会長のコラム 163
花見シーズンは、如何お過ごしでしたか。東京港区の赤羽橋に、桜開花時期に合わせて馴染み客が押し寄せるレストランがあります。私は、見ごろ時期を4月5日と張って早々と予約を入れました。事前の下馬評は、3月下旬の見ごろ時でしたが、天候不順のおかげでハラハラしつつも、私の思惑通り東京タワー周辺は4月5日が最高の頃合いで、予測的中でした。今年は付いているぞ!
桜と言えば、桜前線を追って旅するツアーと言うのが有り、北海道新幹線の開通祝いを兼ねて行われたツアーに旅立ちました。4/24東京から一気に新函館まで、と言っても約4.5時間ですから旅のスケジュールに占める時間は決して少なくありません、飛行機の方が効率的です。目的の五稜郭の桜開花は、4日程早過ぎで、色着いた蕾見物で終わりました。翌日は、函館元町を散策して新函館駅から新青森に向けて発ち、新青森にて昼食を済ませ、弘前城の桜祭りにバスで向かいました。
新幹線函館は、新函館北斗駅と言って、函館市内まで結構な距離がある新開地。ビジネスで函館市内に仕事となれば、これは考えものでしょう。意外なロケーションに驚きを感じました。新函館駅から新青森駅までは、新幹線でちょうど1時間程、昔の船旅を考えると格段の差なのでしょうが、その船旅なるものを私でさえ未経験なのですから、時間の掛り具合には「え?」と思う違和感を覚えます。
昼食のホテル青森は、手作りの山菜料理で素朴そのもの、子供時代に育った秋田を思い出しました。前日の函館湯の川温泉「ノグチ函館」とは大違い、星野リゾートと同じような経営形態で、料理は形ばかりで実が無い、従業員はマニュアル人種の集団、部屋は立派だが寒くて居心地悪い、部屋ごとに温泉風呂があるタイプだが、利用客の風呂マナーは如何なものか、最近のスーパー銭湯並みだとすれば不安を感じるのであります。一寸脇に逸れました、昼食後は弘前城に向かいます。
話には聞いていましたが、ここの桜は半端ではありませんでした。しかし、月曜であるにも関わらず観光客の多いこと、日本中の人が集まり、加えて中国や東南アジア各国からの観光客に驚きで、これが土日祝祭日ならどうなるのか恐ろしいかぎりです。今年の桜は、枝の先端までぎっしりと咲いた密度の高い見事なもので、ガイドさんの言うには昨年の2倍の花付と言ってました。そして、このタイミング、これ以上無い程の絶好タイミングでした。この日は、奥入瀬のホテル「森のホテル」への宿泊予定で、奥入瀬までは途中登り道路で、両端に雪壁が残り冬季の厳しさを感じさせるものでした。
奥入瀬の「森のホテル」は、前日の「ノグチ函館」よりも質素であり部屋に湯船は有りませんでしたが、居心地の良いホテルで安らぎを感じ、ホテルとはこう言うものと思います、経験の浅い若者達もやがて本物を知る事になるでしょうが、せめて、それまで「カネ」を使って景気回復に貢献するのも世のためでしょう。翌日は奥入瀬を上り十和田湖をめざします。途中バスを降りて渓谷を散策しつつ写真撮影に励みました。十和田湖畔にて昼食を採り、五所川原、芦野公園を目指します。
さて芦野公園です、駅舎が桜満開の公園の中と言うロケーションに在ります、ここを駆け抜ける津軽鉄道の姿はマニア必見、三脚を構えたマニアの場所取り相変わらずの慣行。ここの桜の開花状態は、弘前城に劣らず枝の先まで花びらが団子状態でした。ここ五所川原は、太宰治の生誕地として、吉幾三の生誕地としても有名であります。
と言うことで、「桜」三昧の4月でした。写真は整理して後日アップする事にします。
次に恒例の音楽ライフです。
4月3日 日曜 午後2時開演で、新国立劇場にてジュール・マスネ/オペラ「ウェルテル」を観劇してきました。指揮がエマニュエル・プラッソン、この人はロンドンの指揮者コンクールで優勝し英国を主に活動していましたが、最近ではヨーロッパ各地で広く活躍している指揮者です。オーケストラが東京フィルで友人の黒木岩寿さんがピットインしていました。
例によって歌手の主役陣3人は外国人、何れもヨーロッパを中心に活躍する中堅ですが、中でもエレーナ・マクシモアが素晴らしかったです。往年の名歌手コッソットを思わせる湿り気のある声と声量は、何かのチャンスに大化けする可能性があると思うのです、今後を注目するつもりです。他の歌手もバランスのとれた名歌手揃いで、素晴らしい舞台を演じていました。準主役の砂川涼子も良い出来ではありましたが、日本人特有の声の細さが気になり、如何ともなし難い宿命を感じてしまいます。
オペラ/ウェルテルは、フランスの作曲家マスネによるものです。フランスオペラを代表する甘美なメロディーを創る作曲家であります。題材が、ご存じ、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」と言うのが、取り合わせ上面白いと思うし、マスネが駆け出しの若い時期に、偶然にもワーグナーと同じ屋根の下で過ごした事も有ったと言うことですから、フランス対ドイツの関係も我々には興味津々であります。このオペラは、仔細はともあれ良いとこ取りの優れもので、心地良い印象で終わってしまうのですが、私としては、もっと探究してみたくなる作品です。
4月14日 木曜 午後7時開演で新国立劇場にて、ウンベルト・ジョルダーノ/オペラ「アンドレア・シェニエ」を観劇してきました。指揮が、ヤデル・ビニャミーニ、この人はイタリアうまれで、もとはクラリネット奏者から指揮に転出した人で、イタリアを中心に活動していましたが、最近ではソプラノ歌手のアンナ・ネトレプコのツアー指揮なども手掛けており、新国立劇場初登場です。オーケストラが東京フィルで、コントラバスの首席の黒木岩寿さんがピットインしていました。歌手陣ですが、アンドレア・シェニエを演じるテノールのカルロ・ヴェントレ、マッダレーナを演じるソプラノのマリア・ホセ・シーリ共にミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇などヨーロッパの中的劇場で活躍する実力派歌手達であります。そして、このオペラは、フランス革命を題材としたイタリア人のジョルダーノの作曲です。ジョルダーノは、マスカーニやレオンカバレロなどと並ぶヴェリズモ・オペラに属する作曲家で、ザ・イタリアオペラの典型の性格を持ったフランスの物語が題材です。
4月9日土曜 午後2時開演で横浜みなとみらいホールにて、神奈川フィル定期演奏会に行って来ました。指揮が川瀬健太郎、演奏曲目がコダーイ/カランタ舞曲、プーランク/2台のピアノのための協奏曲、そして後半舞台がベルリオーズ/幻想交響曲でした。
指揮者の川瀬賢太郎、この人は、1984年生まれの若干30数歳の若さですが、東京芸大卒業後もコンクールなどにて好成績を収めており、名古屋フィルハーモニー交響楽団の指揮者でもあり、その他の楽団の音楽監督なども兼ねる実力で将来を嘱望されている人です。神奈川フィルの定期演奏会には、常任指揮者としての時間の掛けようは、ことの他多い様で、この日の演奏、特にベルリオーズには特別な思いが有ったようで、凄い演奏でした。以前ズビン・メータ指揮によるイスラエルフィルの演奏を聴いた時に鳥肌が立った事を経験しましたが、今回も同様のスリリングな演奏を聴くに及んで、同様な体験を味わいました。クラシックの「生」演奏とはスリリングなものですが、鳥肌と言うのは、そうそう有るものでは有りません。神奈川フィルの定期演奏会でのこの人とのコンビがますます楽しみとなります。
4月23日 土曜 午後3時開演で神奈川フィル定期演奏会 音楽堂シリーズに行ってきました。指揮が鈴木秀美、コンサートマスターが﨑谷直人で、曲目がC.P.E.バッハ、ハイドン、ベートーベン、と続く音楽史をたどる意図のもとで選曲されたコンサートでした。この人はチェロ奏者で、18世紀オーケストラ、バッハ・コレギウム・ジャパンなどの奏者も務める傍ら、ブリュッセル王立音楽院教授、東京芸大の古楽器科の教授なども務め、指揮者としても活動し実績を積んでいる人です。そして、県立音楽堂でのコンサートは古楽演奏に最適なホールで、多少手垢が付いたベートーベン交響曲6番「田園」では、私としたことが、新たなる感激を覚える体験をしてしまいました。
神奈川フィルには、サポーターズ制度と言うのが有って、寄付金を提供した人を対象にパーティーを催しています。4月17日 日曜に横浜ローズホテルにて行われ行ってきました。パーティーと言っても有料で、お茶とケーキによるものでアルコールは出ません。しかし、管弦楽団の経営幹部や常任指揮者の川瀬、首席奏者なども出席し同じテーブルの近距離で話が出来ると言う有難い環境を提供してくれるパーティーであり、私のマエストロに対する小澤、デュダメル、メータなどの有名指揮者の話や質問にも嫌な顔をする事も無く機嫌良く話してくれる姿に感心しつつ、楽しく過ごさせてもらいました。
忙しい4月でしたが、5月はウイーン・フォルクス・オパーの来日公演が有り、より忙しい月になりそうです。それでは、またをお楽しみにお元気でお過ごし下さい。