Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 212

4月のコラムです。
非常事態宣言が発令されました。ここで、我々企業人が思い巡らす事は、行動制限なるものが、やがてボディブローとして強烈に効いてくるであろうと予測され、企業経営者は大きな試練を迎えることになるでしょう。
コロナ旋風の後に残るものは、荒廃した環境をいかに回復して行くか、永年経営にタッチして来た私も未体験の現象です。そこには社員の生活環境の変化も考える必要があり、脇を占めて掛かる覚悟を持たなければなりません。
私は、行政のお達しに従い、出社を控えています。仕掛中の仕事は、海外ビジネスへのアプローチ、新商品の企画、行政関連機関への対応などで、ルーチンワークは有りませんから、メールによる在宅勤務で済ませています。この在宅勤務なるものをやってみると、効率が悪いのは仕方無いとして、朝の寝起き時に気合が入らない、朝食前のストレッチや薬の飲み忘れなど、日ごろの定常行動に締まりが無くなり、並みの老人生活(失礼)になりそうです。この機会を捉えて、心身改めるべきことに目覚めた良い機会と捉えています。
今月のコンサート予定は、全て中止で音楽ライフは書けません。毎年この時期に行われる、定期健康診断も延期(中止でなければ良いのですが)の状況、このウィルス迫力ありますね、皆様、お気を付け下さい。これ以上書くと湿り続けるので止めます。

この機会に、今企画しているチャンネル アンプ システムに付いてお話します。この方式は、本コラムでも度々載せていますが、紆余曲折しつつも、いよいよ商品化が近くなりました。このチャンネル方式は、特に新しいものではなく、過去から諸先輩方が追い続けて来られた方式に関わらず、未だに普及していませんし。特に新しい理論が有ると言うものでもありません、オーディオ技術がそれ程に難しいものでも有りません。
このチャンネル方式は、極めて原理原則に叶ったもので、プロの現場、特に録音スタジオでは常識化した方式であります、なのに何故普及しないのか。
オーディオ装置で音に大きく影響するデバイスは、入り口を司るカートリッジと出口のスピーカーと考えます。オーディオマニアと言われる方々は、カートリッジを沢山お持ちの方が大勢居られます。それは、カートリッジが、個々に個性が豊富で音楽表現に大きな影響を及ぼすからです。スピーカーはそれ以上に大な影響を及ぼし、その価格はカートリッジよりも一桁いや二桁以上に高額で、大きくて重いのです。しかし設置する部屋の制約もあって、簡単に複数台と言う訳には行きません。それでも、お部屋をいくつも用意して違ったスピーカーを設置して居られる方がおりますが、これは容易なことでは有りません。
最近のスピーカーデザインは、申し合わせたように各社トールボーイのデザインです、これはアートデザインの影響ではなく、音響工学から来るリゾネーション効果を利用したもので、複数の音源を縦方向に直線状に並べると一つの音源に近くなり、ステレオ効果が出ると言う理論からのものです。更に、SPユニットから発する音波の回析効果を避けるデザインでもあります。しかし、このデザインでは、低音再生に必要なキャビティーを充分に確保出来ず、低音再生用の共振のポートを設けます。この共振ポートは、私の言う「らしさ」に沿わない、のみならず、害にもなります。
更に、高級機となると 3ウエイ、4ウエイ とユニットが増えます、ここに音楽信号をユニット毎に分けるネットワークが必要となり、これが電子工学の交流理論に沿わない代物で音楽再生を邪魔します。その原理は専門的になるので説明を避けますが、そこには、スピーカーエンジニアの勘と経験から来る「カット&トライ」の職人技が関与し、我々回路技術者に及ばない世界となります。ここに、スピーカーメーカーのノーハウが有り、作り手サイドの個性がものを言います。
過去には、私も部屋を作り変えたり、スピーカーを買い替えたりの経験をしましたが、「俺の音」が得られませんでした。ここに来て、どうやら「俺の音」なるものを掴み取ったのであります。
さて、それ程の問題があっても、チャンネルアンプ方式が普及しないのは何故か、これはひと言に、良いチャンネルデバイダーが無いからです。この方式では、チャンネル毎に音楽信号を分ける為のフィルターを使います。ここには、前出の交流理論から導かれるバターワース型フィルターが用いられ、このフィルターを形成するのにアナログコンピューターから派生したオペアンプを使います。これが諸悪の根源の一つ、そして全帯域に渡り位相回転が生じる致命的障害が発生します。
ならばデジタルフィルターと言うことですが、これはより大きな問題を抱えます。信号系の中でA/D D/A を繰り返します。繰り返しも良くありませんが、オーディオの分野でのA/D D/A 技術は未熟であります。それは、CD 再生用のDAC の現状が証明する様に、何故英国製の何百万もするDAC が市場で通用するのか、まさかブランドイメージでも無いでしょう。加えて悪いのが、デジタルATTです、音量を絞るのにビットを間引くのです。我々は、抵抗ATT でさえも電力を絞ることから音が痩せると言って使用を控えます。
このデジタルフィルターは、更に悪さをします。デジタルであろうとアナログフィルターのバターワース理論をソフトウエアーで置き換えたものに過ぎないと言うことです、だからアナログ同様に全帯域に渡って位相が回転します。
そこで、我々の提案するのが、アナログ式バターワースフィルターの6dB/oct フィルターの使用です。これには位相回転は有りません、何のストレスも無いアナログバターワースフィルターなのです。しかし、人によっては、6dB/oct フィルターではチャンネル間の重なり合いが有って、ユニットの音が混ざり合うと言います。良くお考え頂きたいのですが、例えばオーケストラの第一バイオリン、色々な個性を持った楽器の混成です、この混成がオーケストラの個性ある音を作ると言われています。私は、スピーカーのユニットの違いからくる混ざり合った音色は、大歓迎と考えますがいかがでしょう。
だまされたと思って、一度我々の提案する音を聞いてみて下さい。

さて本論に入ります。オーディオ機器のなかで、「音」に影響するのは、入り口のフォノ ピック アップカートリッジと音の出口を司るスピーカーと言うことに付いてご理解頂けましたでしょうか。
スピーカーを買い替え、部屋を作り替えることをやるから、オーディオは「カネ喰い道楽」と言われる所以であります。カートリッジの買い足しは大人の趣味で許される範囲でありましょう。ならば、スピーカーは如何する。リスニングルームは、一度は作るのが本筋でありましょう、それに合わせてスピーカーによる「俺の音」を構築すべきと考えます。それには、私の提案するチャンネルアンプ方式が最短の選択肢であります。たとえ、買い替えの欲求が出てもユニットの入れ替えですみます。そのユニットは高価なものでもカートリッジ2個程度の予算で済みます。どんな趣味でもこの程度のカネはかかると思いますよ。何分にもオーディオは音楽有ってのオーディオです、これ程に優雅で格調高い趣味は有りません。夜のコンサートには、ペアーで正装して出かけます。これ今の日本のことですぞ。
この優雅な趣味をお持ちの方々宜しく、お考え頂きたく思います。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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