会長のコラム 005
趣味のオーディオを語るとき、「音楽を抜きにして語る事は出来ない」と言うのが私の主張であります。
ですから、当社ではオーディオデバイスの開発や製造でも常に原音再生を意識しています。
原音再生と云っても所詮機械の事ですから、如何に技術が進歩しても原音が再生出来る訳は有りませんで、如何に「それらしく」再生するかと言う事になり、前回もその点を述べた訳です。
さて、「それ、らしく」の要素の一つとして、万人の望む事が音像定位による音楽再生である事は一致した見解でしょう。
そもそも、2チャンネルステレオ技術は、L,Rの2チャンネルによって、前後左右に音像を定位させると言う技術であった訳です。(当然の事ですが、最良な音質です。)
だから、凄い低音がでるとか、雷音などに付いても開発プロセスとして、この様な音をもツールとして時折用いますが、音楽再生に関係無い事ですから、そのような音の追求はしない事にしており、音楽を聴く事に終始するのが当社の方針となっています。
2チャンネルオーディオに於ける左右スピーカーのセンターに定位する音像は、録音時の「L、R」それぞれに45°方向に開いたマイクロホンの位相差によって、揺れ動く音像の様を捕らえたものを再生するのですが、その再現には再生機器の位相特性が厳しく要求されます。
2チャンネルと云う限られたソースから音像が定位する様は、オーディオの楽しみ、リスニングルームでの音楽の楽しみを至福の境地に誘いこむものです。
現代の機器はアンティーク機器に及ばないと言う人が一部におられ、これらに依ってシステムを構成され、素晴らしい音像定位を実現されて居られる方をお見受けしますが、左右の位相特性を一致させる為に相応の資金を投入しておられる事は想像に難く有りません。
一方、アンティークに拘る方の多くに、音質感の追求に終始し、音像定位に全く感知されないファンの方も数多くお見かけします。
コレクターなら別ですが、限られた予算で音楽再生の楽しみに投資するなら、是非音像定位を真摯に求めて貰いたいと、節に願っています。音像定位こそ2チャンネルオーディオの醍醐味なのです。
ステレオによる音像定位を求めずに、音質感だけを追求し、モノーラルで装置を構成されて居られる方も数多く拝見します。
趣味の事ですから、それで結構な事と思いますし、それもオーディオの楽しみ方です。
しかし、あえて2チャンネルを揃えて、音質感だけを追っている方には、全く理解出来ない行動です。
アンティークコレクター族ならずとも、「カネ」にいとめを付けないお金持ち族なのでしょうか、そのうちオーディオは「カネ」のかかる道楽で誰からも理解されないものになるのでは。
もし、リアリティーを求めるなら5.1チャンネルDVDシアターがあります。
対する我々は、2チャンネルオーディオを限りなく追い求めます。
それは音楽にメルヘンの世界を求めるようなものではないでしょうか。
当社の方針は、音楽を楽しみにされるファンの方に、ステレオ技術の原点に返って音像定位を提供してまいります。
申し訳有りませんが、音楽を聴かない方による、当社商品の評価をお断りしております。