会長のコラム 185
雑誌「ステレオサウンド」誌が行う、恒例の前年に発売された商品の中から優れたものをグランプリとして表彰する催しが、1月25日に代官山レストランASOにて行われました。
オーディオ業界は、相変わらず不振でありますが、オーディオ・メーカーとしてこの催しはとても大切な行事と位置付け、感謝の至りと言うものであります。オーディオ機器・メーカーは、音楽演奏で言う楽器製造者であり、買って頂くお客様が奏者である様な関係と思うのです。嘗て、評論家の菅野沖彦先生が上梓された書籍にもその様な内容の書がありました。最近のアナログ・ブームで、つくづくその事を思い起こします。
オーディオ機器が音楽を奏でる(再生する)ことは、コンサートそのもののクオリティーを再生する事は出来ませんが、「如何にそれらしく奏でるか(再生するか)」であり、それらしくと言うのは聴く人によって変わると言うことで、絶対的な値では無いと言うところに、評論家先生の存在と雑誌の存在意義があると思うのです。
話は変わります、CDフォーマットは、16Bit/44.1kHzの規格で作られており、その特性値は音が良いと言われるLPよりも遥かに優れた物理特性値であります。しかし、何故かLPの音がCDより良いと言われる、その理屈付けが色々言われます。例えば、音楽信号が連続していないからと言う理屈が独り歩きしていること、などもその代表例であり、その事からハイリゾが良いと言われる事に繋がる、しかし実体験として「何かおかしいぞ」と誰しも思う現象を経験しています。
私がオーディオの事業を始める当初は、その誤謬らしきものに気付いておらず、次々に新しいDACがIC化されて出てくる、まるで生鮮食料品のビジネスモデルの様な違和感を覚え、早々にデジタル機器のビジネスをやめた経緯があります。ところが、最近このDAC をICメーカー品に頼らず、ディスクリートで組み上げるメーカーが出て来ています。
業務用の機器では、ディスクリートDACは、我々もB to B 事業で経験しています。なんと、コンシューマ用として、海外メーカーの数社からディスクリートDAC搭載の機器が発売されるようになり、その性能たるやまさしく「ブレーク・スルー」と言うものであり、この手のDAC を搭載した機種は、現時点で私の知る限りでは、業務用を含めて数社であります。
このDAC搭載機による再生音は、アナログメディア再生に勝るのか、私もまだまだ勉強中で確信を持っているわけではありません。しかし、デジタルの革命を予感するものであり、それによって良い音の定量化も可能になるのかも知れません。
広尾の「レストランひらまつ」が、ホテル事業に乗り出しました。株主の私としては、1度行ってみたいと思っていたところ、1月16日に株主フェアーと称し株主優待を受ける機会を得たので行ってきました。ひらまつのホテルは、熱海、箱根仙石原、賢島、沖縄と順にオープンしていまして、今回は最初にオープンした熱海に行ってきました。
熱海と言えば、昔は大きなホテルで忘年会などをやるところでしたが、今はすっかり変わって、昔のイメージは皆無であります。
「ひらまつホテル」は、海岸に突き出した「あかお」ホテルの正面の絶壁の上で、何度も迷いつつ到着してみると、こんなところに、ホテルが有ったかと思うような坂と曲がり角を上った高台で、その見晴らしたるや絶景と言うものでした。ダイニングの正面から夕陽を受けた初島が時間とともに、刻々と変る姿にみとれつつ時間が過ぎました。
部屋数が13室とのことですが、その割に建物も大きくスタッフの人数も多く、おもてなしの極致であり、私の様な庶民にとって、少しやり過ぎではないかと思うものでした。
夕食と朝食付きで一人当たりの宿泊費が5万円ですから決して安くありません。最も夕食はひらまつ流のフランス料理フルコースです、それに料理に合わせたワインが付きます(これデギュスタシオンコースと言います)。料理が変わる度に合わせてワインも変わりますから、宿泊付きフランスレストランと言うところでしょうか。朝食もアメリカンとか大陸式とかと言うケチなものではありません。各部屋に温泉が付いて豪華でありますから5万円は安いかも知れません。何かの記念日などに一度行って観るのも良いと思いますが、私の様な年寄りには勿体ないし、飲み疲れと食べ疲れで、帰宅してホッとした有様、これって、やはり貧乏症と言うものでしょう。
1月の音楽ライフです
1月11日 東京オペラシティーコンサートホールにて、ウィーン・シェーンブルン宮殿オーケストラのコンサートに19:00開演で行ってきました。この宮殿オーケストラと言うのも何か「ピン」と来ないのです。シェーンブルン宮殿は皇帝の別荘であったことから、音楽への関わりは有ったのでしょう、モーツアルトが6才の時に招待されて転んだ折に、居合わせたマリー・アントワネットに助け起こされ「僕と結婚しよう」と言ったと言う有名な逸話があるし、レコードのシリーズとして宮殿仮想音楽会を名乗ったものが発売されたことなどの事から、音楽との縁は深かったと思います。
「ピンと来ない」感じと言うのは、この宮殿は、オーストリア文化財管理公社が管理していて、公開されている施設以外は、住宅として2LDK 120㎡ 4万円で貸しているそうですし、またその一部はホテルになっている部分もあると言うから、何やら色気の無いことを感じてしまい、「ピン」と来ないことに繋がります。しかも、このオーケストラの設立年が1997 年というから、今流の名前貸しビジネスの一環かも知れない、調べたわけではなく私流の感じでありますから御免なさい。
当日のコンサートパンフの写真は、楽団員が大勢居て立派にみえます。しかし実際のオケメンバーは、第一バイオリン、第二バイオリン、ビオラを合わせて8人、8人と言うのは第一バイオリンのフルメンバーでも足りない人数です。管楽器が各1器、そしてティンパニとスネアの掛け持ちで一人、演奏曲目がシュトラウスを主にしたウィーン・フィルのニューイヤーのバージョンですから、このオケ編成では寂しいものでした。特に大太鼓が無いのはスパイスの無いステーキのようなもので、プレイヤーの腕はウィーン風でありましたが、コンサートとしては今一と言うところでした。
しかし、どうでしょうか、ウィーンを語るフルオーケストラのコンサートが、S席で8,000円ですから、まあ! それ相当と言うものでしょう。
1月18日 新国立劇場にて、ヨハン・シュトラウスⅡ世オペラ/こうもり に19:00開演で行ってきました。オペラ「こうもり」は新年の定番としてウィーン国立劇場でも行われる演目であり、何度見ても飽きる事の無い名作であり、観るたびに新しい面白さを体験できるオペラであります。
演奏が東京交響楽団、指揮がアルフレート・エシュヴェ、この人は09年にもここ新国立劇場にて「こうもり」を振っています。バリトンのアイゼンシュタイン役がアドリアン・エレート、このひとは新国立劇場の常連出演者、ソプラノのロザリンデ役がエリーザベト・フレヒル この人は新国立劇場に初出場ですが、ウィーン・フォルクスオーパーの専属歌手で、来日公演でお馴染みであります。その他、バリトンのフランク役、メゾソプラノのオルロフスキーの役、バリトンのファルケ役、この人も過去新国立劇場での「こうもり」に出演しております、ソプラノのアデーレ役がジェニファー・オローリンの計6人の豪華なヨーロッパ活躍中のキャストをそろえての公演でありました。
クラシック音楽ファンの正月は、ウィーン色に染まるのですが、これはヨーロッパも同じことのようで、遠く離れた日本で、これだけ豪華な音楽環境を体験できるのは、日本の豊かさの現れであり、私ごとながら、残り少ない人生を楽しむ環境として最高の幸せと思うのであります。
1月27日土曜 横浜みなとみらいホールにて、神奈川フィル定期演奏会に14:00開演で行ってきました。新年、年初めの定期演奏会でした。
指揮が園田隆一郎、コンサートマスターが石田康尚、ピアノが福間洸太朗。演奏曲目は、前ステージが、ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」、リスト/ピアノ協奏局第2番。後ステージが、イタリアオペラのロッシーニとヴェルディの序曲集でした。この序曲集は、ロッシーニ/「どろぼうかささぎ」、「アルミーダ」、「ウィリアム・テル」、「セミラーミデ」、ヴェルディ/「アッティラ」、「マクベス」などのオペラマニア向きのものの序曲集で、オペラに興味の薄い人にも楽しめる選曲でありました。
それにしても、福間洸太朗は評判通りの素晴らしいテクニシャンであり、海外で活躍中でありますが、NHK-FM、民放の徹子の部屋などに出演しているものの、もっと日本のメジャーな舞台での活躍を期待したいものです。
神奈川フィルの定期演奏会の席は、元々会社の席が2席、私個人の席が2席、これが定席ですが、当日は広告掲載や寄付の御礼とかの理由で2席余分となり、会社の幹部が計6名参加しておりました。楽しみを分け合いつつ、本来ですと終演後に即飲み会にと言うところでしたが、家内同伴であり、昨年暮れに日取りを勘違いしてお馴染みの寿司屋に行けず仕舞い、家内に借りのある雰囲気だったもので、そちら優先となりました。世の中は、魚資源の逼迫の最中なるものの、ここには何故か豊富に有って、ハッピーなひと時でありました。