Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 189

 5月のコラムです。当社の試聴室にB&W 社の800D3 が設置されたのが昨年の暮れで、設置当初はエージング不足でキンキン、ギスギス、本当にこのスピーカーは良いものだろうかと疑いましたが、最近エージングが進むに連れて、成るほどモニタースピーカーとして、プロの現場で評価される理由が納得と言う状況に至っています。本器は、忠実度の高い性能でありまして、音楽信号がスピーカーに到達する迄の欠陥は当然のこと、性格や色調までも表現してくれます。
しかし、音楽を聴く寛ぎの場に適するかと言うと、人による好みもありますが、私はその忠実度ゆえに疑問を感じ、私の悪い癖が疼くのです。
昨年、ステレオサウンド社のグランプリ選定で最高ランクに選ばれた、ソナスファーベル社の「アマティー」と言うスピーカーに興味が向き、さっそく借り受けて B&W の隣に鎮座奉りました。流石に素晴らしい音楽表現に長けているのですが、「らしさ」の表現は一口に言えません。私と貴方では音楽を聴くポイントが違いますよね、私の求めるものと、貴方の求めるものが違って当たり前、360万円となると考えてしまいます。
スピーカーの技術的問題点は、過去に繰り返しこのコラムにて述べている事ですが、信号系は「シンプル・イズ・ベスト」を掲げ、限りなく極限を目指すことが可能です。しかし、スピーカーに付いて、私の考える「シンプル・イズ・ベスト」を実現するとすれば、マルチ・アンプ・システムに行き付くのです。理由は度々申し上げている通りで、今般も現代を代表するスピーカーを聞いてみて、その思いが更に増すことになるのです。
趣味のオーディオは、限りが無く、泥沼だと言われ、試聴室を4つも作ってそれぞれに機器を収め、究極を目指している人が結構おられるのです。私もその一人かも知れませんが、私の場合は、プロとしての義務であり、趣味人とは別に願いたいのです。ここで何が言いたいかと言うと、一つの試聴室にチャンネル・アンプ・システムを組み込むことに依って、求める究極を無駄な費用を掛けずに実現出来ると言うことです。このチャンネル・アンプ・システムを実践しているマニアの方が多いのもそこにあると思います。但し、良いチャンデバが存在しての話であります。自画自賛ですが、私のチャンデバを知人の何人かにモニターをお願いしてみて、満足頂いていますが、今なお磨きを掛け続けているところです。
と言うことで、拙宅の現状をご紹介し、チャンネル・アンプ・システムの在り方、当社の目指す商品の特徴などをご紹介したいと思います。
過去に商品化されているチャンデバは、オペアンプを用いたアナログ・フィルター式かデジタル式がほとんどであります。この従来方式は、チャンネル間の位相がリニアーにならない、信号系はシンプルでない、すべて私の忌み嫌う要素のオンパレードであります。
と言うことで、オペアンプは使用しない、デジタル式の悪者DA/AD は無用、と言うシンプルそのもので有ります。その代わりにフィルター素子として6dB/oct のアナログ・フィルターを CRのみで構成します。そして、チャンネル毎のレベル調整は、当社の特許であるハイブリッド・パッシブATT を使用します。と言うことで、アクティブ素子(増幅素子)を一切使用しない、シンプル・イズ・ベストそのものを実施しています。

全体のブロック・ダイヤを示します。

もう一つの特徴として、本チャンデバはスーパー・ウーファーを加えて、3.1チャンネル構成とします。Low-CH 帯域が20~700Hz、Mid-CH 帯域が700~4kHz、Hi-CH 帯域が4kHzハイパス、そして、スーパー・ウーファーが20Hz ローパス プラス40Hz ローパス と2段構成として 3.1CH システムを作ります。
写真のWE-22A ホーンにはWE-555 がセットされ、SP レコードや復刻LP CD の再生にのみ使用しており、当初は、システムに組み込んでいましたが、ウーファーに対して1.7m 音が遅れ、ステレオ効果に影響しますので、今のところ対策が無くチャンネル・システムには使用していません。

今月の音楽ライフです
5/19土曜14:00開演でみなとみらいホールにて、神奈川フィル定期演奏会に行ってきました。当日の演奏曲目がマーラーの交響曲第九番、指揮が沼尻竜典、コンサート・マスターが石田泰尚でした。
この交響曲は、4楽章の構成で90分の演奏時間の大曲です。しかも、途中での休憩は有りません。この曲は、レコードなどでも長さ故になかなか難しく、生演奏の機会も少ない曲ですから、私も全曲通しで聞くのは数度しかありません。しかし、当日の演奏はまれにみる名演で、改めてこの曲のすばらしさを認識しました。
 マーラーがこの第九番に着手する時期は、マーラー自身と家族に不幸が重なっています。自身の問題として、自作曲の指揮に忙しくウイーン・フィルの音楽監督の職を解任されてしまい、そこに愛娘の死が続きます、さらに自身の心臓病が加わり精神的に追い詰められつつも、米国、特にニューヨークでの仕事の忙しさも加わり、死を深刻に受け止める状況だったと言われます。
この交響曲は、その時期に作曲が始まり、1~3楽章はその悶々とした心境が主題であり、その為か、私には取り付きにくい曲と感じていました。しかし、第4楽章は死に向き合う心構えが出来て、曲も一転して素晴らしいメロディーの連続となります。この第4楽章が30分も続くから会場内は、老いも若きも真剣そのものの空気が漂います。このマーラーが得意とするメロディーは、過去の作品を含めて一番美しいと思うのです。特に当日の演奏から特別なものを感じてしまいました。
なんと言っても、沼尻の指揮が神奈川フィルを思いのままにコントロールしている、こんな交響曲演奏に遭遇したのは初めてであり、久しぶりに鳥肌がたちました。
この曲の初演は、1912年にウイーン・フィルにて、マーラーの信頼する弟子であるブルーノ・ワルターによって行われるのですが、曲の完成が1910年の4月、マーラーの死が1911年ですから、マーラー自身初演を聞いていないことになります。マーラーの生存中から初演までの暫くの間に何があったのか私には知る由もありません。
この交響曲第九番は、第4楽章のみを聞いても多分素晴らしいでしょう、30分間恍惚に浸れる筈と思います。しかし、作曲者は1~3楽章に続くのが第4楽章と創作して作曲していますから、そのご利益は疑問かも知れません、お試しあれであります。

5/20日曜 14:00開演で新国立劇場にて、オペラ ベートーベン/フィデリオに行ってきました。当日の演奏が東京交響楽団、指揮が芸術監督自らの指揮で飯守泰次郎、演出がなんとバイロイト音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナーでした。これも開場20周年特別記念公演の一環のようです。
このオペラは、ベートーベンの唯一つのオペラであります。そしてドイツオペラの革新性を表す重要な音楽史上の作品で、ウェーバー、ワーグナー、R・シュトラウスに続く重要な音楽史上の位置のものと言われています。しかし、如何でしょう、オペラの面白さから言うとワーグナーやR・シュトラウスに譲ると言うのが素人の私でありますが、フィデリオの音楽は何処を切ってもベートーベンであります。
当日の公演は、私にとっては新国立劇場の久しぶりのマチネ公演で、終演が16:40と、老体には大変楽で有難い時間でした。次回と言っても2018/2019シーズンは既に購入済みで、どうにもならない、我々老人はマチネコンサートを選ぶのが原則であること、今頃気づいてどうする。反省しきりの昨今であります。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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