会長のコラム 011
年9月以来音楽の記事を書いていませんが、常日頃、生音楽を抜きにしてオーディオは語れないと一貫して主張している手前しっかり実践して居ります。
11月にサンクトペテルブルグ交響楽団(旧レニングラード)のコンサートでチャイコフスキー交響曲4番を聴いてきました。何と言ってもムラビンスキーの指揮が強烈な印象として刷り込まれた世代です。我々の世代では、ムラビンスキー以外にチャイコフスキーの交響曲は存在しないとまで思っていた人が多いはずです。
その青春時代の期待に緊張しましたが、レコードの音と生の音の違いに圧倒され、演奏の違いが何たるものか、などと言う高尚な興味は瞬時に抹殺されてしまいました。とにかく、すごいオーケストラであったとしか言いようが無い素晴らしいコンサートでした。
12月に入って、神奈川フィルの定期演奏会でこの交響曲が演奏されることになっていまして、サンクトペテルブルグとの違いを味わうべく期待していたのですが、現役社長の悲しさから行く事が出来ませんでした。ただ残念で仕方ありません。
しかし、この12月には、キーシンのピアノコンサートが同じ「横浜みなとみらいホール」で開催され、その素晴らしさによって癒されました。このコンサートのチケットは、決して安くないにも関わらず、アット言う間に売れてしまった事から、この人の人気が半端なもので無い事が想像されると思います。なにしろ、日本公演を追っかけるおばさんファンを目にしたくらいに凄いものでした。プログラムの演奏が終わってから、アンコールに1時間以上、曲にして10曲以上の重たい曲を演奏するのですから、このサービス精神は日本のアーティストに是非とも見習って貰いたいところです。当日の私の席は、前から4番目のど真ん中でピアノの直接音を聞く最高の席を確保しました。ピアノ演奏の場合は少し右に振れた中ごろ寄りの席が良いようですが、私は直接音を聞くために特に拘って席を選びました。
ピアノの場合、レコード(CDとも)に良い録音のものが少なく、(無いと極言される方も居られます)コンサートで生を聞く以外ピアノを聞く術は無いと思っています。
人によっては、ピアノの録音にステレオは不要などと言う人が居りますが、ステレオの原点を考えるとそれは間違いで、私は音場空間の中にピアノの音像が定位する「さま」を実現したいと願っています。
ですから、ピアノの中にマイクロホンを突っ込んで、この世に存在しない音を作り出して聞かせる、それがまた優秀ソフトとして享けている事実も有りますが、私には納得出来ない事で、平に御免こうむります。
ジャズのライブハウスなどでも、良くこの手の手法でPAを行っていますが、広くも無い客席でこれをやられると、ライブよりもCDの方が益しと言う結果に成りかねません。
直接音とPA音が同時に聞こえて気持ち良いわけ無いでしょう、その様に感じるのは私一人では無いようです。