Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 218

10月のコラムです。

コロナ禍の下ながら、今年の新商品は大きなブレイクスルーを以て、発売に漕ぎつけることが出来ました。年末に刊行される、オーディオ各誌の優秀商品の選定、ここへのエントリー期限が9月、10月に集中し、雑誌社への資料提供と商品紹介の作業が集中する恒例の季節です。コロナへの気配りと高齢から来る疲労は、半端では在りませんでした。
イコライザーアンプEA-1000は、名機の誉れ高く息の永い商品でしたが、既に8年を経過しており、そのモデルチェンジとして、 EA-2000の新開発に着手し、今般、新商品表彰に向けてエントリーします。
本商品は、更なる音楽表現のリアルを求めて、イコライザー回路にLCR回路 を導入しました。このイコライザー回路は、 理論的にはCR回路に勝るものですが、使用する 「L」素子 に良いものが無く、商品化に躊躇していました。今般、その「L」素子 を徹底追及し、内作することで、期待する性能が得られました。
イコライザー回路の歴史を振り返ると、当初は、帰還型回路によるものが主流でした。この帰還型回路には、音質上に納得出来ない点があり、一般的にはCR型へと変わってきたのが現在であります。今般、当社技術陣は、CR型に勝るLCR型の商品化に成功し、大きなブレーク スルーを成し遂げた、との自負を持っています。
当社のオーディオ機器事業は、フォノ ピックアップ カートリッジ(以下カートリッジと称す)から始まり、カートリッジの性能発揮を求めて、機器の入口たるイコライザー アンプに新境地を開き進めてまいりました。当初は、プリアンプの付属品的存在であつたものを、われわれは、一つのデバイスとして認知される存在に至らしめた、その自負の下で、振り返りますと、初期商品にEA-1(現在はディスコン) が有り、それを半導体化してNON-NFB CR回路方式としたEA-200 をその後に発売しました。何と、このEA-200 は、10年以上を経過したにも関わらず、今もって現役バリバリのお買い得商品として活躍しています。
当社は、複雑な回路技術に頼らず、「理論に忠実に解決する」、これが技術陣のポリシーであります。そして「シンプル イズ ベスト」なる合言葉の元、「音楽有ってのオーディオ!」を全うする、社員一同の「心」、この立ち位置で成し遂げた成果がEA-2000と考えます。
今年の新商品として、他には、カートリッジ、トランスの消磁器(デ・ガウス)、ステップ アップトランス T-500 のバージョンアップ モデルとしてT-550があります。そして、今年の目玉新商品たる、廉価版カートリッジの PP-200 です。
このPP-200 は、当社最高級器のノーハウを生かし、低価格化したものです。その手法の一つは、外装のDLC処理をアルマイト処理にしたこと、その他にマグネットの変更などもありますが、当社商品の血統を立派に引き継いでおり、販売価格10万円をターゲットに新設計したものです。音楽ファンに寄与すべく、その情熱から来る成果であると自負しています。
コロナ禍の下、感染拡大の防止に寄与しつつ、音楽鑑賞に充実した、環境をご提供できるものと期待しております。
次に、平衡伝送に付いて、少しの紙面を使わせて頂きます。当社では、カートリッジからイコライザー アンプへの伝送に平衡型伝送をお勧めしています。これはMC型カートリッジを構成するコイルが、微小交流発電機と考えられることから、+ - 側の発電機能は同じであるとの理論から、イコライザーアンプへの伝送系を、同じ条件で送る事が必須と考えます。しかも微小電力であるが故に、平衡伝送は絶対必要条件と考え商品企画しています。
他方、機器間を繋ぐAUX ラインの平衡伝送が、プロオーディオの現場で使用されますが、この場合の平衡伝送に対する意味は、カートリッジの場合と少し異なります。その事にも説明の必要が有りますが、更に技術内容が続くことになりますので、次回に述べさせて頂くことにします。

今月の音楽ライフです
新国立劇場の新年度シリーズが、いよいよ今月から始まりました。劇場側のコロナへの気遣いは、大変なもので、各席1席空けての公演、エントランスでの飲み物などの販売は無し、不自由を感じるものの、何にもまして有難い再開で有ります。
10月12日月曜 14:00開演で、オペラ ベンジャミン・ブリテン/夏の夜の夢 に行ってきました。
指揮 : 飯森 範親
出演の歌手陣は、全て日本人ですが、これが実に素晴らしい、流石に新国立劇場と言うものでしょう、外国人に引けを取らない出来映えで、その一部を紹介しますと。

オーベロン/藤木大地 ウィーン国立劇場にライマン/メデアにてデビューした、
話題のカウンターテナーです。
タイターニア/平井香織 国立音大卒で新国立劇場には、ワグナーオペラ一連の公演に出演し、
その他にも新国立劇場の常連。
クインス/妻屋秀和 お馴染みのベテラン バス歌手、新国立劇場の常連歌手です。
その他、全て日本人と言うのもコロナ禍からのものと思われ、多いに参考となり、楽しい公演でした。
このオペラは、ベンジャミン・ブリテンと言う事で、現代オペラの範疇でありますが、原作がシェイクスピア作品であり、作曲に当たり作曲者自らが演出して、原作の言葉に拘ったという事もあって、現代音楽のイメージを感じさせない曲に仕上がっています。
以前、オペラ歌手の岡村喬夫さんが、「オペラは、R・シュトラウス が最後だ」と極端なことを言われていましたが、現代風を感じさせないこのオペラは、初めて聞く曲でしたが、違和感なく楽しめました。

今月のコンサートは、10月31日に みなとみらいホールにて、神奈川フィルの定期演奏会が有りますが、このレポートは11月のコラムに書かせて頂きます。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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