会長のコラム 224
4月のコラムです。
最近、オーディ機器間を繋ぐAUXラインに平衡型を強調されるマニアの方を多く見かけます。マニアの方々は、趣味の世界ですから何でもありの世界、「俺のシステムは平衡型だぜ!」のご発言も結構ですが、技術的側面から見ても益なしの現象に繋がります事、一言述べさせて頂きます。当社は、MC型カートリッジの平衡型伝送(接続)をマスト(必須)として推奨しております。しかし、全てのオーディオ機器間の接続に平衡型を推奨するものでは在りません事、クドイ様ですが、改めて申し上げる必要を感じて居ます。
録音スタジオなどの多種多様の機器が動作する場所では、平衡型伝送がマストである事に違いは有りません。しかし、我々音楽好きのオーディオ愛好者の試聴環境では、「シンプル・イズ・ベスト」がマストである事から、平衡型伝送の為の余計な付加回路を付ける、この手段は系を複雑にするだけで、音質向上の効果は有りません。要はやらずに済む余計物であると言えます。スタジオと同じ平衡型伝送で、気分良くなるのがマニアの心理となれば、それはそれでハッピーであるから、趣味の世界のオーディオです、余計なカネを使って業界に貢献もありと言うもの、耳障りな話だったかも知れません。
そうは言っても、平衡型に使用するコネクターは、プロの使用するものだけに優れもので、BTS規格として定められており「使ってみようか」と触手を誘われています。一般向けのRCAコネクターと言うのは、誰が言い出した規格なのか、JIS やBTS規格には存在しません。実に不具合でトラブルの多い割に重要なパーツで、始末が悪いのです。
平衡型伝送、不平衡型伝送の技術的根拠は、本コラムでも再三申し上げているので、割愛しますが、異論のある方、納得出来ない方、私は何時でも、楽しくお相手致しますので、当社の試聴室にお越し下さい、私は会長職で暇にしています。
今月の音楽ライフです
4月4日(日曜) 14時開演で新国立劇場に行ってきました。当日の演目は、ストラヴィンスキー/オペラ「夜鳴きうぐいす」とチャイコフスキー/オペラ「イオランタ」の2本立て公演でした。
2本立てと言っても「夜鳴きうぐいす」の公演時間は約1時間、「イオランタ」が1.5時間で休憩時間を入れて終演は17時10分と通常オペラ公演と同じ程度の公演時間でした。
ストラヴィンスキーのオペラは、全部で3曲あると言われ、私の知るストラヴィンスキーの作品は、「火の鳥」がオーディオ機器評価に好都合と言うことで知るだけで、何故か興味が湧かない作曲家との印象は拭えません。この人の伝記で、ワーグナーを貶す筆跡があると言われている事からも、私如き音楽プアー人間でも感じてしまう、そんなストラヴィンスキーのスメルが嗅ぎ取れるのです。
そのオペラ「夜鳴きうぐいす」です。日本の皇帝から贈られる「機械作りのうぐいす」等の場面があり、日本文化を見下している、不愉快な側面を感じるとこともあり、音楽的にも私の理解の外とお答えするしか術は在りませんでした。
一方のチャイコフスキー/イオランタは、私初めて聞くオペラですが、全編通じてのチャイコフスキー節は流石と言うもの、イタリアオペラの基本に忠実と言うか、オペラの基本形に乗っている興味深さを感じます。ストーリーのご都合主義は、チョットやり過ぎの感がありますが、ストレスを感じるこの時勢に、癒されるメロディーは肩の凝らないオペラ入門曲として良いのでは? 何と言っても、メロディーのチャイコフスキーです。
当日の歌手陣は、やはり日本人歌手主体で、歌手陣の実力を改めて知らされ、これを機会に藤原や二期会にもっと目(耳)を向けるべきかと、反省の念に駆られる、重要な思いに至る観劇体験でした。
当日の演奏スタッフとキャスト
オーケストラ | 東京フィルハーモニー交響楽団 |
指揮 | 高関 健 |
オペラ/夜鳴きうぐいす
夜鳴きうぐいす | 三宅理恵(ソプラノ) |
料理人 | 針生美智子(ソプラノ) |
漁師 | 伊藤達人(テノール) |
イオランタ
ルネ | 妻屋秀和 |
アルメリック | 村上公太 |
ベルトラン | 大塚博章 |
イオランタ | 大隅智佳子 |
ブリギッタ | 日比野幸 |
ラウラ | 富岡明子 |
4月17日(土曜) 14時開演で神奈川県民ホールに神奈川フィル定期演奏会に行ってきました。指揮が常任指揮者の川瀬賢太郎、コンサート・マスターが主席ソロ・コンマスの石田泰尚、そしてその横に座るのがソロ・コンマスの﨑谷直人、この布陣で久しぶりの定期演奏会です、指揮者川瀬の力の入れ様に察しがつくと言うものでした。
演奏曲目が、プッツ/交響曲2番「無垢の島」、ブルックナー/交響曲4番「ロマンティック」(ノヴァーク版2稿)の2曲でした。
プッツ(1972)/交響曲2番「無垢の島」は、作曲者も曲名も全く私の知らない曲でした。2001年に書かれた曲で、アメリカ同時テロ(9.11)から受けた衝撃が冷めやらない2001年の内に書かれた曲で、「無垢の島」と言うのはテロを意識しない無防備でナイーブな世界のことを意味していると言います。曲は単一楽章ですが、間をヴァイオリンのカデンツァで区切られ3つの部分で構成されています。作曲年代から不協和音の続く現代音楽をイメージしましたが、決してその様なことは無く、色彩感覚豊かで豪勢なサウンド、使用楽器も多種にわたり、レコード化されたら、オーディオファンの羨望の的になりそうな曲でした。日本初演の曲ですから、これから評価されるのかも知れません。
さて、お馴染みブルックナー/交響曲4番「ロマンティック」です。
この曲の演奏時間は長く75分で、ベートーベン第9より長い交響曲です。そして強弱緩急が激しく繰り返し、それが長く続く曲です。従って、「ながら試聴」には不向きで、じっくりと聞く時間が必要なことから、正直、苦手な曲でありました。その私が生演奏を聴くのは、恥ずかしながら初めての経験でありました。なんと、この曲は評判通りの凄い曲である事を知り、「生演奏」を聞かずに「音を語るなかれ」を実践し、改めてオーディオを語る者、「生音楽」を聴かずして「音を語るべからず」を実践した次第、しかもブルックナーの虜になりそう。既にワーグナー、マーラーの虜になって居り、この先幾ばくかの人生も益々の惜しみつつ過ごすことになりそう。
4月21日(水曜) 14時開演でドニゼッティ/オペラ「ルチア」に新国立劇場へ行ってきました。
このオペラの原作は、英国の文豪・ワルター・スコットの「ランマームーアの花嫁」と言う長編小説で、完成を待たずに病に倒れ、2人の協力者へ口述して綴られたものと言われます。しかし、オペラのストーリーは、極めて単純でありながら、ドニゼッティの音楽はストーリーの神髄を余すことなく表現していると思わされ、それ程に完璧と感じるのです。私、小説は読んでいませんが、ここに演奏される音楽に隙は無く、内容は極めて重く、多くを語るものであります。イタリアオペラ作曲者の中でもドニゼッティは、多作の作曲家で優れたメロディーメーカーであり、特に本作品は当時倒産しかけた名門劇場を蘇らせた実績や、名歌手達が競って歌った実績を持つ作品でもあります。オペラを嫌う音楽ファンでも必ず好きになれる作品と思うのですが如何でしょう。
当日の主役、ルチアを演じるイリーナ・ルングは素晴らしかった、このコロナ禍で良くも来日出来たと感謝であります。
当日の演奏スタッフとキャスト
オーケストラ | 東京フィルハーモニー交響楽団 |
指揮 | スペランツァ・スカップッチ 新国立劇場初登場 |
ルチア | イリーナ・ルング |
エドガルド | ローレンス・ブラウンリー |
ヱンリーコ | 須藤慎吾 |
ライモンド | 伊藤貴之 |