会長のコラム 021
先日、新国立劇場でオペラ「フィガロの結婚」を見て来ましたが(聞いて来たと言った方が良いのか)、このオペラは、見るたび、聴くたびに新たな面白みと感激を味わえます、今回の出し物も新しい演出で実に面白いものでした。
この新国立劇場に付いて私が説明などする必要はないのですが、意外とオペラファンを自称する方々の中に、「大したものは、ないだろう」と決め付けて行かないと言う人がいます、その理由も大よそ見当は付くのですが、これは、大変な間違いです。この値段でこれだけ確りした出し物を演じてくれるオペラ劇場はいまどき大変貴重で、私には有難い存在なのです。
私がここを訪れるときは、マチネーを選んでいます、それはオペラ鑑賞のあと代々木上原のなじみのレストランにゆくのが楽しみだからです。そして、そこのマスターがまたオペラ好きなものですから、自慢たらしく「あーだ、こうだ」と具に付かないおしゃべりをして悦にいってしまうからです。
このオペラ劇場は、地下で京王線に直結して新宿までひと駅と大変便利なのですが、電車に乗ると、優雅な気分を一瞬にして失ってしまうので、毎回タクシーで移動する事にしています。
新国立劇場は、ご存知の方が多いと思い改めてお話しする程の事では有りませんが、私の生活の一面として紹介させて頂きました。
2A3と300Bの音質に付いて
さて、2A3と300Bは、音質的にどちらが優れているのでしょうか、私の体験をお話してみます。まず、球の格が違うので優劣の比較が難しいのですが、音質の観点だけを捉えてお話しします。
良く言われる事は、300Bはバター臭いと言う言葉です、これは中低域にハリがあり、「凄み」「はったり」などと表現する人もおりますが、良く言い当てていると思います。しかし、音に「にごり」がなく直熱3極の素直さを持っており私はKT-88に代表される多極管より好きですし、タンノイオートグラフと300B シングルアンプとの組み合わせによる永い付き合いだったことも、すっかり馴染みになっています。
一方2A3ですが、オーディオ球としては一般的にも300B以上に馴染みのある球で、ビンテージ物の出回り度は300B以上であった事からも頷けます。音質的には、300Bのような特出した癖は無く素直な良い球との印象が強く優等生を思い浮かべるのですが、なかなか優れた音質を発揮しオールマイティーにソフトをこなす優れものです。
再生周波数のエネルギーが、全帯域でバランスしており、300Bのような癖が有りませんから、スピーカー等のデバイスの特性や部屋の吸音特性をまともに表現します。特に部屋の吸音特性は、ご承知のように部屋のライブとかデットとかの表現もF特を持っていますから、例えば中低域がデットであれば、そこでの再生音は高域が張り出してしまうわけで、その点2A3は素直な特性なだけに間違った評価を受ける確度が多い様に感じます。
2A3は300Bよりも安いし、トランス類も小さくて済みますから、2A3の奢ったシングルアンプは決して高価になりません。真空管アンプの原点として、またステレオオーディオの原点とて、是非もう一度試してもらいたいものです。それによって、新たに、オーディオの世界が見えて来る事請負です。
中国製の安物アンプがはびこる昨今です、レコード音楽ファン、そしてオーディオファンも何かを見失っていると思えてなりません。
文中、シングルアンプとしてのみ語っていますが、シングル対プッシュプルは別に項を改めてお話したいと思っていますので、本項ではシングルアンプとして特定してご理解下さい。