Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 216

8月のコラムです。つい先日まで「今年の梅雨は、長いね、何時明けるのだろう」と話していたのが、梅雨明けと同時にこの暑さ、熱中症で亡くなる方が、コロナで亡くなる方より多い、やがて人が住めなくなる程に、地球は病んでいくのだろうか。
今月は、神奈川フィルの定期演奏会が再開されました、予定された指揮者や曲目が入れ替わっての公演となり、スタッフの方々の並々成らぬご苦労が滲んだ企画に、感謝であり、有難さが身に染みました。生演奏を聞かない事には、コロナ禍のストレスも加わって、おかしくなりそうです。
オーディオは、所詮人工のもの、「生らしさの表現」の再生を求めるツールと考えるなら、
そこから受ける感動は、時代と共に、技術進化と共に、そして個人によって変わるのは当然と考えられます。
昭和50年代のオーディオ界は、マルチチャンネルシステムが、マニア諸氏の流行であり、憧れでした。その時の私は、サラリーマンからスピンアウトし、起業の初期で、仕事に追われ、音楽を聴く環境では無かったのですが、マルチチャンネルが究極のオーディオ装置と言われた時代を、横目で眺めつつ、近い将来俺もやるぞとの思いでいました。
そして今、「フェーズメーション」ブランドのオーディオ事業を指導する立場となり、その商品化に向けた作業中ですが「出す、出す」と言いつつも、なかなか出て来ない、その現状をお話する事にします。
我々の求める「音」は、コンサートホールで聴く音楽を、「如何にそれらしく再現するか」に焦点を絞ることにあります。つまり、ステージ上の楽器の位置、左右、奥行き、高さ、などの方向感を表現させることにあります。
オーディオ機器に求める価値も、今ではこの方向に集約されています。しかし、先の50年代当時の技術を振り返ると、懐かしさは感じるものの、今では指向の異なる代物と化し、懐かしさとは言え、何とも言いようの無い心境に至るのです。
当時のオーディオ評論家先生も、「誰々さんの音は、駄目だ!」などと、先生方同士で意見の違いを誌上で論戦していました。この事は、「何を以てステレオと言うのか」の基本思考が無かったからで、読者も面白く記事を読ませてもらったものです。例えば、作家であり、オーディオマニアの五味康祐が、紙上で評論家に噛みつく記事などは、面白くもあり、オーディオが白熱した佳き時代でした。
今求められる機器への価値は、音場定位を求めることにあると考えます。市販されるスピーカーは、音場定位を求める事から、トールボーイ型が圧倒しています。そして、この手のスピーカーは、アンプの高性能化を求め、設置する部屋環境などにも条件を求められます、それによる再生音への影響が大きいのです。そして、スピーカーに求められる技術は、理論的思考よりも、経験から来るカット&トライの範疇となり、我々回路技術者やアマチュアには、手の届かないデバイスとなっています。
そこで、スピーカーのマルチチャンネル化へと思いが馳せるのです。しかし、この方式は、停滞期間が長かったことから、この用途向けのスピーカーユニットの製造中止傾向にあっています。更に、デジタル指向による、理論優先の傾向が先行し、我々アナログ派が、気張らなければと言う状況に、思いが至るのであります。
この辺りの事情も詳しくお話しなければなりませんが、長くなるので機会を改める事にします。
私が、毎度申し上げるように、スピーカーとアンプの間には、ネットワークと言う厄介なデバイスを介入せざるを得ない技術的事情から、スピーカー技術はカット&トライの範疇となり、加えて、音場定位を求めることから、スピーカーボックスがトールボーイ形状に化し、低域再生が難しくなる。これらの問題に鑑みると、私はマルチチャンネル方式の導入が、将来ともに必須であると考えています。
先日、この実験中に不注意から、重低音再生用のスピーカーユニットを過入力で、破損させてしまい、ユニットの修理はしたものの、前の様な音は望めなくなってしまいました。この事故から、チャンネル デバイダーの商品化に問題有りと考え、入手し易いユニットの使用に耐え、同じ効果が出せるようにと再構築したことが、商品化の遅れの事情です。しかし、何をするにも、今のコロナ禍は、誠に以て厄介であり、足枷された環境には、我慢の限界を感じてなりません。

今月の音楽ライフです。
神奈川フィルハーモニーの定期コンサートが、当初の計画とは、別の演目で再開されました。
初めの計画では、指揮 : ガブリエル・フェルツ、 ピアノ : クレア・フアンチ、 によるベートーヴェン/ピアノ協奏曲 Op.61a 、ラフマニノフ/交響的舞曲 Op.45 でした。
これが、出演者の入国事情から不可能となり、全く別の内容で公演が実施されました。

指揮 : 鈴木秀美、モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲、モーツァルト/交響曲第35番「ハフナー」、ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」でした。
この演目は、当初の物より楽しめたと思います。鈴木秀美が振る、神奈川フィルとの組み合わせ、そしてこの演奏曲目、音楽が聴けない環境ストレスの中で、これ以上のものは想像出来ない、との思いに至っています。
兎に角良かった、楽しかった、の一言、有難う。そして、神奈川フィルと鈴木秀美の得意レパートリー、この鈴木節を熟す、神奈川フィルとのコラボに接し、久しぶりに明るい気分でストレス解消でした。

もう一つの音楽ライフ
コラム214にワルター・バリリとウィーンフィルメンバーによる、モーツァルト/協奏交響曲 KV364 の事をかきました。その記事を偶々読んでくれた知人がおりまして、
俺は、その盤の原盤をもっていると言います。そのレコードを持参されて、わが社にお訪ね頂いた訳です。私も負けじと、この組み合わせのレコードを以て、お迎えしたわけです。このレコードはウエストミンスターのもので、モノのLP 盤ですが、リ・マスターされたリ・カット盤が数社から出ており、CDも何種類か有って、好き者同志が集まると、色々あるもので、揃った全てを聴いたのですが、テイクは全て同じ、と言うのが一致した意見でした。各メディアの「音」はいろいろでしたが、やはり1番と言うのがあるものです。このモーツァルト/KV364 のレコードには、名のあるバイオリニストは、幅広く名を連ねていますが、やはりバリリとウィーンフィルのものが最高と言うのが一致した意見でした。
普段は、色気の無い殺風景な当社試聴室ですが、同時にお呼びした仲間を入れての音楽談義は楽しかった。この仲間と言うのは、往年の植村 攻 様宅でのレコードコンサートの仲間で、お互い元気な時を懐かしみつつ、コロナ禍のストレス解消を楽しんだひと時でした。
植村 攻 様は、既にご逝去されましたが、初期のフルブライト留学生で富士銀行の専務を務められた方です。田園調布のご自宅にオーディオ装置を構え、毎回30名程のファンが集まりました。この方は、大変な音楽好きで、欧米のクラシック音楽コンサートには、足繁く通われ、当時の貴重な現地の原盤LP の収集もお持ちで、現地コンサートのご経験を交えた、レクチャーは絶品、その余波を駆っての交流会、これまた楽しく月1回の集まりが待ち遠しいものでした。
余計なことをもう一つ、この場のオーディオ装置の面倒を見ていたのが私で有ります。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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