会長のコラム 152
清々しい季節になって、湧き出づる「やる気」を無駄にする訳には行きません。昨年の今頃は脊柱管狭窄症に悩まされ、計画したイギリスへの旅行もキャンセルしなければならない状況で、辛い時期でした。
今年は、再度そのイギリス旅行にチャレンジします。旅行は、6月24日に羽田を出発し、およそ2週間にわたり、イギリスの北部から南下してロンドンを目指す旅行です。
脊柱管狭窄症は、完治した訳ではなく痛みを感じなくなったと言うもので、重いものを持たず、疲れず、と言ったような注意が必要と医者に言われています。海外旅行となるとそう上手く行くかどうか心配です。と言うことで、この「コラム-152」は6月20で〆とし、それ以後は次号へ引き継ぐ事にします。
桜の様に木に咲く花、ジャカランダと言う花をご存じの方は多いと思いますが、この花が日本でも咲くのを知り、先日見てきました。場所は神奈川県の横須賀市、神奈川歯科大学構内で少し離れた場所に1本ずつの2本しか有りませんが、私の知るジャカランダよりも、紫の色が濃くて素晴らしい見応えでした。私が初めてジャカランダに接したのは、米国のロスアンゼルスで、ここは街路樹として町全体がこのジャカランダで覆われ、まるで、日本の桜のようですが、花の命は桜よりもずっと長くそれは見事なものです。その後、メキシコ訪問時にも町を覆う見事なジャカランダを鑑賞し、やはりロスに近い土地だなーと思ったことが有ります。このジャカランダは、南半球に行くと秋に咲きます、ブエノスアイレスを訪れた時、このジャカランダが満開でした。これらの土地のジャカランダと神奈川のものを、比較するのは、そのスケールからして無理です。その僅か2本のジャカランダですが神奈川で鑑賞していると、元気な若かりし日に駆けずり回った外国の旅を思い出し、懐かしく思いつつ、来年もまた観に来るぞと言う気になるから不思議です。
大学の後輩に当たるオーディオマニアの方が富山に住んでいるので訪問してきました。この方は、学校の後輩にあたり以前から来てくれと言われていまして、新幹線の開通に合わせて、美味しいものを食べながら、地域のオーディオ仲間を集めておくからと言われ、重い腰を上げて行ってきました。
氏の装置は、平面バッフルにアルテック416を2本とこの間に中音用のホーンスピーカー(ドライバー、ホーン共に音研製)がセットされたもので、自作のネットワークとWE-4212使用の自作アンプで駆動されており、予めその構成を知らされていました。部屋は、天井が高く、氏が設計したと言うバランスのとれたディメンジョンと広さが確保されていました。もともと電子機器の会社を経営されて居られ、技術者の方です。
「ネットワーク・スピーカーは、何をやっても満足出来ない」と言うのが私の論主であります。6台のパワーアンプ(MA-1000)、プリ・アンプ(CA-1000)、そして開発中のパッシブ・チャンネル・デバイダー を持って出かけました。限られた時間に早々と試聴の準備に掛かります。先ずプリアンプ(CA-1000)を氏の自作品と交換してみます。これが想像外に大化けし、私自身CA-1000の実力に驚きでありました。次にスピーカー・ネットワークを外し、私の開発中のハイブリッド・パッシブ・チャンネル・デバイダーをCA-1000の後に接続し、さらにパワーアンプ(MA-1000) を3台づつ、左右で合計6台を接続します。これまた見事な変身振りに私自身も唖然と言う感じでありました。ご本人が技術者なものですから、ご自分の装置には自信がお有りだったのでしょう。ご本人からの言葉が無い状況が暫く、氏のオーディオ仲間も一緒に居る状況で、すこしご機嫌斜めの「気」を感じます。
オーディオ好きな技術者ですから、複雑な心境であります。しかし、この良い結果の主因は、氏のスピーカー装置と試聴室が立派なものであったからこそ成しえた結果なのですが、ここまで、私の思いが図星であるとは思いも寄らないし、これだけ立派な装置が生かされていなかったと言うことにご本人は反省しきりだったのでしょう。
以前にも書きましたが、市場に良いチャンネル・デバイダーが無い状態で、良い結果を求めてご苦労されていた、その結果ネットワーク接続にトライしていた訳です。しかし、ネットワークの定数設計は、素子への供給側インピーダンスはゼロ、出力終端側は一定値と言う条件のもとで成り立つ計算式で設定されますから、多少の誤差は覚悟の上なのですが、実際には、そのインピーダンスが周波数とスピーカーの消費電力によって変わります。そして、その誤差は理論値が成り立たない世界と化しますから、良い素材を使っても物理現象を無視する状態となるので、良い結果が得られるはずは有りません。この事は全てのスピーカーシステムに言えるネットワークシステムの大きなネックであります。
また、市販のチャンネル・デバイダーは、アナログ式に付いて言うと帰還回路を使用しているので良い訳有りません。デジタル式は、A/D D/Aを繰り返すので論外です。私は大抵のデジタル・チャンデバを持っていますが、どれも同じ問題を抱えています。これが、私のネットワーク否定論であり、ハイブリッド・チャンネル・デバイダーによる、チャンネル・アンプ方式の推奨論であります。
さて、富山では、別のマニアの方のお宅に訪問させて頂きました。この方は、JBLの4343をお使いで、スピーカーのネットワークに疑問を感じ、ウーファーのみをチャンネル・アンプ接続に改造されて、4343の良いとこ取りに成功したマニアの方です。素晴らしいジャズ音楽の再生音を聞かせて貰いました。私も「我が意を得たり」と言うところでした。この方の成功は、ジャズ音楽に深い造詣を持たれ、「ジャズ音楽の再生」は斯有るべきと言う確りした信念をお持ちであった事が成功の原因であったと確信しています。
私は、その人のオーディオ装置から再生される音は、その人の人生と哲学が語られていると常々言っております。その見本を見せて頂いた様で、悦に入って良い気分でした。美味しいものを食べ、良い音を聞かせて頂き楽しい富山旅行でした。
さて今月の音楽ライフです。
6月5日神奈川県立音楽堂にて、三大協奏曲の夕べと題する、小笠原伸子コンチェルトシリーズと言うコンサートにPM7:00開演で行ってきました。
小笠原伸子さんは、イタリアのシエナ、アカデミアキシアーナのマスターコースにて、アッカルドに師事しイタリア・バロックの奏法を勉強した後、1979~87年の間、神奈川フィルのコンサートマスターを務め、以後神奈川横浜を起点として音楽活動をされている人です。
現在は、東京室内管弦楽団のコンサートマスター、横浜バロック室内合奏団などを主幹されています。当日演奏された三大協奏曲は、ベートーベンのV協、メンデルスゾーンのV協、チャイコフスキーのV協でした。この人の演奏を聞くのは初めてでしたが、なかなか素晴らしい演奏力で、追っかけおばさん族を率いる人気バイオリニストとは次元の違うものでありました。この人の主催するコンサートには、時間を作って是非行ってみたいと思っています。
6月13日土曜 横浜みなとみらいホールにて、神奈川フィル定期演奏会に、PM2:00開演で行ってきました。
演奏曲目は、ラベル/「マ・メール・ロワ」、ラベル/ピアノ協奏曲、そしてサン=サーンス/交響曲3番「オルガン付き」の3曲。ソロ・コンサートマスターの石田と第一コンサートマスターの崎谷の揃いふみでステージオンしていました。そして指揮がパスカル・ヴェロ、この人は小澤征爾の薫陶を受けた人で、主にフランスで活動している人です。
ピアノ独奏は小菅優で久しぶりに聴く小菅の演奏でしたが、高度なテクニックは相変わらず、加えて若々しい感性に元気を貰いました。
オルガンの演奏は、世界的に活躍している石丸由佳で、演奏力の素晴らしさを感じさせられます。このところ、私の席が変わってホールの1階ほぼ中央に位置しているせいか、以前では聞き取り難かったオルガンの音がオーケストラと良く馴染んで聞こえ、久々に聴くオルガン交響曲に大満足でした。