会長のコラム 070
新年明けましておめでとう御座います。本年もご愛読頂けますよう頑張りますので宜しくお願い致します。
毎年、年末になるとオーディオ雑誌の各社は、その年に発売されたオーディオ機器メーカーの新商品の格付を行うイベントが行われ、記事として発表されます。対象となるメーカーはその評価に気を使う傍ら、年末の消費者の財布の紐の緩みを期待してデリバリー業務に追われます。
煩雑な年末を過ぎて、一息入れてみると世の中容易ならざる不況の深刻さに改めて気が付き、我が社の台所を預かる財務部からは悲鳴が轟いている始末。世情の悲鳴も嫌がうえにも聞こえてくるから、経営に携わる我々には必然的に縮み思考になってしまいます。
資源国としてその繁栄を欲しいままであったロシアもオイルの暴落によって経済は見る影もない状態であり、貿易黒字を溜め込んだ中国、インド、と共にロシアもその集めたカネの使い方を誤り、本来自国の経済発展に投資すべきところ、先進国の金融投資に走りバブルの要因を作ったと言われており、地球上まるごと不況の状況になりましたが、わが日本国は、国民の個人資産が豊富であるために、円高となりご承知のような、今のありさまであります。
不況だと、全ての物が売れなくなるのでしょうか。自動車なども高級車は大衆車 の減産量の半分程度であったり、高級レストランなどは客足が衰えていません。ただし、高級でも社用族の行くような特徴の無い店や高級車も社用相手の車は別のようです。
オーディオのような生活に関係の無い商品が不況だから売れないと言うのは説得力に欠けます。ユーザーの中には、社用族もいると思うので不況が全く関係無いとは言えませんが、売れない理由は先の高級品同様に理由は別にあるかも知れません。輸入品などは買い方で随分安く手に入ると聞いています。
人気のコンサートチケットなどは、かなり前から計画し手配しなければならないので、今回の様な急激な経済不況の場合、その場になって行ける状況では無くなってしまう事もあって、楽しい筈のコンサートや食事も却って憂鬱なものなってしまい、人間の諸行も複雑なものとつくづく思う次第です。
1月10日は、「佐藤しのぶwithベルリン・フィル八重奏団」と題するコンサートがみなとみらいホールにて行われました。このコンサートで「佐藤しのぶ」の歌う歌は、たったの三曲で、しかもオペラは「メリー・ウィドー」より「ヴィリヤの歌」の一曲だけと言う寂しさ。彼女の歌うヴェルディーやプチーニはもう望むのは無理なのでしょうか。1月10日といえば正月気分も抜けて厳しい現実を見せられる時期であり、その影響もあると思いますが何か裏切られた感じがして寂しい思いをしました。しかし、彼女の舞台は声は衰えたものの、その存在感は立派なものであった事を附記させて頂きます。
ベルリンフィル八重奏団に付いてですが、結成から70年以上と言うベルリンフィルのトップメンバーを集めて編成された伝統のある団体で、それだけに素晴らしい演奏でありました。特に第一バイオリンのロレンツ・ナストゥリカの音が際立っていました。そもそもこの楽器編成は、中世の宮廷お抱えの管楽バンドであるハルモニー・ムジークから発展したもので、当日演奏されたベートーベン七重奏曲はモーツアルトのディベルトメントを思わせるところがあり、これもベートーベンかと思わせる側面など興味深く聴くことができました。
1日おいて、1月12日に鈴木慶江と水口聡が出演するウイーン・シュトラウス・フェスティバル・オーケストラ(SFO)によるニューイヤー・コンサート2009と言うコンサートが同じ「みなとみらいホール」で開催されました。
前々日に佐藤しのぶを同じ場所で聞いていただけに、その存在感に雲泥の差を感じるものでありましたが、彼女はCDでブレイクしその年の紅白にも出演したので、知名度と集客力は抜群と思います。しかし、オペラ歌手としては大村博美や幸田浩子に一歩譲るものと思っています。
この長い名前のオーケストラ(SFO)ですが、一時的な寄せ集めのオーケストラの様に思っていましたが、30年の歴史を持ち特に音楽監督を務める指揮者のペーター・グートは、ヴァイオリンを弾きながら指揮をする名手でありまして、ウイーン音楽の伝統的様式を踏襲した正統派オーケストラとして認められているものだとのことです。このところ、生演奏と言うと神奈川フィルと新国立劇場の東京フィル、東京交響楽団を聴く機会が多く、久し振りに続けてヨーロッパのオーケストラを聴いてみるとその大きな違いを感じてしまいます。
え!その違いですか。それは一口に言って遊び心です。演奏と言う作業(?)に余裕があります。この二つのコンサートは、歌手の佐藤しのぶ、鈴木慶江、水口聡に惹かれて行ったようなものですが、結果としてこの二つのヨーロッパのオーケストラを聴けた事が、私にとって大きな成果でありました。