Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 142

強烈な暑さで始まった8月でした。しかし、このコラムを書いている月末には嘘のような涼しさで、毎月1回書くこのコラムも、書き手として違和感を覚えるものであります。

8月は、夏休みに掛けて南スペインに行く予定で、費用も支払済でしたが、腰の具合が可なり良くなったとは言え、旅行に自信が持てず、結局キャンセルする事にしました。
代わりに、晩秋に、ハワイにでもリハビリを兼ねて休養に行くのが無難と考えるのですが、改めて健康の有難さが身に染みると言うもので有ります。
拙宅の3チャンネル式のチャンネル・アンプ・システムも、チャンネル・デバイダーのカットオフ・ロールを6dB/octに設定した場合がナチュラルで私好みと言う事で、本件一件落着と言う事になりますが、本当にそれで良いのか、プロの心得として周知化しておきたいので、もう少し、検証する事にします。
カットオフ周波数における傾斜の急峻度合い、ここでは、ロールと言いますが、急峻にするとオーディオ歴の浅い人や音楽を聞かずに音を聞く人は急峻なロール時の音に興味を持たれる傾向です。
しかし、ベテラン・オーディオ・マニアの方も素晴らしい、人生が変わったと言って賞賛される方も居られて、複雑な心境になります。その様な環境のなかで、6dB/octが素晴らしい事の「周知化」を計るには、この両者を簡単に切り替えて、試聴出来る環境が必要であり、対策を思案中であります。
急峻なるロールで、しかもフェーズ・リニアーのフィルター特性をアナログ回路で作る事は常識的に出来ません。だから、6dB/octが最良と言うと、それはアナログ派の「やらせ」と思われる恐れがあります。従って、論拠を立証する為に、まだまだ、やる事が多いのです。

さて、今月の音楽ライフです。今月は、松本の「サイトウ・キネン・フェスティバル」と神奈川フィルの定期演奏会の2件をレポートします。

長野県松本市で毎年行われる「サイトウ・キネン・フェスティバル」に、今年は8/26(火)19:00時開演の演目、ヴェルディー/オペラ 「ファルスタッフ」、に行ってきました。
演奏が、コンサート・マスターの矢部達也率いるサイトウ・キネン・オーケストラ、指揮がファビオ・ルイージで、現時点で、求められる最強の布陣によるオペラ「ファルスタッフ」でありました。
この日は、本演目の最終公演でしたが、火曜の19:00時開演と言う事で観客としては、あまり良くない条件でした。都心から来るにも日帰りは絶対不可能、この為だけに宿泊するには中途半端に時間の余裕が出来たりして、この条件の悪さも有っての事でしょうか、客席の状況は80%程でした。
チケットの料金が、コンサートの内容からして、可なりリーズナブルだったと思うのですが、勿体無い状況でした。
オペラ劇場としての「まつもと市民芸術館」は、音響と言い、舞台の佇まいと言い、申し分のない環境であります。歌手の声量技量が手にとるように判ります。当日のタイトロールのファルスタッフ役を演じるバリトンのクイン・ケルシーは、今旬の歌手であり流石に図抜けた声量には久しぶりに堪能させてもらいました。
フェント役の代役、テノールのパオロ・ファナーレは、ケルシーの声量に押され気味でしたが、役柄からして特に不自然さは感じませんでした。オペラ歌手のソプラノ、テノール、特にソプラノですが、歌手の寿命が短く、旬をすぎると舞台に出る機会が少なくなります。
加えて、若い新人が次々に出てきますから、我々も覚えきれないし、常にサーチを怠らない程に熱心と言う事では有りませんから、これほどレベルの高いコンサートと言えども、事前に歌手の生い立ちを知らずに、オペラを鑑賞する事はしばしばであります。
今回の演目に付いても、指揮者が、ファビオ・ルイージと言う事で、滅多な事は無いと初めから信じていました。それにしても、歌手陣と言い、オーケストラの演奏と言い、この公演は素晴らしかったです、これだけ素晴らしいオペラ演奏は滅多に無いと言い切れます。
今、忙しさでは、他に類を見ないと言われる、メトロポリタン歌劇場首席指揮者を務めるファビオ・ルイージが、よくも、この松本までお越しになったものだと思います。それは、やはり小澤征爾の「力」と言うものでしょう、兎に角素晴らしかった、録画記録がある事を期待して止みません。

神奈川フィル定期演奏会
8/29(金)19:00時開演で、よこはまみなとみらいホールに行ってきました。
指揮が、小泉和弘、コンサート・マスター石田康尚、演目が、グラズノフ/バレー音楽「四季」、チャイコフスキー/交響曲6番ロ短調「悲愴」でした。
グラズノフ/バレー音楽「四季」は、初めて聞く曲でしたが、中々良い曲で初めてと言うのが不思議です、定期演奏会と言う場だから聞けたのかも知れませんが、もっと演奏機会が多くても不思議でない曲です。
グラズノフは、チャイコフスキーと同じロシアのペテルブルグの生まれ育ちであり、チャイコフスキーとは20歳若いとのことであります。20年の歳の隔たれでありますが、伝統的なヨーロッパへの憧れを感じさせる生活環境が思い忍ばれる、素晴らしいメロディーが繰り広げられる曲でした。
チャイコフスキーの交響曲6番と合わせての演目選定のセンスの良さ、聞かせ方はプロとして当たり前と言えばそれまでの事ですが、この定期公演シリーズは並みのものでは無いと言う気迫を感じるものです。その演奏も相応に素晴らしいものでした。
東京には数多くのオーケストラが存在し凌ぎを削ってします。一味の違いは、やはり神奈川フィルならではのもの、小泉和弘の首席客演指揮者として就任したこともあるのでしょう、神奈川フィルの益々の健闘を祈るとともに、楽しみが募ると言うものであります。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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