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colums会長のコラム

会長のコラム 229

’21.09 9月のコラムです。
毎年 8、9月は、定期演奏会のお休みの季節で、加えて今年はオリンピックも有ってコンサート開催にご難続きの年でした。と言うことで、今月は私の関係するコンサートは全て無し、私にとって極めて珍しいシーズンとなり、音楽ライフは休まざるを得ません。
従って今月のコラムは、今年度の賞にエントリーする新商品の話をします。昨年フォノアンプのEA-2000 定価300万円の商品を発表し、オーディオ各誌から絶賛を頂き、各誌のトップ賞を頂く光栄に預かりました。売り上げ結果は、海外からの引き合いがダントツに多く、国内では高価過ぎて買えないとの苦情が多く寄せられました。
売れ筋のEA-1000 が発売後9年経過するのに合わせて、EA-2000 のエキスを最大限に利用し、量産効果、特に購入パーツのコスト低減、筐体設計による低価格化、等の工夫を凝らしEA-1000 のバージョンアップを図り、EA-1200 としてEA-1000の上位機種と位置付けて発売することにしました。毎度のコラムに変えて紹介させて頂きます。
音質を極める心臓部は、既に開発済で開発費は(ゼロ¥)と計上し、EA-1000 の価格アップを最低減に抑える目標をたてました。私が言うのも我田引水の「気」を感じ取られる事でしょうが、EA-2000は、考えられる良い条件をすべて取り入れた、反省点がありました。
その性能アップのエキスの一つは、イコライザー回路がEA-2000同様にLCR回路の採用、そして筐体のL、R分離であります。ステップアップトランスの別筐体化は、制震構造の改善を図り、本体筐体の中にパッケージしました。そして電源部も一つの筐体に収納しました、結果的にEA-2000 の6筐体に対し3筐体に収め、設置スペースの合理化と相まって、極めてシンプルな形に収まりました。
成れば、「音」は如何か、これが思いも寄らずに素晴らしい仕上がりなのです。なれば、6筐体のEA-2000 と何処が違うか? との疑問にお答えしなければなりません。
オーディオ・マニアの方々にお尋ねしたいのですが、「良い音」とは何を以って定義するのでしょうか。物理特性の良い機器は必ず良い音とは限りません。しかし、良い音の機器は必ず物理特性は良いのです。この事実は何を意味するか、6筐体のEA-2000 は制振とL、R の干渉度合が違い、測定値として計測出来ない微小なもので、敏感なる人間の耳で無ければ聞き分け出来ない、音の「格」として厳然と存在するのです。音楽表現の違い、聞く人の音楽体験の違い、感性への違いへと導くのです。それは、オーディオ体験の違いから来るものと言えましょう。高価だからとか、6筐体だから、の問題ではありません。醸す音楽の表現が違うのです、物理特性の様に数字で表せない感性の世界です。だから、「その違いが正か否か」と言う単純なものでは無いのです。これは、音楽在ってのオーディオであり、この「心」無くして、物理特性のみ追う技術者に成就出来る成果ではありません。
指揮者の小澤征爾が言っていました、ガレリア席の後ろで聞くのが最高と。それは指揮者というお立場だからであり、私は平土間の真ん中が好きです。左に第一バイオリン、その右に第二バイオリン、チェロ、右端にビオラ、そしてその奥に管楽器、その更なる奥に打楽器群、広いステージにその位置感覚を感じつつ、オーケストラのハーモニーが織りなす響きに最高の喜びを感じるのであります。このステージの「見通し感」と言いましょうか、この感じを我が試聴室で再現されなければなりません、当社の音作り原点がここに有るから成しえた結果であります。
昨年のEA-2000も今年のEA-1200も、この点でいずれも遜色ありません。しかし再生する「音」は明らかに違うのです。私は、再生されるレコード内容に寄って、都度機器を変えることを考えています。楽器でさえ、作る人が同じでも音色は変わります。オーディオ機器も同様に人間の作る「物」であり、そこに宿る「音」には作り手の「命」を負っていると考えるのです。だから、筐体は、合わせて9筐体となり、益々音楽鑑賞が楽しくなると言うもの、是非に体験して頂きたいのです。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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