会長のコラム 276
R5年9月のコラム
先日、ショパンの国でオ-ディオ事業を営む会社の社長を当社代理店がお連れになり、当社試聴室のスピーカーを見るなり、開口一番「このスピーカーの音は、私キライです」と言う。これは面白い相手だ、と瞬時に思うのであります。
音を言葉で表現するのは難しいのですが、要約すると「音がパチッとしすぎる」と言う言葉で、私は即時理解しました。
或る面で私も同感でありますが、その様に言い切る事に抵抗を感じるのです。音楽の表現に感性が無いと言うことなのですが、オーディオ機器の基本的性能が確りしていないと再生音楽から音楽の感性を求める事は出来ません。だから、先ず以て分解能の確りしたスピーカーで基本的性能を見(聞き)極めるのです。我々プロとして再生音を評価するとき、音楽の感性の前に有るべき姿を極める事が、技術者としての任務で、物理特性が悪くて音が良い等と言うことは絶対に有り得ない。「物理特性が良いのに音が悪い」これは多い事例で、理屈ばかり熱心で音楽を理解しない、半端なオーディオ技術者が陥る例です。音楽表現の良い装置に物理特性の悪いものは存在しません。これ、オーディオ機器の原則であります。
だから物理特性が良いのに、音楽再生音の音質に納得しないと言う事は良く有る事で、私に言わせると、音楽を理解せずに、良い音も何も有ったものでは有りません。音楽有ってのオーディオを常に意識している事が、我々オーディオ技術者には必須です。「今頃、何を言ってるか」と言われそう、この辺りで、止めましょう。
この社長の言われる事は至極当然な事で「パチッとし過ぎた音がキライ」は当然としても、機器の開発時点で音楽表現を求めることは無理であり、段階を追って極めることが肝要と思いつつ、当社の試聴室には先ず以て、B&W社のスピーカーを設置して「音」を極めることにしています。結果として、わが社の商品は、音楽表現重視の仕上がりとなり、私の思いを叶えて呉れています。
今月の音楽ライフ
新国立劇場の公演は、今月は夏休み? いや10月からの次シーズンに向けての準備か、何れにしろお休みで、10月の新シーズンの初公演「プッチーニ/ラ・ボエーム」が待ち遠しい心境であります。
9/13(土) 14時開演で、横浜みなとみらいホールへ、神奈川フィル定期演奏会に行ってきました。
当日のコンサートプログラムは、多少マニア向けの企画でした。指揮がクレメンス・シュルト、この人はドイツ人で、ワグナーを得意とする人のようです。ドイツを中心にヨーロッパ全土で活躍している人です。
前ステージが、アルチュニアン作曲トランペット協奏曲、トランペット奏者がエステバン・バタラン、この人はトランペット奏者として、業界では名の知れた人のようです。私は初めて聞くのですが、世界各国の主要オーケストラとの共演が多く、当日の演奏曲でも私が聞いた事のない凄いテクニックを要する曲を聞かせて呉れ、当日のコンサートは始めから、何か凄い事が予感されました。
休憩を挟んで、第二ステージが、これまた私が初めて聞く、リストの交響曲108番ファウスト交響曲、演奏時間が何と70分、休憩無しの演奏でした。
当日の演奏曲目は、全て私が初めて聞く曲でしたが、舞台上の緊張感は只者では無い気合を感じ続けるもので、終演と同時にドッと疲れを感じつつの緊張感を受け、昔の初心時代に帰った、何とも心地良い夏の一時でした。