会長のコラム 242
今年発売商品のオーディオ各誌への受賞エントリー商品について、10月の当コラムに記載させて頂きました。
永年に渡り開発を続けて来た、チャンネル・アンプシステムの心臓部に当たる、チャンネル・デバイダーも今年中に新商品として発売する予定ですが、商品の特殊性から年末コンペにはエントリーしない事にしています。画期的な商品であり、主要評論家先生方にご試聴頂き、その音質について「素晴らしい」とのご評価を頂いています。一部のマニアの方々から早期の発売を強く求められ、今年中に発売する事にしました。
本商品については当コラムにも度々ご紹介させて頂いていますが、本システムに求める音質等について、改めてアウトラインを手短にご紹介させて頂きます。
チャンネル・アンプシステムの歴史は長く、初期にはオペアンプを使用したアナログ・フィルターで構築されたチャンネル・デバイダーでした。やがてデジタル・フィルターを使用し設定等の使用環境が改善され、この方式の将来が期待されましたが、D/A・A/Dを繰り返す事に依る音質劣化が顕著で、技術の高度化と音楽再生に求められる音質は「我々の思い」以上の成果が得られないと結論付けています。
再生帯域をフィルターで分け、分けた帯域毎に優れたスピーカーユニットを設け、それぞれのスピーカーユニットにパワーアンプを接続して駆動する、と言う理想構成から発展した方式ですが、従来のものは中心となるチャンネル・デバイダーの構築に位相の直線性という音楽再生に欠かせない重要な要素が抜け落ち、加えて、帯域間の重なりを極小化する事に専念したことから、音の厚みを削ぐ結果を生んでいる。これが現状と我々は考えています。
我々の考えは、帯域間の重なりは音楽再生に有意義な要素であり、それ以上に全帯域に渡り位相がリニアーであることが、より音楽再生にとって重用な要素である事に注目し、従来の技術常識を全てリセットして開発に掛かった事であります。
と言う事で、当社のチャンネル・デバイダーは、発売する事により話題の種になる事必至であり、その手応えをオーディオ評論家先生方のご試聴感想から伺い知る事が出来ています。
今月の音楽ライフです。
私が、年間シーズン通して購入しているチケットが、新国立劇場のオペラ公演と神奈川フィル定期公演の2公演です。今月の神奈川フィル公演は、改造工事が完成した横浜みなとみらいホールでの初演と言う事。そして、新国立劇場公演は、ムソルグスキー唯一のオペラ公演。この2つがコロナ渦に逆らって、揃って公演された事に意義がありました。
11/15火曜 新国立劇場に14:00開演でオペラ ムソルグスキー/ボリス・ゴドゥノフに行って来ました。
当日の演奏が、指揮:大野和士、オーケストラ:東京都交響楽団、コンサートマスターが山本友重でした。新国立劇場での都響の演奏は、やはり当劇場音楽監督の指揮者である大野和士によるものでしょう、すごい演奏でした。今の都響はN響よりも上かも?です。
野蛮国を印象するロシアのオペラですが、チャイコフスキーを始め小説家など優れた芸術を生む不思議な国情のロシアです。
本作品の初演は、1874年2月 マリンスキー劇場 全編ロシア音楽の伝統に則り、民族的要素や宗教的要素を織り込んだ作品と言われ、初演と同時に人気の作品になったと言われています。
そのストーリーは、仕えていた先代の皇帝から絶大な信頼を受けて皇帝を引き受けたが、自分の息子は障害があり寝たきりで、息子への限りない愛情を持つ皇帝ボリス・ゴドゥノフ、この皇帝を陥れようと企む周辺との物語で、楽しいと言うよりもグロテスクに近い筋書、何かロシアの悪いイメージを連想してしまう。しかし、音楽は隙の無い素晴らしいもので、芸術のロシアをイメージするのですが、そのグロテスクもオペラ/リゴレットの様な同情を誘うものとは違う、何とも複雑な心境に至るオペラ鑑賞でした。
11/19土曜 横浜みなとみらいホールに神奈川フィル定期演奏会に行って来ました。演奏曲目が、オネゲル/交響曲第3番「典礼風」 ベートーベン/交響曲第3番「英雄」でした。
当日の指揮が特別客演指揮者の小泉和裕、この人は山田一雄に師事し、カラヤン国際指揮者コンクールに第1位入賞し、世界で活躍している指揮者です。
オネゲル/交響曲3番を聴くのは初めてです。第2次世界大戦中に作曲されたもので大戦直後のインタビューで「音楽は衰退する、増えすぎて滅びる」と言ったとのこと、確かにこの曲は反復が多すぎて近代機械文明をイメージしたものと思うし、聞いて楽しい思いは全くない、味気ない思いを表現したのだから当然、と思ってしまうと音楽は「何」なんだろうと疑問が涌く、その様を表現するのも芸術なのかも知れません。
後ステージが、ベートーベン交響曲3番「英雄」でした。この曲は、音楽鑑賞の初期に良く聞いた曲であり、ここで改めて生演奏となると真剣身となる。久しぶりの大満足感は、流石、小泉和裕、改めてベートーベンの素晴らしさ、生きる価値や将来への希望を表現するもので、決して「Bonaparte」賛美の曲では有りません事、明快に理解した素晴らしい演奏でした。
神奈川フィルの演奏も新しい「みなとみらいホール」での初演奏は、希望に満ちる素晴らしい演奏でした。