会長のコラム 110
新年明けましておめでとう御座います。本年も本コラムのお目通し宜しくお願い致します。
3.11震災に加えて、政治、経済にと良いこと無しの2011でした。問題解決の目処さえ付かないままに、新年2012を迎えるのですから、自ずと元気の出ない新年と言うことでありますが、ここは一つ、改めまして新年で御座いますから、悪い事はリセット致しまして、希望を持って行きたいものです。
さて、その2012年の正月は皆様如何お過しでしたでしょうか。私は暮れの31日からホテル・ニューオータニの正月パックで過ごしました。昨年は、帝国ホテルの正月パックでした。昨年に比して変化を期待しましたが、お子様主体の企画には何処も同じで、うんざりと言う事であります。それと言うのも、金持爺ちゃんが孫に目じりを下げている姿、嫌ですね。孫の居ない者の僻みと取られそうですが、訳の解らない餓鬼に贅沢は悪であります。
この様な場所は、一通りの人生を真っ当した者の癒しを求めるところであり、餓鬼の来るところでは無いと心に思うのであります。
ホテル側も金持ち爺を相手にする方が手っ取り早いと言うもので、双方の利害の一致ですからこれ程強いものは無いと言うことと思うと嫌ですね。現役時代はそれなりの地位で仕事をされた方々でしょうが、その方々がこれですよ、この亡国の兆し、それを助長するとは、自分勝手もはなはだしいと思うのであります。
それでもニューオータニホテルには、正月パックの元祖だけに「オペラ/こうもり」のような大人の年越しパーティーが、別バージョンで用意されています。深夜12時を前後する時間帯に、ブラックスーツを義務付けたパーティーの企画が有ります。来年は、それにしたいと思ったのですが、果たして今年はどんな年になるのか、平穏に生活出来るのか、極めて心配であります。
1月のサマリー
1. 東京都交響楽団ニューイヤーコンサート
2. NHK E-テレ オペラガラコンサート
3. 評論家加藤浩子のバッハ・ツアー同窓会
4. ステレオサウンド社表彰式
5. 新国立劇場 オペラ「ラ・ボエーム」
6. 神奈川フィル定期演奏会
1.東京都交響楽団 ニューイヤーコンサート
東京文化会館大ホールにて1月3日3時開演のマチネコンサートに行って来ました。「響の森」コンサートと称して30回目のコンサートと言うことですが、私は昨年末の神奈川フィルの定期演奏会に出演した三浦文章の演奏に感激し、彼の出演に引かれて正月3日にわざわざ出かけた訳です。
家内が脳内出血を患って以後は、出来るだけ車での移動を心掛けているのですが、当日は正月でもあり駐車場に問題があると思って、家内には気の毒でしたが電車で出掛けました。しかし、文化会館近辺の人混みは普段以上でしたが、車の混み具合はそれ程でも無く、皆さん私と同じ読みをしたのでしょうか、車の混み具合は殆ど有りませんでした。
文化会館内に有るレストラン精養軒にて遅い昼食を取ってから席に付いたのですが、ここはいつも混んでいて待たされ、その上美味くも無いのに価格は上クラスですから、文句も言いたくなります。それなら他に行ってくれと言われても、それが出来ないから良い商売を手がけたものです。
当日の演奏ですが、指揮が大友直人 東京都交響楽団 コンサートマスターが山本友重(矢部達哉でないのが残念) そしてバイオリン独奏が、お目当ての三浦文章、曲がブルッフのV協です。このブルッフですが、サルバトーレ・アッカルドのLPレコードが気に入っており、私のイベントでは何時もこれを使ってデモンストレーションを行います。
従って、この曲は隅から隅までと言うと大げさですが、耳に胼胝が出来ていて、三浦の演奏をこれと比較してしまい良いことではないと知りつつ、この若さでこの技術もさる事ながら、曲の理解力は少し生意気なのでは無いか、荒っぽさは感じられるものの、立派としか言い様が無いその様に、私ともあろう者がファンになってしまいました。
その他に演奏された曲は、ロッシーニ/「泥棒かささぎ」序曲です。この曲は、最近デュダネルがロスアンゼルス・フィルを振ったDVDを見て、これから受けた印象が強烈であったことから、当日の演奏にそのマスクが掛かってしまいました。その他、ドビッシー/牧神の午後への前奏曲、ストラビンスキー/火の鳥の2曲でしたが、大友と都響の演奏は正月の気分を楽しませるものでした。
2.NHK Eテレ番組 オペラ・ガラコンサート
正月3日夜7時からの毎年恒例の番組です、そして私が期待している番組の一つであります。当日の出演者はお馴染みの人が多く書きだすとキリが有りませんで、2人に付いて書きます。
テノールの村上敏明、昨年暮れに小田急線玉川学園のライブハウスにて聞いたばかりでありましたが、新春ガラコンサートでの演奏もさすがでした、ライブハウスでの演奏よりも良かったと思います、それは当然と言う事でありましょう、視聴率の高いNHKの番組ですから。
そして、もう一人、森麻紀がヴェルディー/オペラ・トラビアータを歌っていましたね。典型的なプリマドンナオペラ、そのタイトロール・ソプラノです。ソプラノ歌手の憧れでもあり名歌手達が夫々に名演を残しています。そして、これを歌って声を潰した歌手が沢山居られます。
今回、森麻紀が歌った椿姫、此れもまた立派な椿姫でありましょう、ほんの1部ではありますが。どうか歌手生命を長持ちさせるよう「ご無理なさらずに」、「これ以上はご遠慮された方が宜しいのでは」と願っています。
3.音楽評論家加藤浩子のバッハ・ツアー同窓会
正月の7日に加藤浩子のバッハ・ツアー参加者の同窓会が、今年も開催されました。このツアーは、毎年ドイツ・ライプツィヒの聖トーマス教会で行われるバッハ・フェスティバルに、加藤浩子さんの引率で行われるツアー旅行に参加した人達が集う会です。そして、昨年のツアーが18回目と言うことでした。
今年の会には、バッハ演奏団体「バッハ・コレギュム・ジャパン」を指揮する鈴木雅明氏が参加され、バッハの「マタイ受難曲」についてご講演を頂きました。それと言うのも、今年のバッハ・フェスティバルにこの曲の演奏のために聖トーマス教会に招かれているとの事からでした。
同窓会の会場では一緒に写真を採ったり、サインを貰ったりで楽しいひと時を過ごすことが出来ました。
「マタイ受難曲」ですが、私は今まで、トーマス教会の構造から、バッハは二重合唱として作曲したものと思っていましたが、鈴木氏の講演でその初稿譜は二重合奏にはなっていないと聞いて、改めて興味をそそられました。そして、鈴木氏の今年のフェスティバルでの演奏は、その初稿譜による演奏との事で、私も是非参加したいと思うのですが、家内の具合もあるし、バイロイトには「行けるときに行っておきたい」との思いも有りまして、悩ましい限りであります。
4.ステレオサウンド社の表彰式
昨年は、メインアンプのMA-1の受賞でした、そして今年はフォノ・カートリッジPP-1000の受賞でありました。
MA-1は、845シングルで構成するメインアンプで、ハイエンドの高級アンプのカテゴリーでした。このカテゴリーは安物の中国商品が幅を利かす市場と言う事もあって、我々にとって決して有利な企画では有りませんでした。
それでも、米国製のオリジナル真空管の使用や、他の使用パーツに贅を尽くしたので、その「音」に喝采を博し、他社製品とは歴然と一線を隔すものであり、評論家を始めとして話題を制しました。そして今年は、オーディオ装置の入り口たるフォノカートリッジで挑んだわけです。
このフェーズメーション「PP-1000」は、磁気回路を更に精密に設計を見直し、その結果で成し得た音造りでありまして、当社の「P-1G」との比較をしますとグレードの格は2段階上と言う感じに仕上がっています。
手前味噌ですが、是非ご試聴して頂きたいと自信を持ってお勧めする次第です。
5.新国立劇場 プッチーニ/オペラ「ラ・ボエーム」
新国立劇場にて1月19日 PM6:30開演、指揮者がコンスタンティン・トリンクス。オーケストラが、コンサートマスター大谷康子率いる東京交響楽団、で行ってきました。
指揮者のコンスタンティン・トリンクスは、ドイツのバーデン州立劇場にて大野和士のアシスタントを勤めたあと、現在はダルムシュタット歌劇場の音楽監督を務めている人で、世界の有名オペラ劇場で活躍しています。
新国立劇場には2度目の出場となっています。その東京交響楽団の演奏は、弦の響きが美しくオペラの内容とマッチして、より美しく表現するものであり、印象に残りました。
歌手陣としては、ミミ、ルドルフォ、マルチェッロ、ムゼッタを演じる歌手は全て外国人です。主役のミミを演じるソプラノのヴェロニカ・カンジェミが、素晴らしい歌唱を聞かせてくれました。この人は、アルゼンチン生まれでヴェノス・アイレスのコロン劇場でデビューし新国立劇場初登場ながらも世界のオペラハウスで数多くのタイトロールを演じている人で、流石と思う出来栄えと思いました。
対するテノールのルドルフォ役が位負けしており、残念なキャストと思いました。しかも、このレベルの歌手であれば日本人にもいると思うのですが、体格面でミミ役のソプラノに負けるようではと言う配慮も有ったのかも知れません。全体として良く出来た演出で、毎度の事ながら涙を誘うエンドの纏めは見事でありました。
オペラ観劇で不自由するのが、いつものことながら夕食であります。当日は、木曜日と言う事で所謂ウイークデーですから、メンバー優遇の利く京王プラザホテルに宿泊し、オペラ観劇の後の優雅な時間を過ごすことに期待することにしました。しかし、このホテルは私の好きなホテルなのですが、このところ何か効率運営のようなものを感じるのであります。
ホテルともあろうものが、オペラ終演時間まで営業しているレストランが限られていることです。
又、宿泊客には団体客がやたらに目に付くようになり、その客筋は決してマナーの良い部類で無い事が気になります。
6.神奈川フィル定期演奏会
1月28日午後2時開演のマチネコンサートでみなとみらいホールでの公演に行ってきました。
演奏曲目は、R・シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」、ブルッフ/V協、ブラームス/交響曲第4番と比較的ポピュラーな選曲でありました。
指揮者はサッシャ・ゲッツェルで、この人は今春来日のウイーン・フォルクス・オパーの日本公演を振る指揮者でして、神奈川フィルとの共演は真に見事なものでした。そして、ブルッフのV協ですがこの曲は今年2度目の鑑賞となりまして、今回は松田理奈さんの独奏によるものでした。
この人は、1985生まれですから三浦文章よりも数年年上と言うことになります。三浦の様に世界のビックコンクールの優勝者では有りませんが、桐朋学園からドイツ・ニュルンベルグ音楽大学を主席で卒業するなどその音楽経歴は素晴らしいものがあり、三浦とは違ったブルッフのV協を聞かせてくれました。図らずも、正月早々に私の好きな曲の競演の聴き比べと言う贅沢を味わいました。
最近の若い人達の技術は、神尾を含めて、一頃とは比較にならないほどのレベルの高さに魅せられます。今オバサン方に人気のあるヴァイオリン奏者達には脅威となりましょう。それも、そう永くは無い時期に逆転が可能となる事は間違い無いと思うし、早くそうなって貰いたいと応援する次第です。