Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 023

コンサートホールの音響効果とオーディオ機器の再生に於けるオーディオルームは、同様に聞き手が受ける感動に重要な影響を与えるのですが、最近改めてこの事を感じ入る経験を味わいました。私が、仕事で懇意にしている松下電器のPAS社様が、石井伸一郎先生の設計で試聴室を新設され、そのお披露目に招かれたときの事です。早速、当社自慢のアルテックA-5を中心とした845p-pアンプ及びCT-1,EA-1を含めたシステムを持ち込み、デモに及んだわけです。興味津々、息を潜めて緊張して構えましたが、なんと、檻のライオンが草原に放たれた如き吼え方にびっくり、もちろん檻は当社の試聴室の比ゆで、草原はPAS社の新設オーディオルームです。

同席する関係者一同アルテックの素性に改めて感動を味わったのですが、穏やかでないのが私を始め、当社のスタッフ達で、普段聞きなれた自社内の試聴室ではその片鱗を見せてはいたものの、かくも大物システムであろうとは思わなかったので、この部屋の違いに驚きを感じると同時に部屋の影響の大きさに改めて驚きを感じたしだいです。参考までに、申し添えますがこのホールは石井先生の条件をほぼ100%満たしたものと聞いております。

次に、前号で紀尾井ホールでの天満敦子リサイタルで、そのときのホールの素晴らしさを記しました。その後、8/26日に八ヶ岳高原ホテルの音楽堂での同じ天満敦子のリサイタルをきいたのですが、これがまた、バイオリンが違うのではないかと思う程に音の違いを体験してしまいました。紀尾井ホールは、音を綺麗に丸めてしまう傾向が感じられます、それはそれで素晴らしい感動を生むのですが、八ヶ岳音楽堂の音はバイオリンの直接音がホール全体に広がります。天満敦子はいろいろな人から天衣無縫と表されますが、この天衣無縫を余すことなく表現してくれたのが、このホールではないでしょうか。と言い切れるのも、極短い間隔で同じ奏者の演奏を違う場所で聞き分ける機会が有ったからと思います。

八ヶ岳音楽堂に於ける天満さんの魅力に付いてもう少し言うなら、この人がバイオリンの練習などするのだろうかと思う程に自然な音を奏で、楽器が勝手に好きなように歌っていると表現したくなるほどに、そして明らかに、私はストラデバリイウスだと楽器が主張しているようです。今年の冬に同じ場所でストラデバリウスを奏でる演奏家を聞きましたが、こちらの方は素晴らしい演奏なのですが、何処か努力と跡研鑽の跡を感じるのです。天満敦子さんも並外れた努力家と聞いています、しかし、その自然体の飾り気の無い演奏は、その人の持つ天性であり、人間性が大きく左右しているのではないでしょうか。八ヶ岳音楽堂でのコンサートでは、毎回コンサート終了後に演奏者との食事会があります、写真撮影など気にしない、サイン会では有難うと握手を求めてくる姿勢、などなど、ファンとの触れ合いの在り方からも人間性の違いを感じてしまうのですが、如何なものでしょうか。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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