Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 080

1. 最近見つけたお勧めCD
2. 当社新商品2機種の発表
3. 今月のコンサートレポート
   新国立劇場 ヴェルディー/オペラ「オテロ」
   加藤浩子さん主催のパーティーと新国立劇場 モーツアルト/オペラ「魔笛」
4. 最近体験したライブハウス

1. 最近見つけたお勧めCD
今月ご紹介するCDは、ハンス=マルチン・シュナイト指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるヴィバルディー/協奏曲集「四季」であります。
シュナイトさんは、前回のコラム78で紹介しましたように、神奈川フィルの音楽監督を昨年まで務めておられました、その手勢を率いての演奏ですから大変興味を引かれるものであります。しかも、ヴァイオリンのソロを神奈川フィルのスーパーコンマスとして人気絶頂の石田泰尚さんですから、見逃す訳には行きません。演奏は、温かみがあってとてもロマンチックです。そもそもシュナイトさんの演奏はロマンチックが特徴で、その生演奏も今では聴くことが出来無くなりましたが、こうしてCD聞いていると改めてその価値の大きさを実感し、残念でたまらなくなります。このCDの録音も前回のブルックナーと同じ技術者によるもので、大変素晴らしい出来であり、レコード芸術の推薦を受けています。発売元も同じ有限会社ミュージックスケイプであります。

2. フェーズテックの秋の新商品機種2機種に付いて
毎年の恒例として、オーディオ関係の雑誌がその年に発売された新商品の論評記事と優れたものに対しての表彰が行われますので、当社もその対象に与るべく評論家先生諸氏に新商品を聞いて頂かなければ成りません。この時期、我々にとってこの仕事が結構大変で会社のトップたる私が率先してプレゼンテーションするのが礼儀でもありマストである事を承知しておりますが、会社の責任者としての仕事も山ほど有って、全てを賄う事は不可能であり、大半をオーディオ事業統括責任者の斉藤がその任務に当たっていました。
さて、新商品ですが、一つはプリアンプの「CA-3」をバージョンアップした「CA-3Ⅱ」(CA-3マークツウ)、もう1機種が新しいカテゴリーのハイブリッド・パッシブ・アッテネータであります。
プリアンプ「CA-3」は、価格帯以上に押し出しが良く存在感のある商品でしたが、更なる音のシナヤカさ、デザイン、使い勝手などに付いてのご要望が多く寄せられていました。今般、本器を基本として、もう少し価格を上げて「シナヤカさ」を付加し、高音質化を計って、マークⅡとして完成させました結果、当初予定した性能以上に仕上がりましたので、「CA-3」とは別機種として発売することにしました。従って、従来商品の「CA-3」は継続生産し、新商品の弟分として今後もご愛玩頂く事になります。
次に、パッシブATTですが、本器は当社のプリアンプ「CA-1」「CA-3」そして「CA-3Ⅱ」に既に搭載したものであり、このプリアンプからアンプ部を外してATT部分を独立させてデバイスとして進化させたものです。商品名を「コントロールマイスター」と称し、型名を「CM-1」とし、当社の新しいカテゴリーとして発売いたします。
以前にも、この私のコラムでお話しましたが、一般的に音量調節器は入力電圧を減衰させて後段のアンプで増幅して音量の調節をします、そしてその信号をメインアンプに送り出す機能がプリアンプです。この事は、電圧を下げるために電力をロスさせており、ちょうど、鍋料理のスープを飲んだ後に、割り下でその汁を割って増量しているようなもので、音の美味しい部分は熱として損失しています。スープの場合は飲んでしまいましたから、損にはなりませんが、音量調節の場合はロスつまり熱として消費してしまいます。
本器は、音量調節器の入力信号に電力ロスが生じないように、後段への電圧を調整するための素子であり、ハイブリッドパッシブATTと称して発売するものであります。本器は、特許取得とともに横浜市の新技術奨励の補助金対象品目にも合格しております。
本器の諸特性に付いては、カタログに明記されているので、ここでは省略しますが、従来型パッシブATTは入力信号に電力ロスが生じ、出力インピーダンスが高くなります。そこで、ATTとメインアンプとの間でミスマッチングとなり、音質面に悪い影響が出ます。しかし、当社のハイブリッド型はその様なことは無く、従来言われていたような音量を絞ったときの「音痩せ」現象は生じませんし、何と言っても「音」の鮮度は抜群であります。
本器の特徴である「音」の鮮度に付いてお話しましょう。オーディオ機器を論ずる場合、「音」の鮮度は大切な要素と考えますが、オーディオファンの中には「好みの色付け」を求める方もおられます。例えば、ジャズファンは狭いライブハウスでの演奏でも「ギンギン」にPAを利かせて、「まだ足りない」などと私には信じられない事を言い出しますが、これなどは音の鮮度を説明する良い例と思います。
ベースとベースドラムでは音量に差がありますから、ベースにPAと言うのは理解出来るのですが、あえてPA無しで演奏したときのベースの音の抜けは、聞く者にとって実に気持ちの良いもので、ベーシストの腕が問われるシーンなのですが、意外にこの極致を知らないオーディオマニアが多い事も事実です。オーディオ装置に於いて、ベースとドラムが同じパターンで演奏したときドラムの音がベースの音に被ってしまいベースの音が聞き取れない状況時は往々にして音の鮮度が悪い時です。この例の様な、オーディオマニアのジャズファンなどは、「音」の鮮度は無用の世界であり、この「音」を聞いて満足している人は御免です。
さて、この様に考えますと、「音の鮮度」の高い音量調節機を使って、その後段にボリュームエキスパンダーなり、グライコなりを付加して好みの音にすれば良いし、その作業をするに当たり、とてもやり易くて、何より理論的にアプローチする事が出来きます。正しい手段で早く目的に到達出来るのではないでしょうか。昔のJBLの業務用イコライザーを探し歩く手間よりもよほどクリエイティブで知的でカッコいいと思います。
マニアたる者、まず鮮度の高い音を聞く事から始める事をお勧めします。そして、「カートリッジがどうだ」、「メインアンプがどうだ」と論議してみると、音質の基準が明確になり、「好き、嫌い」と「良い、悪い」は別問題であり、その差が明確になり、オーディオマニア同士の相手への気使いも和らぎ、お互いの陰口も消えるのではないでしょうか。
オーディオ機器に於ける音量調節機に付いては、永年に渡って問題視され色々なメーカーや技術者が色々提案しい参りました。当社のパッシブATTもその一部に過ぎないかも知れませんが、入力信号の電力損失を無くすと言う視点で、ハイ入力インピーダンスのロー出力インピーダンスを実現し、高音質として実用化したものは世に少ないと思います。

3. 今月のコンサートレポート
始めに、新国立劇場のヴェルディーのオペラ「オテロ」であります。
このオペラは、シェクスピアの原作を題材にしたものでありますが、原作の第一幕を省略して、「不幸、不運」のエキスをとり出してオペラ化した様な物であり、これ以上に出口の無い不幸を語ったものは無いでしょう。しかも、ヴェルディーの音楽が素晴らしくその不幸を極限まで表現するのですからたまりません。例えば、終幕近くに出てくるアリア「柳の歌」などはオペラを見ない人も知っている名曲であります。
同じヴェルディーのオペラ「ドン・カルロ」の公演で音楽評論家の堀内修さんは出口の無いどうしようも無い悲劇と解説していましたが、この意味で言うと私は「オテロ」の方がその上を行くのではないかと思います。
さて、公演でありますが、演奏が東京フィルハーモニー、指揮がリッカルド・フリッツアでした。この人はメトロポリタンへの客演指揮をしたりで、オペラ指揮には定評のある中堅と言うところでしょう。新国立劇場には3度目の出演になります。出演者は、主役はオテロ役のテノール、デズデモーナ役のソブラノ、そしてイアーゴ役のバリトンの3人が中心となりますが、何時もの事ながら配役は全て外国人で、知人の評論家は嘆いていましたが、アマチュアの私はこれで結構と思います。歌舞伎に白人が出て来て、例え芸は上手くとも「サマ」にならないのと同じと思います。

評論家の加藤浩子さんのパーティーと新国立劇場のオペラ モーツアルト/魔笛
モーツアルト/魔笛は、10/31の公演で、このコラムの10月〆日に当たります。この公演の合唱指揮者であります三澤洋史さんが、たまたまこの日の午前11:30からの音楽評論家の加藤浩子さん主催のパーティーでバッハ音楽のレクチャーをなされ、私はオペラ開演の2:00ギリギリまで参加しておりました。もちろん三沢さんは、2:00の開演に間に合う時間に退場されました。このパーティーの会場が、オペラシティー内のレストラン東天紅でしたから、私もハシゴが可能でありました。
加藤浩子さんは、過去に16回のバッハツアーを開催され、このパーティーは過去に遡って参加された卒業生の同窓会と称しての開催でありました。
そして、三澤さんのバッハのお話は、バッハのコラールに付いてでありまして、バッハが如何に音楽家として優れ、キリスト教プロテスタントに熱心であったかと言う事をご自分で電子ピアノを弾きながら歌いながらの熱演で、大変勉強になったし面白かったレクチャーでした。この様なレクチャーを当社の主催で開催したいものだと思った次第です。
さて、オペラ モーツアルト/魔笛の公演に付いてです。このオペラ一見メルヘンチックな側面がありますが、やはり「徳」を説く宗教的要素の強い作品と考えます。出演キャストに日本人が多いのですが、冒頭に云いました様にメルヘンの世界ですから日本人の容姿はオペラ舞台上問題にならないので、全て日本人でも問題無いと言うのが私の論拠でありますが、当日のキャストは、主演クラスの4人の内3人が外人でありました。演奏は指揮がアルフレード・エシュヴェ、オーケストラは久し振りに東京交響楽団、コンサートマスターが高木和弘でした。指揮者のエシュヴェは新国立劇場初登場でありますが世界の有名劇場に出演している実力者的存在だと思いますが、当日の演奏は空気みたいなと言う表現で、私の能力では表現のしようを欠いております。

4. 最近体験したライブハウス
オペラ ライブレストラン 「トナカイ」
神田駅から徒歩で10分足らずですが、岩本町と言うところがあります。ここにオペラ歌手によるライブ演奏を催すレストランがありまして、先日、オペラファンの知人に誘われて行ってみました。ジャスやポピュラー音楽のライブハウスは東京や横浜には数え切れないほどありますが、テノールやソプラノの演奏を行うレストランは初めてです。このレストランは結構歴史も有るようで知る人ぞ知るの存在のようです。
当日の出演アーティストは予め決まっており、ソプラノ2人とテノール1人で伴奏のピアニストと合計4人でした。出演者の経歴を見ると、全て音楽大学の卒業生でそれなりの研鑽をつんだ立派なプロの方々です。会場は、舞台が有って観客席が舞台を見るのに都合の良いような配置にテーブルが設えてあり、ジャズのライブハウスにはこの様な立派なものは、ブルーノートの様な大型店は別にして、私はお目に掛かった事は有りません。当日の観客は、4人組みの客が6組ぐらいと1人若しくは2人の客が5、6人だったでしょうか。客席の埋まり具合は、50%ぐらいでしょう。
私は、東京、横浜近辺のライブハウスには良く行きますが、この日程に緊張して3回のステージ全てを聞く事は殆ど有りませんで、久し振りに素晴らしいひと時を過ごしました。そもそも、オペラ歌手は大劇場でマイク(PA)を使わないで演奏する訓練をしていますから、この様な小さな会場では楽な発声で演奏しているものと思います。その余裕の様なものを感じつつ鑑賞していたのですが、この歌手の人達は全て永い期間教育を受けた後に、研鑽をつんでいるわけですから、ポピュラー音楽のアーチストとは桁違いに資本が掛かっているはずです。ポピュラーのアーティストと言っても一概には言えませんが、ここに出演している歌手の方々は間違いなく正真正銘のプロであります。これだけの実力を備えた人達がこの小さなライブハウスで演奏する事には、何かの理由がそれぞれにあるのでしょうが、これだけ素晴らしいものを聴きに行かない手は無いとつくづく思った次第です。
このライブハウスは「トナカイ」と言います。ネットで検索するとすぐ出てきますので、オペラファンの方、是非行ってみるといいでしょう。私はここから何も貰っていません。ただ自分の感想を述べているだけですからご心配無く。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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