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colums会長のコラム

会長のコラム 137

3月は季節の変わり目、コラムを書いていている今の時期3月の末ですが、初旬とでは季節の差が大きく、私の行動も気温に合わせたように多事に亘り、3月を振り返ってみると振れ幅の大きい行動内容に忙しいかった事を思いうかべます。
拙宅のチャンネル・アンプシステムは、既に完成したなどと宣言したものですから、聞かせろとの要請が多かったのですが、他人に聞かせる間もなく、ゴトーのツイターにビリ付現象が出て修理に出していました。それがやっと完成したので、早速DEQXの栗原さんに再度お越し頂き、再調整におよんだわけです。
しかし、何が原因か分らないのですが、300dB/octに設定した音が何か変だと言う事で原因不明、栗原さんも頭を抱え、仕方なく取りあえず6dB/octに設定して後日対策を考え再調整と言う事で、この日はお帰りなりました。
それから、私一人でこの6dB/octに設定した音を聞き込みましたが、これが実に素晴らしい音なのです。ミッドの1.7mの時間遅れは当然修正されていますから、私の製作したハイブリッドATTを用いたパッシブ式チャンネル・デバイダーと比べても音の鮮度に遜色無いし、加えて時間軸調整のされた音ですから当然と言うものでしょう。
と言うことは、DEQXに使用されているA/D、D/Aのクオリティーが半端なものではないと言う事だと思います。もちろん、デジタル・プロセッサーの前後に入るアナログ回路も同様と言うことでありましょう。これに気を良くして音楽愛好仲間をよんで試聴会におよんだわけです。
300dB/octが完成されていないと言う事で、来宅された方々はもっと良い音が出るであろうと期待するものですから、私がこちらの方が良いといくら言っても信用しません。オーディオ機器は所詮生音楽の再生は出来ないわけですから、それを求めるマニアの心理と言うもので、良かれと思う手法を極めないと納得しない。
だから、オーディオの趣味は麻薬と言われるのです。今回の場合は、未だやるべき事があるからそれに期待しての事で、より良い音を求めるのは自然の理であります。
オーディオ・マニアの中には、「自分なりに大財叩いた」とか「労力を費やした」となると、本人はこれだけやったのだから、悪い訳はないと信じ込み他人の言う事に耳を貸さなくなります。それだけなら、本人が損をするだけで、罪は無いのですが、他人にそれを強要するとなると始末が悪いです。これって、マニアに良くある事例で、お互いに気を付けたいものです。
今月の音楽ライフは、恒例の3月15日に行われた高輪オペラの会、12日に新国立劇場のオペラ「死の都」、20日に行われた神奈川フィル定期演奏会でした。
その他、私の脊柱管狭窄症に付いて、国内有数の名医に診断して頂いたこと、パナソニックのトップの方々が会社にお越になられた事、など等、私事としてオオゴトでしたが、差障りがありますので、割愛させて頂きます。

3月12日19:00時開演で、新国立劇場オペラ公演「エーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルド/死の都」に行ってきました。
このオペラは、NHK-FM放送のオペラの時間に放送されて知ったのですが、それ以外でこのオペラを知る機会はありませんでした。
今回新国立劇場での公演で関係資料に目を通してみると、このオペラは海外ヨーロッパ、アメリカでは公演機会の多い演目で、ポピュラーな部類のオペラである事を知り、公演を楽しみに待つようになりました。
恥ずかしながら、私はR・シュトラウス以後に楽しめるオペラは存在しないと信じこんでいましたが、このオペラはR・シュトラウス以上にローマン派的で実に馴染みやすく、美しいメロディーの連続する作品であります。
コルンゴルドの若い時期は、モーツアルトに勝る天才と評され、R・シュトラウスは彼の才能を高く評価し、この「死の都」は初演時には興奮して幕間ごとに、賛辞を贈りに楽屋に行ったと言われます。
初演が1920年12月ハンブルグで、ワザワザ、ウイーンを避けたと言います。それは、ウイーンには意地悪な評論家が居たと言うことですが、芸術評論は今も昔も同じようなものだったのでしょう。初演以来このオペラは大成功といわれています。知らぬは、私だけのようでした。
コルンゴルドはドイツ生まれのドイツ人と言う事で第一次世界大戦のときアメリカに亡命し、映画音楽で大成しオペラ作曲家の才能を逸してしまったと言われています。
当日の演奏は、東京交響楽団、指揮がヤロスラテ・キズリンク。この人は、チェコの生まれで東欧を中心に活躍していますがウイーン国立劇場を始め世界のトップ劇場へ客演しており、新国立劇場へは2度目の出演です。
このところ、新国立劇場のオーケストラはこの東京交響楽団が多いのですが、当日の演奏は規模も大きく素晴らしい音を出していました。キャストは例によってトップ3人が外人で、中でもトルステン・ケールはウイーン国立劇場、バイエルン州立劇場、バイロイト音楽祭などで、タイトロールを務める人で、新国立劇場の「カルメン」ではドンホセを演じていました。
しかし、当日の出来は最高と言える出来ではなかった様に思います。そして、日本人歌手達の活躍に際立つものを感じました。役どころを選んで今後も極力日本人歌手の出演場を増やし、実力を付けてもらったら良いのではないでしょうか。

3月15日高輪オペラの会「ドニゼッティ―/愛の妙薬」
今年2度目の本会が、3月15日に品川のグランドプリンスホテル新高輪内のレストラン「イル・レオーネ」にて12:00開演で行ってきました。
本会では、毎回イタリア料理の昼食を頂いてから公演が始まります。昼食は、フルコースではありませんが、ワイン、前菜、スープ、メイン、デザートと言う構成で、私の場合何時もの昼食は、蕎麦かうどんで済ませているので、これは大変重い昼食です。
今回のポピュラーな 聞き慣れたオペラでは、ストーリを良くしっているので、ナレーションは、私にとって不要でした。ナレーションの間は、照明が暗くなり語りべの詩朗読調の語りは、オペラの場を知っている者には、重い昼食事の後ですから、語りべの宇垣さんには申し訳ないのですが、眠くなって仕方がない、ピアノが鳴り出し歌手が歌いだすと目が覚める、と言う繰り返しになってしまいました。
当日の出演者は、ピアノ伴奏が藤原歌劇団の藤原藍子さん、この方は藤原義江のお孫さんで、毎回、この会のオーケストラ役をピアノ伴奏で奏でてくれる、オペラ進行には実にツボを心得た方です。そのピアノタッチは流石と言うものであります。しかも、私好みで大変好感の持てる演奏は、何時も楽しみにしています。
当日のキャストは、ネモリーノが、テノールの藤田卓也、アディーナが宮本采音、ドゥルカマーラが三浦克次、ベルコーレがベテランの当会常連、星野淳と言う顔ぶれで星野淳以外は皆さん若く、今後が嘱望される実力者達でした。その中で星野淳さんが絞め役となりまとまった良い公演に仕上がっていました。
この「愛の妙薬」オペラ作曲家のドニゼッティ―の傑作のひとつで、大変公演機会の多い人気演目です。そのストーリーはコミカルで判りやすく、何時もながらの林さんの台本のお蔭と思いますが、高輪会の形式に良く乗っていて楽しい内容だったと思います。

3月20日「神奈川フィル定期演奏会」19:00開演で行ってきました。
今回は指揮者の金聖響の神奈川フィル常任指揮者として最後の演奏会となります。演目は、マーラー交響曲第6番「悲劇的」でした。マーラーらしさの交響曲として、この6番までが一括りと考えられると思います。
しかし、この6番は演奏時間が長く難しいです。第一楽章は殆ど葬送行進曲でして、同じフレーズの繰り返し、時々マーラーらしいメロディーがほんの僅かづつ、現れては消えると言うもので、マーラーの思いが込められているのでしょうが、この楽曲が一番長く、私には退屈的でありました。
しかし、第二楽章になるとマーラー特有のメロディーが現れ、マーラーを聞いている気になってきます。兎に角この曲は異常に長いです。プログラムには74分と記され、解説書には1時間20分と記され、実際には1時間30分かかっていました。
こうなると、トイレ間隔の短い我々老人には鑑賞どころでは無いと言う状況で、オペラでもこれだけ長い幕は少ないですから、この曲の生演奏を聴くときはそれなりの覚悟が必要です。
ただ、オーケストラの規模は絶大に大きく楽器と名のつく楽器は全て見る(聞く)事が出来るでしょう。オーディオ的には興味深い曲であり、再生装置泣かせでありますから、ファンとして、1度は「生」を聞かない訳には行きません。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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