Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 020

当社 商品をお買い上げ頂いたお客様への感謝とフォローを兼ねて、私の愛聴しているLPレコードをCD-Rにしてお聴き頂きましたが、その音源として使用したLPが国産のプレスであった為、あるお客様から「自分は原版を持っているよ」とのクレームともご自慢とも受け取れるコメントを頂きました。それを聞いて、私は自分の選んだ音源が完璧で無かったとの思いが募り、納まりが付か無かった訳です。

このCD-Rは、常々私が気に入って、リファレンスとして聞いているLPレコードを当社 の技術でこのレコードの鮮度を如何に保ちつつCD-R化するかと言うチャレンジ心も有ったわけです。

このCD-R化のプロセスですが、寺垣のターンテーブルに当社 P-1カートリッジを取り付けてイコライザーアンプのEA-1にて再生したアナログ音源を、JVCのK2スーパーコーディングのプロ用A/D変換器によってデジタル変換し、その信号をヤマハのCD-R録音機にてCD-Rに焼付けて製作したもので、私の拘りのCD-Rなのです。

このCD-Rは、多くの方々からアナログの香りを感じるとの事で、お褒めを頂いておりますが、音源に使用したLPが、テレサベルガンサの「18世紀オペラ アリア集」で、ロンドンレーベルの国産キングレコード社のプレスによるものでした。

私は、常々素晴らしい演奏と音質と思っており、自信を持って採用したのですが、お客様の「自分は原版を何時も聞いているので」との一言でグサリと胸を刺されてしまいました。

私は、必死になってこの原版を探しました、当然英国プレスのデッカ盤です、物色しているとモノ版は有るし、曲の組み合わせの異なる物は有るし、色々なものが有って驚いたのですが、中でも一番高価なものがモノ版でした、さぞや良い音と思い購入したのですが、間違い無く同じマスターであるにも関らず、何とひどい音である事、オーケストラの音がまるでフライパンの炒め物の様な音しか出て来ないのには驚きで、モノ版は良いとの神話がハジケタ一瞬でした。高価な買い物でした。

その後、目的の英国プレスのデッカ盤を手に入れました。早速聞いてみたのですが、残念ながら、私の所持するキングレコード社製ロンドレーベル版の方が優れていました。結果的に、手持ちのソフトが一番優れていたと言う事になり、一応安心したのですが、しかしながら、決してそれが正解であると言い切れないと言うことも判りました。

と言うのは、LPのプレス加工工程での問題ですが、プレス金型のショット順に音が悪くなると言う事なのです。専門家が見るとレコード盤の内側に刻印されている記号を見るとその鮮度がわかると言われており、アナログファンとしては穏やかでない事実が判明してしまったわけです。

現に、レコード探しをしている間に、私の所持するものと同じキングレコード社製ロンドンレーベル版が見つかり、補完の意味もあって購入したのですが、私の持っているものの方が遥かに良い音であったと言う事もこの間に経験しました。

この体験から色々な事を知り得ました、英国プレスのデッカ盤は素晴らしいと言う定評は昔から有ったのですが、全てがそうとは言い切れないと言う事実、そして、このデッカ盤を追っかけて研究されている方がおられ、その知識の深さと資料の豊富さを知り、世の中、上には上の方が居られるものだと、つくづく自分の浅さを思い知らされました。

デジタルの場合、同じスタンパーで音が良い悪いと言う話はあまり聞いた事が有りません。そんな不確定なアナログレコードですが、それでも、アナログは素晴らしいと言う心情に変わりは無いし、だから、「研究のし甲斐もあるし面白いのだ」と言いたいのですが如何なものでしょう。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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