会長のコラム 258
R6年3月のコラム
昨年の新商品で話題になったメインアンプのMA-5000 を私の部屋に設置した事を前月のコラムに掲載し、アンプの実力が発揮されていない事をレポートしました。原因は、スピーカーの大きさにある事は歴然で、同じメーカーの最新バージョンを手配し、聞き比べた結果を今月のコラムとしてレポートします。
先ず、そのメーカー名を明かさないと、私の主旨を充分に表現出来ないので、スピーカーのメーカー名を明かしてお話させてもらいます。メインアンプMA-5000 は、やはり素晴らしい、加えて最新のTAD スピーカーも言われている様に素晴らしかった。この組み合わせは、私がオーディオに関わって以来最大の、いや最良の音を奏でる結果に至り、長年オーディオに関わり、最高の至福を味わっているところです。
良さに付いて、述べたい事は多々ありますが、端的に言うと音場定位や音質に付いては今更言うに及ばず最高の音質です。その一つの側面として、美空ひばりの声、かすかなビブラートが掛かって、これが、ひばりの秘密である事が明確に判別出来るのです。最近、私の耳の感度が悪くなり噂話の様な「ひそひそ話」は聞き取れません。その私に「ひばりのかすかなビブラート」が聞こえるのです。このビブラートの件は、「先ずはご参考までに」であり、これから順次オペラ・アリア、楽器の独奏等を聞くのが楽しみで、機会を見てレポートするつもりです。恥ずかしながら、この音は私の人生87歳、最後のめぐり逢いかも知れません。
今月の音楽ライフ
3月9日土曜、神奈川フィル定期演奏会に14時開演で横浜みなとみらいホールに行って来ました。
演奏曲目が、スメタナ生誕200年記念と言うことで、連作交響詩「わが祖国」全曲通しで休憩なし、約1時間30分の演奏。しかも、私、全曲通しで聞くのは初めての事でした。何と素晴らしい曲なのでしょう! 作曲時期を考えると祖国の置かれた環境の厳しさを作曲で表現した事が、成程と理解できるのです。そこには、演奏の素晴らしさを愛でる必要もあります。当日の指揮が広上淳一、演奏がコンマスの石田泰尚が務める、神奈川フィルハーモニーで、みなとみらいホールでの定期演奏会でした。
スメタナ/連作交響詩は、全6曲の構成で、その第2曲「モルダウ」は良く聞く曲ですね。私には、この第2曲の美しいメロディーだけが耳に残っていました。それまでは、全6曲の事など思いも寄らない事でしたが、何と全曲を構成するうえで、この第2曲の美しいメロディーがますます重要である事を感じるのです。そして、スメタナがこの名曲を作曲した時代背景を知る必要が有るので、その点から触れる事にします。
チェコ・スロバキアは、オーストリアと国境を接し、永年オーストリアに支配され、公用語はドイツ語と言うように虐げられていました。当時この地を治めるのは、ハプスブルク家です。私、歴史の問題は勉強不足で、語る資格は有りませんので、割愛させて頂きますが、要は永年にわたりチェコ民族は、ハプスブルク家の下におかれ、祖国を思う心の拠り所を求めていました。音楽、陶芸、酒作りなどの技術は、ドイツ以上に秀でていたように感じます。
私、ここチェコには、この地で名を成した日本人オーケストラ指揮者のご縁や、度々訪れていた料亭の女将のご縁も有って、この地を訪れていまして、同行の家内は訪れる度に、陶芸品などの制作現場を訪れ、その収集に夢中、私はワインに夢中でした。
さて、スメタナの時代、永年虐げられたチェコ民族は、民族の誇りを永年持ち続け、その思いを作曲で表現したのが、スメタナでありその激しさは、連作交響詩「わが祖国」に詰め込まれているのです。この全6曲の内、ポピュラーな2曲目の「モルダウ」の優雅な曲に導かれ、祖国への思いが表されます。そしてその時代の現状に戻り、希望や激しい怒り、などが3曲目以降に表現され、素晴らしい曲が連綿と続きます。
コンサート・プログラムには、演奏時間75分と記載されていますが、熱の籠った演奏の為か、当日の演奏は90分近く掛かっていました。早速、LPレコード探しに掛からねば、との思いに馳せり、改めて神奈川フィルの定期演奏会の有難さを感じるのです。
音楽愛好家の方々で、未体験の方多いと思います。生演奏の機会に遭遇した時は何はともあれ、積極的にご参加されると良いと、若輩ながらお勧めする次第です。
3月26日14時開演で、ワグナー/トリスタンとイゾルデに新国立劇場に行って来ました。
このオペラ全曲通して観劇するのは、私、初めてで有ります。14時開演で終演が休憩込みで19時30分です。それから夕食を撮って劇場を出たのが、何と21時でした。マチネ公演が、まるで夜の公演に匹敵する時間感覚には疲労困ぱい。老体の身に応えました。
極めて長いオペラでありますが、ストーリーは極めて単純で、字幕を追いながらも素晴らしい音楽を聞きつつストーリーを逸する事の無い、そのマッチングは流石ワグナーと感じ入るものでした。
私、ワグナー・フェスティバルには、何度か訪れていますが、このオペラを観劇する機会が有りませんでした。貴族社会での男女間に於ける「切った/はった」のストーリーですが、その内容は下世話の物とは別次元の秘話物語であり、悲劇で終了するストーリーは何時までも心に残る物語と音楽で構成され、見ごたえのあるオペラでした。
本公演では、藤村が重要な役を演じており、まさしく外国人歌手に値する役柄は流石であり、海外での活躍が芸の元と思われました。そして、演奏が暫く振りの新国立劇場出演の都協で流石に素晴らしい安定した演奏には、長時間観劇の緊張と相まって疲労困ぱいで帰宅しました。