Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 238

7月のコラムです。
オーディオ機器の中で、一番厄介で一番音に支配力のあるスピーカー、そのスピーカーにいよいよと言うか、やっぱりと言うか、1億円と言う超高額商品が現れました。私、未だ聞いておりませんが、スピーカーへの思いが募るのはマニアの常、市場が求める結果と言えましょう。
本件に付いて一言、スピーカーに求めるマニアの心理は理解出来るものの、音響工学をカジッタ者として、その矛盾をカネで解決したこと信じ難く、一体何を如何して1億のカネを使って音響工学上の矛盾を解決したのか知りたい思いに至ります。
チャンネル・アンプ方式に可能性を求め追求してきた者として、他に解決策が有ったなどとは思いたくない。今、市場で求められる高額ユニットを集めても1億円には遥かに及ばないことからも、対向すべくファイトが涌いて来るのです。チャンネル・アンプ方式では、複数台のメインアンプとスピーカー・ユニットで構成され、それぞれの位相を正確に合わせることで、1本の同軸ユニットの如き聴感覚が得られると考え、ここに向けての完成度を極めて来ました。今年こそは市場にデビューすべく段取りをとっています。1億円のスピーカーを未だ聞いては居りませんが、絶対に負けない音楽再生が出来ると確信しています。
当社の訴求する方式は、6dB/octのチャンネル・デバイダー、そしてSPユニットの設置に位相合わせの技術を注力、当社の提案する方式に1億円は掛けようが有りませんから、対向意識は最高潮、発売に向けての準備に集中し、いよいよ出番が回ってきたとの思いが走ります。

今月の音楽ライフです。
7月13日水曜、新国立劇場に14:00開演で、クロード・アシル・ドビュッシー/オペラ「ペレアスとメリザンド」に行ってきました。このオペラの日本での公演は、30年程前に一度コンサート形式での公演が有ったようですが、本格的公演は今般のものが初めてと言われています。現地のフランスでは評価も高く人気の公演と言われています。
作曲家ドビュッシーの音楽に求める主義主張は激しいものがあり、その激しさから氏の生活歴でも恋愛と離婚が繰り返され、音楽に求める思いと同じように、自己満足を追い求める性格は異常で有ったように思います。ドビュッシーの曲でポピュラーなものと言えば3曲の夜想曲でしょうか、川の流れがとめどなく流れるように淀みが無い。このオペラも正しくその様相であり、ここには、伝統的オペラ手法のレチタティーボが無い、アリアらしきものが無い、しかし美しい曲が淀み無く続くのです。
そしてストーリーは、兄の恋女房に弟が横恋慕すると言う、些かグロテスク気味なものでありながら、音楽の淀み無い流れが続くのです。ドビュッシーの独特な音作りの曲に魅せられるのですが、この公演の演出には馴染めないものが有ります。その凝った演出の例として、深い森の中にベッドが置かれるような演出は頂けませんでした。日本では全く知られていない、初見の観客が多いのですから、奇をてらう必要は毛頭必要ない筈で、もっと自然に演出してくれると、良かったのではないかと素人感覚が走りました。
主役の3人は、現代音楽を得意とするテノール、ソプラノ、バリトン、の3人の外国人歌手、そしてバスの妻屋を始め日本のベテラン歌手の出演でした。新国立劇場もコロナを気にしない公演になって来た様で、この傾向が長続きすると良いのですが。その日から何日も経たない今日この頃、猛烈にコロナ禍の復活です。勘弁願いたいものです。

7月16日土曜、神奈川県民ホールに神奈川フィル定期演奏会379回に14:00開演で行ってきました。当日の演奏は、沼尻竜典指揮によるショスタコーヴィチ/交響曲8番ハ短調でした。
この曲は、演奏時間に1時間たっぷり掛かる大曲であり、当日は休憩無しで、この曲1曲のみの演奏会でした。ウクライナとロシアの今、この曲が演奏される意義の様なものが曲目解説に述べられていました。この音響効果の悪いホールでもこの曲の演奏では、その激しさから来るオーケストラの熱演で、何時も感じる音の悪さの不満を感じる余裕は有りませんでした。
この曲は、ソビエトのお偉方の望む様な「ソビエトの勝利」など描いていないと言われ、生命が脅かされ、恐怖に眠れないスターリングラード市民の夜想曲であると曲解説にありますが、正しく言われる通りで、戦勝祝いの匂は感じません。「素晴らしい」の一言、指揮者の沼尻竜典と神奈川フィルのメンバーの皆さんご苦労様でした。カーテン・コールが永かったこと、リクエストを期待する雰囲気が漂ったことからも理解出来ます。この永い曲は、定期演奏会でなければ聞く機会は無い様に思う、「定期演奏会有難う」の心境でした。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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