じました。
新国立劇場の2月公演は、R・シュトラウスのオペラ「サロメ」でした。この人のオペラは、「ばらの騎士」もそうですが不協和音を多用しつつも素晴らしいメロディーが全編に流れる何とも言えない妖怪を思わせる世界に聴衆を引き付けるものがあります。これぞ、爛熟したヨーロッパの世紀末文化の表れと言うのでしょう。
専門家で無い私ですが、このオペラの演奏はたいへん難しいのではないかと思っています、当日の東京交響楽団は素晴らしい出来栄えでした、指揮がトーマス・レスナーでこの人スイス・ビール交響楽団の音楽監督を務めており、当日の東京交響楽団の好演もこの人の影響が多かったのでしょう。ちなみに、当日のコンサートマスターは相変わらずの笑顔の大谷康子でした。
2月16日は、ジャズプレーヤー、クラリネット奏者の北村英治の「旭日小綬章を祝う会]が帝国ホテルで行われました。私は、横浜のライブハウス「バーバーバー」での北村さんの演奏を聞きに行ったときに誘われたのですが、大変な大掛かりなパーティーで北村さんご自身のウェルカム演奏で会場に案内され、終演まで出ずっぱりの熱演には感激でした。
雪村いずみ、阿川泰子、ウイリー沖山、その他有名歌手の賛助出演あり、その上「スイングスイング」の演奏中など、飛び入りでジョージ川口の息子がレギュラーの八城邦義に取って変わってのプレーなど、ドラム合戦さながらで普段見せない芸能人の素顔をみることが出来ました。「立川だんし」の祝辞などは腹を抱えて笑ってしまうありさまで、入場料を払う舞台では味わうことの出来ない良い体験でした。
私が贔屓にしている音楽好きのオーナーのレストランが代々木上原にあります、ここには、オーナーの希望で、私が真空管アンプと部屋にマッチするスピーカーを組み合わせたシステムがセットされています。ここのお客様にはプロの音楽家や愛好家が多く居られ、その中で神奈川フィルハーモニーの主席コントラバス奏者の黒木さんもそのお一人です。
その黒木さんが、2月24日に此処でCDとプロジェクターを使ってレクチャーとライブ演奏をされました。バロック音楽の発生から完成に至る過程を素人にわかり易く面白く魅力たっぷりのお話で、初めてお会いするレストランの常連さんとも分け隔て無く話が弾み、優雅な時間を創り出す黒木さんの人柄のなせる技、いつ時が過ぎたのか気が付いたら帰宅が御前様でした。
このレクチャーシリーズは、この後3回ほど続くと言っておられるので、これから益々楽しみです。