会長のコラム 034
8月のイタリアオペラ旅行から帰って間もなく、 8/27に恒例のサイトウキネンフェスティバルに行きました。 ここ松本は、私にとって何故か、仕事やそれ以外の友人の多いところで、 勝手にインテリの集まる地域だ、などと自分勝手な事を言ってます。
私は、ここに来ると、温泉につかり大好きな蕎麦を食べて、世界一級の音楽フェスティバルの雰囲気を味わいつつ、至福の時を過ごす毎年の楽しみな行事です。
今年の演目は、オペラ形式によるメンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」の観劇です。フェスティバル関係者の話では、サイトウキネンオーケストラと内田光子の共演プログラムのチケットが最初に売り切れ一番人気だったそうです。メインプログラムよりも人気が上と言うのも珍しい現象との事です。
私にも何となく感じとれるのですが、そろそろこのフェスティバルも金属疲労の現象かと思うようになっています。と言うのも、このメインプログラムに付いて言うと、全ての観客が本当に音楽が好きなのか、東京での公演のように観客の熱気のようなものが今ひとつ伝わってきません。
毎年のことですが、メインプログラムは小沢さんの実験場と言われるように、普段は公演が難しく、小沢さんだから公演できるものが選ばれています。この作品は、ロマン派時代のオラトリオの最高傑作と言われ、フィレンツェ歌劇場との共同制作となっていて、小沢ファンはこのプログラムのチケットを欲しがり、大勢の方が購入できずにおります。にも拘らず、ブランド志向のミーハー的観客が意外と多く目に付くのは、販売方法が開かれたものでは無いのではないかと感じとれてなりません。
ホワイエ(まつもと市民劇場) | 「エリア」の舞台 |
公演の行なわれる「まつもと市民芸術館」は、玄関を入って座席までの間、動く歩道を経由して長いエントランスを歩きます。そして、座席への入り口でチケットを切ります。チケットを切る前のスペースは普通の劇場で言うホワイエトなります。従って、ここには劇場に用の無い人も入ることが出来ます。 毎年、このホワイエで無料のワインが振舞われますが、チケットの無い人でもお洒落をして行けば、このワインを楽しめるしコンサートの雰囲気に浸ることも出来ます。なかなか雰囲気の良い会場で、この雰囲気を写真から感じ取って頂けるでしょうか。
次に新国立劇場でのオペラ「ドン・カルロ」に付いてレポートします。
9/23(水)の6.00開演です。この大作オペラのこの時間の公演ですから終演は10.00頃になります。何時食事をするのか、結局開演前に軽食を取ったのと自宅に帰り着いて残り物を食べて終わるのですが、翌日の仕事もありますから酒を飲んで夜更かしも出来ませんで、何やらオペラの余韻も中途半端で終わってしまい残念です。
この公演では、エリザベッタを演じたソプラノの大村博美の出来がよかった事が印象に残ります。この大村博美は昨年の「マダム・バタフライ」の素晴らしい出来栄えが印象に残りますが、やはりこの人は大器と言えましょう。
ドン・カルロ役の大男テノールのミロスラフ・ドヴオルスキーとの互角以上の声量とテクニックは、正しく今が旬ではないでしょうか、この人これから名歌手として名をあげる事は予測できます。しかし、その時はソプラノ歌手の宿命で旬を過ぎているでしょう。当日の東京フィルハーモニーの演奏も何故か何時もより気合が入っていた様に感じ、演出もドイツ風で見慣れたイタリアオペラとは違った雰囲気もぴったり、何時までも余韻の残る公演でした。税金で運営されている「新国立劇場」です。毎度言いますがオペラファンでなくとも音楽ファンであれば行かなければもったいないです。
追記として、今回の公演とは関係有りませんが、 このオペラは長すぎて終わりがどうもスッキリしません。ベルディーが勝手に切ってしまったとも云われていますが、真相を教えて貰いたいものです。