会長のコラム 207
11月のコラムです。
先月のこと、突然に左眼が失明状態となり、コラムを見て頂いた方々から、お見舞いのメールを頂きましたこと、大変光栄であり、ここに御礼申し上げます。その後の状況ですが、横浜市大病院からの紹介状を持って近くの眼科に通い始めました。症名は、左網膜動脈閉塞症で、血管が詰まった症状とのこと、糖尿病等から起こることが多いとの事ですが、私には該当しません。血管が細いと言われ、加齢による影響からとのことです。回復の可能性は厳しい、健在な右眼に同様の症状が出ないようにと言うことで、毎月1回の通院を言われて、今のところ一件落着ですが、残念な決着であります。
車の運転が出来ないのが、私にとっては最大の問題ですが、考えようでは、何れ出来なくなるのですから良い機会と捉え、早めに生活パターンを変え、断捨離を考えつつ、残り人生を有意義に、気を引き締めることにしました。
さて、新商品の状況ですが、消費税問題があり、生涯生活費2000万円発言あり、景気の低迷、など売れ行きを疎外する環境のもとで、心配ではありましたが、我々の「音楽有ってのオーディオ」と言うキャッチ・フレーズの下での商品創りが、市場に認められつつ有って、手ごたえはまずまずの状況にあります。
その新商品、イコライザーアンプEA-550は、回路方式と部品の見直し、そしてMC平衡受けステップアップトランスの高音質化を施した、新型を内蔵しました。この内蔵トランスを独立した別パッケージにしたのが、商品名T-1000で、新商品となります。
本器を介してEA-550を聴いてみると、「え ! これ同じトランス ? 」と言う音の違いを感じますが、これを音質の良し悪しで評価すると、オーディオの楽しさを削ぐと言うものであります。
音楽の雰囲気が変わるクラシック、ジャズ、フュージョン向きとか、ヴァイオリンが、ソプラノが、さてはピアノが、と言うような聴き方に注目しますと、音楽に対する違う世界が見えて来ます。この違いは、我々「創り手」のマインドからくるもので、アナログの奥深さ、深淵さ、などの所以と考えます。これは、楽器の「創り手」の違いからくる音質の違いに酷似していると考えます。
聞く音楽や周辺機器との相性、そして聞く人の趣味、オーディオ道の深さ、この様なものから来る習慣、教養、哲学の違いと考えると、自分の求める別の「生らしさ」が明確になりアナログが益々楽しいものに進化することになるでしょう。
先に発売した、 EA-350 にこのT-1000を接続するのも一興であり、お買い求めのお店から借用してみることも、是非お試し頂きたいと願っています。
今月の音楽ライフです
11月9日土曜 14時開演で新国立劇場に行ってきました。今シーズン2度目の演目で、ドニゼッティ/歌劇「ドン・バスクワーレ」、日曜のマチネで絶好の日和でした。
私が運転出来なくなってしまい、同行する家内は、足の具合が悪く、階段の下りに難儀する状況で、駅の階段状況を心配しつつの移動でした。久しぶりに新宿駅に着いてみると、バスターミナルの下が、湘南新宿ラインのホームとなっていて、目の前にエレベーターが有る、私の知る時代の新宿は、すっかり便利になっていて助かりました。
やはり、我々年寄りには、マチネ公演に限ります。しかし、良い席を確保する手段として、シーズン初日公演を一括購入しますから、夜の公演チケットも有るわけです。この夜の公演を如何するか、「眼」の障害が出る以前から問題だった訳です。
ヨーロッパの劇場では、病院用の可搬ベッドでナース付きと言うオペラ鑑賞者によく遭遇します。我々の環境は、オペラ先進国とは違いますが、その位に図々しく行動しても許されるオペラ先進国、オペラ鑑賞に寛容さが有る社会と思うと、何か将来に希望が湧いてきます。
さて、その公演です。
このオペラは、序曲とその後にくるエルネストの歌う憂いを帯びたセレナード、ソプラノのノリーナの歌うアリアなど、単独で演奏される機会の多い曲が、幕明け早々に出て来て、「これから始まるぞ ! 」と期待に膨らむオペラであります。このオペラは、喜劇オペラに分類されると言われていて、湿っぽいストーリーはなく、楽しくて、ハッピーエンド、極めて単純で特別に変わったこともないストーリーです。そこにドニゼッティの素晴らしい音楽が付けられる訳で、何とも言えないハッピーなオペラであります。しかも、出演者は、5人だけのドニゼッティ節ですから堪らない、アッと言う間の時間経過でした。
当日の演奏は、指揮がコッラード・ロヴァーリス、演奏が東京フィルで、この人は、イタリア・ベルガモ生まれ、イタリアをはじめ、ヨーロッパのオペラ劇場で活躍している人で、新国立劇場には初登場です。
歌手陣の主役4人はイタリア、ヨーロッパ出身の外国人、日本人のバリトン歌手の千葉裕一の5名でした。現地事情に詳しい出演者の選択には、感動もので、毎度のことですが、この公演も満足でありました。
一人の日本人出演者 千葉裕一は、イタリア、日本でのコンクールに入賞しており、新国立劇場合唱団メンバーでもあり、ソリストとしても幅の広いレパートリーを持つ人で、我々素人には知られていない人でしたが、外国人に伍して素晴らしい歌手でした。全てが、イタリア尽くしと言う感じ、これが出来るのも新国立劇場ならではと言うものでしょう。
当日の帰路は、湘南新宿ラインで30分程度をグリーン車で束の間、横浜駅に到着、横浜西口の蕎麦屋「九つ井」で日本酒、片目は見えずとも、これまた極めてハッピー、帰路途上で酒が飲めると言う幸せは、「車生活」では出来ないことです。
11月14日木曜 高輪会オペラコンサートに12時開演で行って来ました。今回から会場が変わり、グランドプリンスホテル高輪 フランス料理 ル・トリアノン に変わり、料金も少し高くなりました。この会場は、オペラコンサートには、利用しにくい構造ですが、ホテル側の事情で仕方無いとの事です。
演目は、ヴェルディ/トロヴァトーレ、出演者は、笛田博昭:マンリーコ、小林厚子:レオノラ、上江隼人:ルーナ伯爵、中島郁子:アズチェーナ、そしてピアノ伴奏が何時もの藤原藍子、そして、主催者の宇垣淑子さんが、「語りべ」 でした。
このオペラは、名旋律の多いヴェルディの作品の中でも、最も音楽的に優れた力作であり、イタリア・オペラを代表する音楽力の作品と考えます。我々、観る側も緊張の連続する作品であります。
このオペラコンサートは、毎回フランス料理の午餐を頂き、その後に演奏会が行われます、今回もその行程で進みました。「語りべ」 の宇垣さんが使用するマイクは、設置されたスピーカーの位置が悪く、聞き取り難く語りが旨いだけに、眠りを誘われてしまいそうでした。美味しい料理を良い事に、ワインを頂いたことも有って、この贅沢な雰囲気は、何物にも代え難いコンサートの場でありました。
11月16日土曜 14時開演でみなとみらいホールに神奈川フィル定期演奏会に行ってきました。指揮がカーチュン・ウォン : この人は、2016年にマーラー国際指揮者コンクールに優勝、世界の脚光を浴び、ドゥダメルによって2017年ロスアンゼルス・フィルの指揮者フェローに指名された後、ヨーロッパで活躍、日本では読響でデビューしていて、今話題の新人指揮者です、ドゥダメルの再来の様相です。
演奏曲目は、前ステージの1曲目が、ワグナー/タンホイザー序曲、特に説明の必要は無い名曲です。2曲目が、ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲、この曲はブラームスが尊敬する2人の奏者、ヴァイオリンのヨアヒム、そしてチェロのハウスマンのために作曲した曲で、ブラームスらしい曲想は、二人の名奏者であり気の合う奏者を必要とする条件を満たさなければならない、ブラームスらしいこの名曲も、定期演奏会ならではの選曲と言えましょう。当日の奏者は、ヴァイオリンがコンサートマスターの崎谷直人、チェロが主席の門脇大樹でした。何 ! 「たかが、神奈川フィル」と聞こえてきます、「冗談じゃない、聴いてから言って貰いたいものだ」で有ります。
後ステージが、エルガー/エニグマ変奏曲でした。この曲はエルガーが最初に書いたオーケストラ曲で、当初は演奏を躊躇っていたのを親友達から背中を押されて、指揮者のハンス・リヒターに楽譜を送り、高く評価されたと言います。
曲は14の変奏から成り、それぞれにエルガーの主題が付いて、ロマンチックであり、活気があり、主題に沿って曲想が変わります。私、初めて聞く曲でしたがエルガーらしいロマンチックな曲想は、楽しめました。この曲も定期演奏会でないと聞く機会の少ない曲でしょう、定期演奏会万歳でありました。