Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 091

コラム91の追記とお詫び

NHK-BSのバイロイト音楽祭実況放送に付いての記事ですが、私のお客様でこの現場にて聴いてこられ、帰国後にこの番組の録画をご覧になり、更に私のコラムをご覧になった方からのコメントが入りました。私が感じていたオーケストラの音の薄さは、現場では全くその様なことが無く、声の収録も現場の実況を全く再現していないとの事でした。だから、私には絶対に行かなくては駄目だとの厳しいお叱りを受けました。実況放送とは言え、所詮コピーですからその様なこともあるのでしょうし、生と再生録画録音の差ですから、有って当たり前と思います。しかし、行った事が無いと言うのは悔しいですね。
それから、「コラム91」の文中に誤りがありましたので、深くお詫びいたします。誤り箇所は、ショルティーがこの劇場で一度も演奏したことが無いとの行です。実は、一度だけ1983年にこのオーケストラピットを少し改造して演奏している事実に付いて訂正させてください。しかし、オケピットの構造に付いては基本的に劇場側との意見が合わずに以来一度も演奏しておりません。
本件、「コラム91」をお読み頂いた方からのご指摘により、私が調べた結果でございます。御礼と合わせてお詫びいたします。(2010.9.10)

1.NHK-BS バイロイト音楽祭の実況放送
8月のコンサートの開催は、低調でありましたが季節柄当然であるし、我々もその方が歓迎であります。そんな環境の中でNHK-BSによるバイロイト音楽祭の実況中継は圧巻でありました。
当日は、録画すべくスタンバイしたのですが、手持ちのレコーダーのHDD残量が5H(DRモード)でこの番組をフルに録画するには少し足りません、残念ですが、DRモードからHGモードに変えました、この差は、50インチ以上のディスプレイになると表れますが仕方ありません。
話はチョットはずれますが、HDDに録画された画像は大変貴重でして、ハイスペックのブルーレイディスクにダビングしてもその画像出力はアナログでしか取り出すことは出来ません。CDのダビングの様に、デジタルtoデジタルと言うわけには行きません(プロの世界は別ですが)。ですから、HDDに録画された映像をDVDにダビングしてHDDのスペースを明けるなど、私には出来ませんのでプレーヤーに永久保存をしています。
話を戻して、バイロイト音楽祭ですが、この放送では休憩時間を利用して舞台装置やオケピットを紹介していました。この祝祭劇場の構造は色々なところで紹介され写真や図面を見ていますが、この様にハイビジョンカメラによる撮影は始めてで大変興味をもちました。
このオケピットの構造に付いては賛否両論と言うか、色々な人が色々云っていますが、私自身行ったことが無いので、私見すら述べる資格は有りません。
しかし、大変興味ある事実として、ワグナーの演奏で定評のあるショルティーがこの劇場で一度も演奏していない事です。聞いた話ですが、ショルティーはこの構造を見て「冗談じゃない、こんな所で演奏するのは嫌だ」と云って断ったと言う事です。
NHK-BSの実況時のマイクセッティングとか当日の集音録のデータなどもこれから明らかになると思いますが、兎に角、素晴らしい熱気溢れる演奏と音楽の素晴らしさに参ってしまい、余計なことを考える余裕など無かったと言うのが実態でした。しかし、落ち着いて聞いてみるとオーケストラの音の薄さを感じるのが気になります。
それにしても、一度は行ってみたいオペラハウスです。この劇場は、空調は無いし出入り口は施錠ですから、倒れる人も出るそうです。行くには若くないと駄目ですかね、お歳の人は命がけすよ。それに、この季節は、仕事で何度も訪れた事のあるニュルンベルグですが兎に角暑いのです。そのニュルンベルグはバイロイトの隣町ですからね。

2.サイトウ・キネン・フェスティバル
8月は、本当に暑くて参りました。この調子だと9月も暑いかも知れませんね。
8/22日曜には、毎年松本で開催される「サイトウ・キネン・フェスティバル」でのオペラ公演「サロメ」の初日公演に行ってきました。ここ松本も横浜と変わらない暑さに期待はずれでした。
8月は、東京や横浜でのコンサートは定期演奏を含めて殆どがお休み状況であります。流石の私も8月のコンサートはこのサイトウ・キネン・フェスティバルだけでした。
当日は、日曜でして例によって高速道路千円乗り放題、当然混雑が予想されましたが逆方向ですし、夏休みも終わりが近いのでお子様方は大変の筈と思い、あまり心配せずに、しかし多少の余裕をもって出かけましたが、国立インターを入るや既に渋滞でありまして、「何だ!これは」と叫んでしまいました。
今までは、事故などのような余ほどの事でないかぎりこの様なことは有りませんでしたから、用も無いのに千円乗り放題に魅せられて、出掛けてくる人が多いのではないかと思ってしまいます。
私個人的な意見としては、本当に用事のある人のためにこの制度は止めて貰いたいと思っています。用の無い人達が高速道路に出てきて経済効果など期待出来ますかね。最近、お子様が渋滞で車に酔ってしまい「お父さんの車に乗りたくない」との声を良く聞きます。
さて、「サイトウ・キネン・フェスティバル」ですが、当初の目的であった、斉藤秀雄の縁の演奏家達によって構成されるフェスティバルでありましたが、このところ、事情は我々門外漢には不明でありますが、今年のメンバーをみてみると、その趣旨は可也薄れてきており、その傾向が益々進化している様に思います。多分、来年はフェスティバルの名称が変わるのではないでしょうか。
小澤征爾の体調不良により、今年のオペラ公演の指揮がオメール・メイア・ヴェルバーに変わっての公演でした。この人は、イスラエルの出身で今最も期待される気鋭の若手指揮者であります。その指揮姿はカリスマ性に溢れオーケストラが一心不乱に付いてゆく姿が印象的でありました。そして、その音でありますが、コンサートマスターの矢部達哉他従来のサイトウ・キネン・オケのメンバーも見られるものの、今までの音とは違う歯切れの良い明るい近代的な音を作り出していましたが、舞台の歌手陣とオケの間に何か繋がりの悪さを感じ、やはり、オペラ演奏になれていない指揮者の影響かと思ってしまいました。
今年のオペラ公演、R・シュトラウス/サロメについてです。このオペラ1幕物、1時間30分程度の比較的短いオペラ(楽劇)であります。物語は、我々日本人の草食系には理解し難い少々グロテスクな内容でありますが、R・シュトラウスの綺麗なメロディーに酔って独特な世界へ導かれます。この快感の様な物が何者にも変えがたい雰囲気によって1.5時間の公演があっと言う間に過ぎてしまいます。
私は、オペラと言う芸術が、このR・シュトラウスによって終わってしまう事が残念であります。(終わると言うのは、私の独断であり芸術上価値のある作品はR・シュトラウスの後にも沢山あります。しかし面白くないからカネと時間を割きたくないと言うのが私の言い分です)
サロメを演じるのが、デボラ・ヴォイトです、この人は世界を代表するドラマティク・ソプラノの1人であり、並外れた力強い歌唱と美声であります。本公演では、その魅力を余す事なく発揮してくれ、観客を陶酔に導いていました。
このフェスティバルは、「サイトウ・キネン」と銘打っていますが、小沢征爾の深い思いとリーダシップによって世界の一流奏者を集めていますから、その小澤征爾不在と言うのは、すべての面で影響が出ていると思います。特に、このオペラ/サロメについてはそれが言えるのではないでしょうか。
今ソプラノ歌手と言うとアンナ・ネトレプコと相場が決まっているようですが、本当にそうなのでしょうか。役柄が付随しての事ですから、その様に決め付けるのは如何なものでしょうか。かく言う私もロイヤルオペラ劇場に出演する彼女の日本公演に期待する一人でありますが、現代ソプラノ歌手はネトレプコを置いて他にいないと言う考えには抵抗を感じます。そのネトレプコ来年もオペラ公演として来日するようです、世界不況のなかで日本だけが金持ちと目されているのかも知れません。

3.ジャズ・バー 「ファンキー」
暑い最中でしたが、私のお客様の誘いで吉祥寺にあるジャズ・バー「ファンキー」に行きました。吉祥寺駅を出て、右に行くとジャズライブの「メグ」左に行くと「ファンキー」であります。
店の雰囲気はシックで中々良い環境です。再生装置はJBLパラゴンです。このパラゴンと言うスピーカーはジャズファンの方が使っているケースが多く、その音は決まって穴倉から聞こえてくる音が多いから不思議です。不思議と言うのは、このスピーカーは大変優れた特性をしており、鳴らし方によっては、「これがパラゴン?」と言うような素晴らしい音で鳴ります。しかし、大方の人は穴倉の音としてのイメージが強く軽蔑する人が多いのも事実です。
ここ「ファンキー」の音は、典型的な穴倉の音でありまして、まさに「ザ・パラゴン」であります。しかし、この「ザ・パラゴン」がこの店のシックな雰囲気にマッチしており、ここで聴くブルーノート版ジャズは独特の雰囲気を醸し出しており、これもジャズだぞと言わんばかりに張り切っており、確かに良い悪いは別にして一つの文化として見れば納得であります。
パラゴンの穴倉的音は、決まった構成によって作り出されています、「それは何だ」の質問には職業上のノウハウですから答えられません、私もパラゴンをお使いのお客様を何人か持っておりますが、全て私流に音質を直しています。そして、その音を聞かれた方々からは、一様に驚きと戸惑いを感じておられるようです。それでも、特にクラシック音楽のファンの方からは、即座に喜ばれており、このスピーカーの優れた特性からジャズの再生でも、私のやり方が正しいと思っています。とは言え、好き嫌いの世界ですから、押し売りは謹んでおります。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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