会長のコラム 093
10月のサマリー
今月は、当社新商品の発売時期に当たり、プレゼンテーションなど仕事面で重要な時期でありましたが、11日から21日迄の11日間イタリアへのオペラツアーが予定されており、しかも旅立つ前日の10/10が新国立劇場でのモーツアルト/フィガロの結婚の公演、その前日が神奈川フィルの定期演奏会と言う状況で、慌しい環境下での出発でした。
その他、今月は新国立劇場の公演が2演目あり、加えてゴルフシーズンで仲間が黙っていません。やっと涼しくなって良い季節のスタートでありましたが、私には気忙しい季節の10月でありました。
と言う訳で、今月もチャンネルSPシステム製作は手付かずと言う事になり、楽しみが先延ばしになってしまいました。
1. 新国立劇場 R・シュトラウス/オペラ アラベッラ
2. 神奈川フィルハーモニーの定期演奏会
3. 新国立劇場 モーツアルト/フィガロの結婚
4. イタリアオペラツアー 前編
1. 新国立劇場 R・シュトラウス/オペラ アラベッラ
このオペラは、R・シュトラウスの最後のオペラであり、私にとって楽しめるオペラの最終期オペラであります。ストーリーは、純情可憐な女性をテーマとした単純なものでありますが、素晴らしいメロディーのR・シュトラウス節が益々冴え渡ります。加えて森英恵の衣装と舞台照明がマッチしたメルヘンの世界に聴衆を誘うものです。そして、アラベッラを演じるソプノのミヒャエラ・カウネの美貌と歌唱力、東京フィルの益々の熟達した演奏は何時までも心に残る余韻を伴ってのこの純情ストーリーを10/02の新国立劇場にて観て聞いてきました。
この洗練された音楽を東京フィルハーモニーは、見事な演奏で聴かせてくれました。更に、私が応援する元神奈川フィルのコントラバス首席奏者の黒木岩寿が、東フィル首席としてピットに入り、ソロパートを演奏する姿を見て益々心強い思いに立ち至り、これからの東京フィルの活動に楽しみが募るものであります。
このオペラ「アラベッラ」の総譜が完成したのが、1932年10月ですから、一般的には現代音楽に属する時期の作品であります。そして、R・シュトラウスにとって最後の作品となります。しかし、彼の作品中で最もロマン派音楽に近い、素人的な表現ですが、判りやすい作品であると思ってしまいます。そして、このオペラは計算し尽くされ、洗練された曲に仕上がっていると思うのですが如何でしょうか。特に、終幕近辺に演奏されるソプラノのアリアでアラベッラがコップ一杯の水を手にしながら階段を下りてくる場面など、まさに決定的な聴きどころであり、このオペラの余韻を作り出し、聞き手に何時までもその余韻を続けさせる効果はまさに計算づくと考えられます。
兎に角素晴らしかった。過去に此処新国立劇場での公演オペラがDVD化され市販売されていますが、本公演も是非DVD化して貰いたいと強く願う作品であります。
終演後は、会場でばったり会ったオペラ好きの知人とイタリアレストランにて久しぶりのオペラ談議に楽しい思いをし、楽しい週末を過ごしました。
2. 神奈川フィルハーモニーの定期演奏会
イタリア出発の前々日10/9みなとみらいホールでの演奏でありました。演奏曲目は、前のステージがコープランド/エル・サロン・メヒコ、そして ヒナステラ/ハープ協奏曲、後のステージがドボルザーク/交響曲「新世界」でありました。
前般ステージのコープランとヒナステラは私の苦手とする現代音楽で、コメントは控えさせていただきますが、ヒナステラはアルゼンチンの出身でバレンボイムやピアソラ同様にアルゼンチンの音楽文化の象徴的存在であります。しかし、アルゼンチンタンゴのファンである私としても世界の盟主ピアソラに馴染めないのですから、推して知るべしと言う事であります。
当日の指揮者キンボー・イシイ=ホアトウは、ヨーロッパ、アジアで活躍する今後が期待される指揮者の1人として注目されていると言われています。ニューヨーク州カユーダ室内管弦楽団の音楽監督を7シーズン務めた後、小澤征爾に師事しボストン交響楽団を指揮するなどの活躍をし、日本国内でも大阪交響楽団の首席客演指揮者に就任しているとプログラムに記されています。
当日演奏された、ドボルザーク/交響曲9番「新世界」ですが、私はケルテスの指揮によるウィーンフィルのものが好きで、このレコードは特に録音が良いのでオーディオ機器のテストレコードとして使用していますから、耳にタコが出来るほど聞いています。ここで演奏される我が神奈川フィルの演奏に興味深々の思いで聴いていました、聞きなれたみなとみらいホールでの神奈川フィルの演奏は、ケルテストは違った「新世界」を明確に解る状態で聞く事が出来て、後々までも印象に残る公演でした。
3. 新国立劇場 モーツアルト/フィガロの結婚
このオペラに付いては、私ごとき者が多くを語るべきでは無いのですが、何と言ってもモーツアルトの一番油の乗り切った時期の作品であり、モーツアルトもこの作品に賭けるエネルギーも尋常ではなかった時期の作品ですから、その完成度は只ならぬものを感じます。私は、見る回数を追う毎に新しい感動に遭遇すると同時に、観るたびに楽しい思いができる私にとっては貴重なオペラです。何と言っても新国立劇場は税金で賄われています、行かなければ損です。
当日の終演後は、成田の日航ホテルに直行で、ホテルに着いてからは出発前の緊張と忙しさからやっと開放と言う次第でありました。
4. イタリアオペラツアー 前編
このツアーは、音楽評論家の加藤浩子さんが同行し、イタリアの都市パルマで行われるヴェルディーフェスティバルを中心にして、前後にジェノバ、ボローニア、ミラノでオペラを観て歩くと言う、魅力満点のツアーであります。
この魅力あるタイトルでありましたが、ハプニング続きのバラエティーに富んだツアーでありました。このツアーの目玉は、ヴェルディー生誕地パルマでのヴェルディーフェスティバルです。特に、この時期でなければ行われないパルマ郊外のブッセート/ヴェルディー劇場でのオペラ「アッテラ」の公演とテノール歌手のローランド・ビリアソンが再出発して出演するミラノスカラ座でのオペラ「愛の妙薬」でありました。
さて、成田を出発しフランクフルトでトランジットしてミラノに到着します。到着するや3時間以上かけてジェノバまでバスで移動ですから、成田を出て17時間以上地球の自転に逆らって乗り物に乗っているわけで、その疲れようは尋常では有りませんでした。それも、ジェノバの「カルロ・フェリーチェ歌劇場」でロッシーニ/セビリアの理髪師を翌日夜に鑑賞するために強行移動しているのですが、出発直前にジェノバ市の財政が悪化との事で、このオペラ公演の中止が知らされていましたから、何ともやりきれない思いで疲労に耐えていました。と言う事で、今回のツアーは出だしからケチが付いて何か悪いものを予感するものでありました。
しかし、到着した翌日の疲れは、睡眠したとは言え、そう簡単に回復するものではなく、オペラ鑑賞予定で空いた時間は早速ワインの鑑賞であります。予定通りにオペラが開演されたとしても殆ど睡眠状態であったかと思うと、まあこれも「良し」と思えるのがイタリアの良いところです。
ここジェノバは、コロンブスが生まれた地であり、ヴェルディー/シモン・ボッカネグラの舞台となった誇り高い豊かな歴史を持つ町です。そしてここのオペラ劇場「カルロ・フェリーチェ歌劇場」にて、ロッシーニ/オペラ「セビリアの理髪師」を観劇する予定でした。公演中止となってしまい、オペラ劇場の見学のツアーになりました。このオペラ劇場は、ヨーロッパに良くある馬蹄形の劇場ではなく、お馴染みの近代的な劇場でありまして、音響効果が抜群と言われる理由が理解できました。これも第二次大戦で戦災を受けて建て直したものであります。
劇場の正面玄関 | 劇場のロビー |
舞台から見た劇場の客席 |
翌日は、ユネスコ世界遺産チンクエ・テッレの観光をしつつボローニャへと移動します。ここチェンクエ・テッレは海岸線に面した葡萄畑の丘陵地帯で、その入り江には嘗てのイスラム海賊の襲来を知らせる塞やカラフルな家々、海を望む教会など、美しい景観が楽しめさすが世界遺産の観光地でありました。
丘陵地の途中でバスを降り、葡萄畑の中の道を海岸に向けて徒歩にて下りますと、その途中に写真のような葡萄畑での作業に必要なトロッコなどが有って、珍しい光景が見られます。そして何といっても上から見る海岸線の入り江は、美しくもあり、海賊が襲ってきたと言われる入り江の豊かな光景が点在します。そして塩野七生の小説にあるイスラムの海賊が襲った土地かと思うと何か身近なものに感じてしまいます。
写真を楽しんでくださいと言いたいのですが、ニコンの一眼レフに間違えて室内撮影用の広角レンズを装着し、これがズームレンズの積もりでいたと言うミスを犯してしまい、満足な写真が採れていませんでしたが我慢して下さい。
葡萄畑の中のトロッコ | 入り江の町(海岸に沿って沢山ある) |
丘陵を下りた町並み | 海岸線の景観 |
このイタリアオペラツアーに付いては、写真なども添付したいので、長くなりますから本コラム93では前編とさせて頂き、続きはコラム94として追加的に後日アップすることにさせて頂きます。