会長のコラム 235
3月のコラムです。
当社が、オーディオ事業を始めて、今年で20周年となります。
当初は、「フェーズ テック」のブランドでスタートし、カートリッジ、ステップアップ・トランス、イコライザー・アンプ、CDプレーヤーなどの品ぞろえでした。やがてブランドが国内で認知され、海外展開を試みると、北米でのブランド登録が出来ないことが判明し、急遽全地域統一を目指し「フェーズメーション(Phasemation)」に統一して、再登録した経緯があります。
因みに、「Phasemation」は私の作った造語で辞書に有りません。音場空間表現を重視し、それを位相忠実再生に依って表す事、ここを重視したい思いからの発想です。
国内事業は、フェーズ テックとして順調に市場認知が得られていたので、「フェーズメーション」へのブランド移行は、世界統一ブランドを目指すとは言え、伴う損失は大きな負担となり、躊躇しました。しかし、結果は担当社員の協調と協力を得て、順調に推移し今日に至っており、私は幸せ者と感謝で有ります。
オーディオ事業発足時の商品が、フォノ・カートリッジの「P-1」であったことから、20周年記念商品は、ダイヤモンド・カンチ・レバーを用いたフォノ・カートリッジと必然的に決まり、開発を進めてきました。開発作業は順調に進み、纏めの段階に至っておりますが、ここに来て、ロシアによるウクライナ侵攻で、部品のサプライ・チェーンはズタズタとなり、発売に漕ぎつけるのか不安な状況にあります。
ダイヤモンド・カンチ・レバーの良さは、先行メーカーの実績からも、公知の事実でしたが、当社のスタンスは、ただ単に置き換えただけではなく、伴う磁気回路の見直しから始まります。そこには、光悦の菅野さんから伝授されたもの、JVCのトップ技術者であられた菅野さん(前者はスガノ、後者はカンノと読みが違う)から、このダブル菅野の手によるもので、そのノウハウは世界トップと自負する独自技術を有し、世間で言う一口にダイヤモンド・カンチ・レバーと言う事以上のノウハウが込められた高音質品となります。
そして、実務を進める若き斉藤(英)さんは、これまた開発部長の斉藤(善)さんと共に、ダブル斉藤であり、その再生音からは、オーディオ再生の原則と言える、有るべき姿が浮き彫りとなり、改めてオーディオ機器の原点を見出し、その成果を語らずに居られない心境に至たっています。
私の住む高齢者住居に、書斎用として居住と別に一室借り受け、極一般的なご家庭の試聴環境をシュミレイトした試聴環境を作っています。此処でのラインアップは下記となりますが、決して奇をてらった高額商品ではありません。
レコードプレイヤー | : EAT (ベルト・ドライブ) |
ステップアップ・トランス | : T-2000(当社製) |
イコライザー・アンプ | : EA-1000(当社製) |
コントロール・マイスター | : CM-2000 (入出力セレクター、パッシブATTで構成されたコントローラーの当社製) |
パワー・アンプ | : MA-1500(当社製) |
スピーカー | : ハーベス (スーパーHL5) |
このシステム構成で、カートリッジをPP-2000 から試作品のダイヤモンド・カンチ・レバーを用いた開発品に変えて見ると、何と! ハーベスの低音再生音のダンピングが変わり、見違える再生音となるのです。中・高域の音質改善は予想していましたが、低域再生音のダビングの利いた低音、ブラインドで聞くとハーベスとは思えない大型ウーファーを備えた装置に大化けするのです。因みに、ここでのハーベスは、「スーパーHL5」で、一世代前のものです。この予期せぬ結果に理論武装をと考えるのですが、今のところ何とも言いようの無い状況で、年寄の私には術が無い。これは「冥途の土産にするか」の心境であり、オーディオは益々止められない、いや「音楽鑑賞は止められない」です。
今月の音楽ライフです。
3月5日(土) 神奈川フィル定期演奏会、そして今シーズン最後の定期演奏会、加えて常任指揮者川瀬賢太郎が8年務めた職責の最後の公演、更に加えて神奈川フィル50周年記念コンサートでもある、記念すべきコンサートに行ってきました。コロナ禍の下での公演は、本当にご苦労な公演であったと思います。
演奏曲目が、ラフマニノフ/ピアノ協奏曲2番。そして後ステージがマーラー/交響曲1番でした。このコンサートは、ダブル記念と言う事もありましょうが、何と言ってもラフマニノフのP協を、小曽根真が弾くことにありました。この話題の多いラフマニノフのP響を小曽根が弾くのです、これはもう興味津々と言うもの、ジャズ演奏家として有名、特にチック・コーリア、ゲイリー・バートン、ブランフォード・マルサリス等との共演は特に有名であり、その演奏には熱狂的ファンが大勢おります。
氏が、クラシックを奏することは知っていましたが、弾く曲がラフマニノフ/P協です。これまた興味津々でありました。この曲に付いては、私事として書きたい事が多いのですが、ここでは遠慮する事にします。
後ステージのマーラー交響曲1番、これも話題の多い曲で特に楽器の大太鼓、コントラバス等の低音楽器の出番の多い曲で、オーディオ・マニアの良く聞く曲であります。残念な事にここ神奈川県民ホールは、音の響きが悪く、特に大太鼓の音などは、本来あるべき風の様な重低音である筈の音が「コン・コン」と聞こえるのです。それでも、当日の演奏は、指揮者、団員共に気合の入った演奏で、「素晴らしい」の一言、川瀬賢太郎の最後を締めくくるに相応しい演奏でした。常任指揮者として8年の任期ご苦労様で、神奈川フィルハーモニーのオーケストラ人気ランクを上位に持ち揚げた功績に感謝であります。
3月16日(水)14時開演で新国立劇場にオペラ/ヴェルディ「椿姫」に行ってきました。
当日の指揮者が、アンドリー・ユルケヴィチ、この人はウクライナ人で東欧オペラ劇場の音楽監督を務めたあと、ドイツ、イタリアなどヨーロッパでの演奏機会が多く、新国立劇場へは19/20シーズンの「エフゲニー・オネーギン」以来2度目の出演です。そして、衣装、美術、照明などのサイド・スタッフは全て外国人でした。
キャストは、全て日本人、過去の実績ではドップ3人の主役は外国人が定位置でしたから、コロナ禍の影響と思われるものの、ヴィオレッタ役が中村恵理で、この人は新国立劇場オペラ研修所を終了し英国ロイヤルオペラに在籍し、アンナ・ネトレプコの代役を務め成功を収め、ヨーロッパでの活躍が多い人で、新国立劇場に出演の多い人です。当日のヴィオレッタ役は素晴らしく、事前の情報が無ければ、歌唱と言い、体格、演技など外国人歌手と思ってしまう程の素晴らしい歌唱は、日本のオペラ界も外国人に頼らなくとも充分に熟せる時代になったのでしょう。日本のオペラ界も極めて楽しみなオペラ環境を作りつつあると感じます。
日本のオペラの殿堂として、ヨーロッパ、米国などで見られる、社交場のオペラハウス、正装で行くステイタスの表現、文化の殿堂になりつつある姿が頼もしい。
余談として、当日のオーケストラは東京交響楽団で、コンサート・マスターがグレブ・ニキティン、知人の情報では、ロシア人との事。たまたまの結果でしょうが、指揮者とコンマスの関係微妙です。後で知ったことでも後味が悪い。東京交響楽団のポリシーとは関係無いのでしょうが、観劇の前に知らなくて良かった。これは、余計な事かな。