会長のコラム 036
アルゼンチン旅行
アルゼンチンの首都 ヴエノスアイレスが日本から遠いことは分っていたが、 体験してみると何と遠い事か、「身を以って知る」とはこの事。「いやー、遠いの何の」ほんとに疲れました。
この国は、アンデス山脈からの雪解け水で豊富な水資源を持った平原、石油は自給体制という具合に資源に恵まれた豊かな国です。 しかし、過去ペロン大統領のような大物人物に対し、その批評が善悪真二つに分かれる国柄で、 政治が悪いのか国民が悪いのか解りませんが貧乏な国である事は一見して理解できます。
5、6年前に経済破綻したこともありますが、今ではその傷跡は見当たりません。 物価が兎に角安く、肉の料理が事のほか旨いのが特徴で、 それ以外の料理は概してまずい部類です。料理の傾向はイタリア系が多いのですが、 パスタの茹で方は伸びたものを「良し」とする傾向があり、アルデンテなど望むべくも有りません。
肉といえば、料理と言えるかわかりませんが、焼き方には拘りがあるようです。 山羊の焼肉は特に旨く、こんなに旨いものとは私も知りませんでした。 山羊を鯵の開きのように開いて日本で言う囲炉裏の馬鹿でかいものに薪を焚き、 そこに開いた山羊を鮎を焼くような形で焼くのですが、この焼き上がりの旨いことときたら絶品です。 レストランではこのでかい囲炉裏を店の前面に置いて山羊の焼肉をデモっていますが、 これが店によって味が違うのですから肉の焼き方は、彼らにとって大事なノーハウのようです。 牛のヒレステーキも黙って注文すると500gのブロックが出てきます。 これがまた旨い。私のような小食者でも気が付いたら平らげていたと言う情況です。
この国の過去の栄光は、その昔南米のパリと言われ、その面影は随所に見られます。 その典型がコロン劇場で、世界3大オペラ劇場といえばこのコロン劇場、パリのオペラ座、 そしてミラノのスカラ座である事は定説です。
私も今回コロン劇場を見学したことで3つの劇場全てを見たことになりますが、 ウイーンのスターツオパーも素晴らしいですが、残念ながらこの3つの劇場には及びません。 コロン劇場は、客席もさることながら、舞台のバックヤードが大きく、舞台装置の製作工場とその倉庫はもちろんのこと、オーケストラや舞踏の練習場に大きなスペースを擁しています。過去、この国がいかに栄えていたかが窺がえます。 その反面、アルゼンチンタンゴの発祥地ヴエノスアイレスは、ヨーロッパからの食い詰め者の集まりと言われ、カミニート(小道)と言うタンゴの曲でもあり、ここがタンゴ発祥の場として、観光名所 として残されている記念建物などでは、当時の移民の惨めな生活環境を思わせます。
さて、何ゆえ私の旅先がアルゼンチンなのか。私、実はアルゼンチンタンゴマニアなのです。私の音楽入門は、高校時代に高山正彦と言う解説者に毒され?て以来に始まりますが、何しろこの音楽は録音が悪く、当時でもシャンソンやジャスに比べて飛びぬけて音が悪かったと記憶しています。 ですから、音楽と音質は別物と考えてはいましたが、その音の悪さに依って他のジャンルも聞くようになり、私の音楽ライフが他のジャンルへと発展して行ったと考えています。 今回の旅行は、このマニア仲間の7名でプライベートツアーを組み出かけたわけです。 先ず、嘗てのマエストロ達の墓参りですから、 言ってみればマニアに課せられた巡礼のようなものでしたが、 現地のタンゴ事情は想像以上にタンゴが健在で大いに堪能出来ました。 今のアルゼンチンはピアソラ一辺倒と思いきや、 トラディショナルな演奏スタイルのライブハウスが沢山存在します。 ライブハウスは、恐らく一ヶ月滞在し毎晩行っても行ききれないほど存在します。 なかには、観光客目当ての派手なものもありますが、シックなトラデッショナルなお店も健在で多数あります。
最近、アルゼンチンタンゴの来日公演が結構あり、 概してこのアーティストたちは現地で活躍している大物達なのですが、日本での公演は、大劇場でPAを使ったものが殆どですから、タンゴの真髄を伝え得ないものと私は思っております。この様な演奏は音楽ジャンルのワンオブゼンであり、我々の望むタンゴ演奏では有りません。 しかし、アルゼンチンに行くとその真髄を聞くことが出来ます。今もそれが健在で頼もしく思いますが、 私の歳と掛かる費用を考えると、遠い国アルゼンチン詣は難しくなりつつあります。
最後に、走っている車はヨーロッパ製が多く、フランス、イタリア製が目立ちます、米国車や日本車は少ないのですが、最近トヨタがノックダウンの工場を建てたようで、日本車は高級車 として人気が有り評判でした。これから、当社 のメイン事業でありますカーエレクトロニクス事業の種もこの地で芽生える事でしょう。