会長のコラム 166
前回のコラム165にて、入院を大げさに表現してしまい、コラムを読んで頂いている方々に要らぬご心配をお掛けしてしまいました。励ましのお言葉や良い医者を紹介するとか、失敗の例とかいろいろご助言を頂き有難う御座いました。結果は、何事も無く2泊3日の入院を無事勉めてまいりました。と言いたいところですが、退院後2週間は酒を飲んでは駄目と言われていたのを、4日目頃止むを得ずワインをグラスで2杯飲んでしまいました。その結果翌日に下血し、すぐに良くなるだろうと一日そのまま経過しましたが、一向に収まらないので翌日病院に電話してみたところ、すぐに来るように言われ、自分で運転して気楽に担当医に面会したところ、すぐに入院と言う事で何の支度も無いままに入院とあいなり、早速、大腸直視の段取りに入ると言う大事になってしまいました。その直視検査の結果、出血の原因は手術の痕からではなく、憩室からの出血でした。私、不整脈の持病で脳梗塞予防の為に血液サラサラ剤を常用しているのが原因と医者は言っていますが、手術と飲酒の関係は不明であります。結局1週間の入院となり、その間殆ど飲食無しの点滴で入院生活を過ごしましたが、つくづく医者の言う事は聞かないとダメだと言う事が骨身にしみました。
手術経験者の中には、自慢気に武勇伝などを語る人がいますが、まず医者の話を聞く事が第一番、素人の話は聞き流す事にしましょう。
今月は、コンサートのスケジュールが多かったのですが、それでも手術の犠牲になったのは、成城合唱団のコンサート一つだけでした。関係者の方々には申しわけありませんでした。懲りずにまたお誘い下さい。
7月1日新国立劇場にて團伊玖磨/オペラ「夕鶴」を19:00開演で行ってきました。指揮が大友直人、オーケストラが東京フィルハーモニー、出演者はすべて日本人、そして本公演はすべてダブルキャストでした。初日公演では、タイトロールの「つう」に、ここしばらくお目にかかっていなかった澤畑恵美で、相変わらずの健在ぶりを発揮していました。演奏は当然日本語によるものでしたが、だからと言って字幕スーパー無し、と言うのは如何なものか、歌唱中の歌詞の内容など聴きとれませんよ。私は何度も見ているオペラですから支障ありませんでしたが、それでも字幕スーパーは欲しかったです。そしてこのオペラが素晴らしい作品であり、日本人の作品である事に改めて誇りを感じましたが、オペラファンの中でも人気度は今一のようで、今回の公演は3回だけでした。やはり日本製に偏見があるのかと思うと残念であります。
7月2日ジャパンアーツ主催による「スペシャル・コンサート」と題して、ジャパンアーツ40周年を記念するコンサートがサントリーホールにて13:30開演で行われ行ってきました。このコンサートは、ジャパンアーツに関わるアーチストが20数名出演する大掛かりなコンサートで、出演者には佐藤しのぶ、仲道郁代、錦織健、横山幸雄などの今旬の奏者や歌手が出演する祭典でありました。舞台のテーマとして第一部が「円熟のストーリー」、第二部が「未来への音を重ねて」と謳っていましたが、そのテーマと内容にはあまり繋がりを感じませんで、何か無理にテーマをつけてストーリー化したように感じ、スターオンパレードの見世物公演との感じがありました。
河原忠之のピアノ伴奏による佐藤しのぶと錦織健によるヴェルディ/歌劇「椿姫」、森麻季他による「ラ・ボエーム」より「告別の四重唱」など貴重なカップルの演奏には興味をそそられました。また、メンデルスゾーン/ピアノ三重奏では川久保賜紀、遠藤真理、上原彩子の興味ある3人による演奏などが行われ、楽しい2時間を過ごさせて貰い、スターオンパレードの見世物公演などと文句を言える状況ではなかった事を申し添えておきます。
終演時間が15:30でしたから夕食には半端な時間なので、仕方なく帰宅しました。折角都心まで来ているのに、この点些か残念でした。
7月5日サントリーホールにて、16:00開演でウイーンフィル第一コンサートマスターのライナー・キュッヒルと菊池洋子のピアノ、そして司会が朝岡聡によるコンサートに行って来ました。
ライナー・キュッヒルの奥様は神奈川のご出身の人で(離婚したとも聞きましたが定かでありません)私の会社の所在地である横浜市都筑区の公会堂での支援コンサートに時々行かせて貰い、随分昔の事になってしまいました。
キュッヒルさんは、20歳でウイーンフィルの第二コンサートマスターに就任し、1971年から第一コンサートマスターに就任されたキャリアの人です。私がキュッヒルさんとウイーンでお会いした時は、ちょうどNHKの新春番組にキュッヒルさんが出演された直後で、そのときキュッヒルさんが流暢な日本語でアナウンサーに応えているのを見たすぐ後だったので、日本語がずいぶんお上手ですねと言いつつ話しかけたら、「キョトン」として理解しかねる様子、すかさず通訳の人が説明してくれましたが、TVに出演したときは、その場だけ練習したとのことで、知られざる楽屋裏を覗き見し、失礼したことを思い出しました。
ヴァイオリン奏者キュッヒルさんの弓サバキは、よくある追っかけおばさん達の好むシナヤカなものではなく、確りした硬い弓サバキです。しかし、これぞストラディヴァリの音と分かる「音色」を奏でる奏者で、元N響のコンサートマスターであった徳永二男さんもこのタイプでありましょう。私が好む弦楽合奏には欠かせないタイプの奏者と思います。
共演した菊池洋子さんは、2002年にモーツァルト国際コンクールで日本人として初めて優勝した人で、ザルツブルグ音楽祭に招待されるなど、国際的に活躍されている今旬の日本人国際派ピアニストです。
ステージの第一部がモーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ42番、ベートーベン/ヴァイオリン・ソナタ第5番、の2曲。そして、第二部はクライスラー、R.シュトラウス、サンサーンス、サラサーテなどのヴァイオリン独奏曲の定番が演奏され、私の追っかけ時代が懐かしいコンサートでした。
このコンサートは、三菱UFJ銀行のお客様への接待的性格のもので、コンサート終了後に隣のANAホテルにて立食パーティーが催されました。なんとその席で創業当時苦労し、暫くお会いしていなかった経営者仲間にバッタリ会って、何と喉頭がんを患い手術の結果、声帯へのダメージで発声出来なくなってしまい、世間との付き合い一切絶っていたとの事。最近スウェーデン製の発音器のお蔭で少しづつ世間に出られるようになったとの事で、偶然とは言え思いがけない幸運に遭遇し、主催者に感謝でありました。
7月9日神奈川フィル定期演奏会 音楽堂シリーズに15:00開演で行ってきました。指揮が川瀬賢太郎、ヴァイオリンが郷古廉、演奏曲目がバルトーク/弦楽のためのディヴェルトメント、ハイドン/ヴァイオリン協奏曲、そして後半ステージがハイドン/交響曲92番 でした。
このコンサートの選曲には、毎回何らかのテーマがあって得られるものが多いのです。バルトークは、自国ハンガリーのバジャール民謡の研究者で、日本でも合唱団の選曲には欠かせない曲が多いと言われ、合唱好きの友人から録音やダビングを頼まれるので、初めて聞く生演奏に関わらず、心配した難しさは感じませんでした。伝統的なコンチェルト・グロッソの形態で半音階が少し混じるものの、バッハを聴く気分に新鮮味をプラスした感覚と緊張感を伴い大いに楽しめました。定期演奏会の選曲に裏切られませんでした。
ハイドン/ヴァイオリン協奏曲を演奏した郷古廉については、私、知りませんでしたが、大きな国際コンクールに2つも優勝し、サイトウキネン・オケにも招かれ国際的に活躍している人である事を知りました。音を聞いた瞬間に「ア!ストラディヴァリ」だと分かる音色、硬い弓さばき、瞬時に凄い大物と理解しました。アンコールを期待したのですが、有りませんでした。今後の活躍に期待しつつ注目したい奏者です。
7月16日土曜神奈川フィル定期演奏会県民ホールシリーズに17:00開演で行ってきました。指揮が現田茂夫、演奏曲目は前半ステージがモーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」からの抜粋。そして、後ステージが、お馴染みのオルフ/カルミナ・ブラーナでした。合唱 神奈川フィル合唱団、ソプラノ 三宅理恵、テノール 中井亮一、バリトン 吉江忠男、でした。
お馴染みの曲ですが、何と言ってもこのホールは「音」が良く無いのです。オーケストラがオペラ演奏時のオケ・ピットで演奏する時は感じないのですが、オーケストラが舞台に上がると途端に額縁が小さくなった絵画の様になり、湿り気の無い乾いたPAを思わせる「音」になってしまいます。だから行きたくないのですが、演奏の曲目と現田さんの指揮と言う事で、コンサートの魅力から行ったと言うのが正直な心境でありました。
7月30日土曜 恒例のオペラ高輪会が、グランドプリンスホテル新高輪にて、12:00開演で行ってきました。演奏曲目が、ヴェルディ/マクベス、ピアノ伴奏が藤原藍子さん。マクベスを与那城敬、マクベス夫人を小川里美、バンクオーを小幡淳平が演じていました。この歌手の方々は、私の全く知らない人達で、おそらくヤマハ辺りの教室の先生ではないかと想像しています。
このオペラは、ヴェルディの初期の作品で、オペラの形態が定まらない時代の、アリアを聞かせるのが目的の様な時代のものですから、歌手に多くの負担がかかり、その上スピントベルカント唱法を求められるので、歌手によっては敬遠する傾向と聞いています。当日の二人の歌手の方々は、難しい曲に敢えて挑戦したと言っておられましたが、私、音楽の専門家では有りませんで、ピント外れの感想かも知れませんが、大きな瑕疵も無く無事に歌い通し良くやり通したと思います。しかし、オペラ鑑賞の楽しさと言う切り口で言うと大変疲れました。歌手の方々ご苦労でした。オペラファンの観賞と言う点では、疲れが残る以外に無かったと言うのが本音であります。
このホテルは今、大改造中で、高輪会の会場となるレストラン・イルレオーネの食事も以前よりも量は少なめで質が上がったようです。それはそれで、我々年寄には歓迎でありますが、ウェイターの方々が何かよそよそしく、サービスが悪い訳ではないのですが、居心地が今一、駐車場も3時間までのサービスで、結構費用が掛かる様になりました。これから、高級ホテルの形態に移行するとすれば、余計な心配ですが高輪会に影響無い事を祈ります。