会長のコラム 045
6月15日は、待ちに待った新国立劇場の「ばらの騎士」を観劇しました。この公演は、私にとって今シーズン最後の観劇となり、次は来シーズンの10月公演のタンホイザーからになります。この頃には、イタリア詣でからも帰国し、気分良く新しいシーズンの始まりが期待出来ます。6月15日当日は、いつものど真ん中の最上の席での鑑賞でしたが、この席唯一つの欠点は、字幕の位置が高すぎて首が辛いことです。来シーズンも多分この近辺の席が配布されるものと期待しています。
このリヒァルトシュトラウス作曲のオペラ「ばらの騎士」には、アリアらしきものは無いのですが、大変素晴らしいオペラで私にとってはオペラ「ノルマ」と双璧をなすものです。時代背景が第一次世界大戦勃発の少し前のウィーンで、爛熟した貴族社会を題材とし耽美な底知れぬ美しさと豪華を誇ったオペラです。耽美と言うと聞こえは良いのですか、性的モラルが乱れていた時代背景とも言えます。それを格調高い芸術に仕上げた見事な作品ですが、「R.シュトラウスは苦手」と言う人は、このオペラの終幕近くの オクタビア元帥夫ゾフィーによる三重唱からオクタビアとゾアィーの二重唱に至る辺りを聞いてみて下さい。ここだけではストーリーは解りませんが、その流れるようなメロディーは、正に麻薬的で、聴く人を酔わせ、R.シュトラウス節に参ってしまう筈です。
当日の演奏ですが、私の場合DVDの見過ぎかも知れませんが、東フィルの演奏には不満です。しかし、この難しいオペラを日本のオーケストラが演奏していると思うと、何とも頼もしく思うから不思議です。ヨーロッパのオーケストラでも酷い演奏を聴いたことがありますし、音楽界でもこれを演奏出来ないオーケストラも間々有ると聞いています。当日の指揮は、バイロイト音楽祭の常連でもあり、メトロポリタンにも出ているペーター・シュナイダーで、大物指揮者をいただいた為か東フィルは良く頑張り、充分に楽しませて貰いました。
終演が10時15分であった事は、日本の社会習慣では可也厳しいものでした。終演後に劇場内のレストランで食事を済ませると12時近くになっており、劇場の出入り口は既に締まっているし、駐車場へのエレベーターは止まっていました。劇場直属のレストランと思って安心して過ごしていた事もあり、私とした事が、けっこう焦ってしまいました。金曜のこの時間、ヨーロッパでは最も賑やかな時間帯です。