会長のコラム 268
2025年1月のコラムです。
昨年度新商品のオーディオ誌にエントリーされた各社の商品も出そろい、その記事で各誌は満載されています。当社も各誌に2機種エントリーし、共に優秀賞を獲得しました。
年が明けて、商品の評価に携わった評論家の先生方も気楽にオフレコと言いつつも、いろいろ本音を話していただくのですが、その中で当社のパッシブ・プリアンプは、過去に無いカテゴリーに属し、その性能がとびぬけて素晴らしく、正直に言うと常識を逸脱している性能で、如何表現しようか困ったと言う裏話が入ってくる始末。我々も嬉しさに変わりは無いのですが、この商品如何に世に出して行くか迷ってしまう。業界の常識荒らし的発言も有って参っています。
この「パッシブ・プリアンプ」なるもの、物理学上は当然の事であり、誰でも知る単純で当たり前の事象を具現しただけなのです。前にも述べましたが、トランスの機能をそのまま応用しただけで、トランスには磁気変換と言う行程を経由するので、その性癖をクリヤーする未踏の苦労が有ります。
ムービング・コイル型のピックアップカートリッジのステップ・アップトランスは、理屈は素晴らしいが、と言われつつ、実用化は遅れていました。かなり昔の事ですが、武蔵野音響の菅野さんから、何とかならんか、との要望で商品化し、OEMとして納品に漕ぎつけたのが、トランスを極めるトリガーでした。
微小信号を扱うトランスですから、外来ノイズを受け入れ安い訳で、当時の専業メーカーは完全なるシールドに知恵が回り、通過信号を守る事に専念した作りになっていました。
だからトランス内の漏洩磁束は、行きどころが無くケース内を存分に走り回る訳ですから堪らない、2次巻き線に出て来る混成信号に影響しない訳がない、と言うのが信号トランスの初期事象でした。我々の考えは、漏洩した磁束は元に戻さず、ジュール熱として消費させる事を第一に考えたことです。ここには、特許案件もありますが、極めて自然現象にそった対策を講じたに過ぎないのです。
そして信号の通過系素材をトコトン検討し尽くし、トランスの物理特性を存分に利用した事が成果なのです。音楽を理解するファンの方々には是非とも、ご試聴をお試し頂き、既成のプリアンプとの違いをご体験される事を節にお勧めする次第です。
今月の音楽ライフ
今月の神奈川フィル定期演奏会は、音楽堂シリーズが1/11(土)、みなとみらいシリーズが1/18(土)の2回、2週連続の土曜に開催されました。
1/11(土)が、ベートーベン/P協2番とショパン/P協2番、2番同志の競演です。前ステージが神奈川フィルの委嘱作品で阪田の作曲とベートーベンP協2番、そして後ステージがピアノの阪田知樹の指揮と神奈川フィルの演奏に依るショパンP協2番でした。
指揮・ピアノ の阪田知樹は、2016年リスト・ピアノコンクール1位。2021年にはエリザベート王妃国際音楽コンクール4位入賞の実績が有ります。国際的に活躍している人で、私、この人の生演奏は初めてでした。指揮振り演奏ですから大変な才能なのでしょう。ピアノから離れて指揮、アッと言う間に、即鍵盤に戻る、とても尋常な行動とは思えない行動、しかも良く知られた曲ですから、ハラハラする場面もあり、緊張し通しの鑑賞に些か疲れを感じてしまいました。音楽は、如何かといわれるなら、現代的と言うのか、ブラインドで聞くと如何か、私にはショウ的要素を感じてしまい、音楽を吟味しつつ聴く事に些か欠けていたようです。
みなとみらいシリーズ定期演奏会に1/18みなとみらいホールに行ってきました。演奏曲目の2曲が、ベートーベン/V協とチャイコフスキー/交響曲第5番で、これまた極め尽きのポピュラー曲、そしてベートーベンV協は、指揮振りバイオリンです。この人は、指揮者としてはヨーロッパの著名オーケストラとの共演が多く、指揮振りの実績も多い人の様です。
チャイコフスキーの交響曲5番は、4番の完成後10年後の作品ですが、思想的には4番と同じ「運命の動機」をテーマに使っており、統一感をもたしていると言われています。指揮者のコリヤ・ブラッハーは、歯切れの良い演奏でこの曲のテーマを表現して居り、好感の持てる現代的な演奏は、聞きなれた曲にも関わらず、緊張してしまいました。
今月の新国立劇場のオペラ公演が1/29のオペラ「ワグナー/さまよえるオランダ人」はとても月内のコラムには間に合わないので、来月のコラムに回す事にします。ご理解のこと宜しくであります。