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colums会長のコラム

会長のコラム 076

1. ロッシーニのオペラ「チェネントラ」
2. 神尾真由子コンサート
3. 神奈川フィルハーモニーの6月定期公演

1. ロッシーニのオペラ「チェネントラ」
新国立劇場6月12日の公演ロッシーニ作曲のオペラ「チェネントラ」からレポートします。何と言ってもこの公演は、国立劇場らしからぬ豪華な出し物で、ミラノスカラ座公演と言われても即信用してしまう程の豪華さでありました。テノールが、今、フローレスと人気を二分すると言っても言い過ぎでないシラグーザに加えて現代メゾソプラノの第一人者カサロバとの共演、その上、加えるに、我が国ソプラノ歌手界の第一人者 幸田浩子の出演が加わります、この出演者陣でS席が18,000円ですから信じ難い低価格です。
このオペラは、ロッシーニの脂が乗った時期、つまり「セビリアの理髪師」と同時期に作曲されたオペラで、題材も「シンデレラ物語」でありまして、喜劇調のまさにロッシーニ節そのものであります。ロッシーニのオペラは後世の今日では、軽く見られる傾向にありますが、それは「ベートーベンやワグナーが良い評価をしない言葉を残しているから」と言うのが、大方の原因と言われています。しかし、オペラファンの中にはロッシーニに対する根強い支持者が多く、日本にもロッシーニ協会と言う応援団体が有って、厚いファン層を構成しております、私はメンバーではありませんが、ロッシーニの熱心なファンの一人であります。
さて、当日の公演ですが、「素晴らしかった」、「楽しかった」の一言につきます。オペラ公演中にシラグーザが観客の声援に応えてアリアをアンコールし、大変なサービスぶりでした。カサロバは3月の公演以来今年2度目の観劇でありましたが、これぞロッシーニのオペラと言わんばかりの舞台であり、充分に堪能させて貰いました。
さて、我等がソプラノ歌手、幸田浩子ですがこのオペラでの役柄が意地悪な義姉役で彼女のキャラには合っていませんでしたが、流石はプロです。役どころを上手くこなしていました。たまたま、彼女のNHK-FM放送のレギュラー番組でその事を話題にしいまして結構気を遣って演技をしていたと本人が言っていました。やっぱり私の思っていた事が図星であったと思うと、「俺の鑑賞力もまんざらでは無いぞ」等と思うのも楽しいものです。
彼女のソプラノ歌手としての出来栄えは、流石ウイーン・フォルクスオパーの専属ソプラノ歌手としてのキャリアが光ります。カサロバのメゾソプラノとの掛け合いでは全くと言って良いほどに引けを取っていませんで、流石としか言い様が有りません。観劇の後は、一言で「あー、楽しかった。得した」の思いでありました。
そうだ!オーケストラの事を忘れていました。当日の演奏は、東京フィルハーモニーでいつも気になる管楽器の事も忘れさせられました。管楽器の出番がなかったのかなとの思いもありますが、気が付いたら東フィルだったと言う事は素晴らしい演奏だったと言う事です。この東京フィルは今年の秋から来年年初に掛けて益々良くなると思います。理由は結果を見てからのお楽しみ。コメントする機会があると思います。

2. 神尾真由子コンサート
神尾真由子は、07年6月にチャイコフスキーコンクールに於いて日本人の18年ぶりの優勝と言う事で話題になった人です。ちなみに、その18年前の優勝者は諏訪内晶子であります。私が神尾真由子の演奏を聴くのは受賞記念コンサートのNHK-BSハイビジョン放送によるものでありました。神尾真由子の音楽界歴は、1998年のメニューイン国際バイオリンコンクールに11歳で入賞し音楽界にデビューしていますが、彼女の才能は専門家の間では以前から知られていたようですが、私は名前だけでコンクールの優勝まではあまり興味は有りませんでした。
私が、このNHK-BS放送を見たとき彼女の歌心に満ちた音楽が体の中からあふれ出してくる「様」に鳥肌が立った事であり、これが優勝者か流石だと言う思いと同時にコンサートを聴いて見たいとの思いがこみ上げてきました。このときの演奏は、原田幸一の指揮による日本フィルハーモニーとの共演で、サントリーホールにて行われたものでした、曲目はチャイコフスキーのV協、シベリュウスのV協、そしてタイスの瞑想曲の3曲でありましたが、この若さでこれだけのものを表現出来る才能は「ただ神から与えられたもの」としか思えないものを感じ取り、その印象が、深く後々迄残るものでありました。原田幸一は、バイオリニストで神尾真由子の永年の理解者と言うことで、この日の指揮に当たったものと思います。このハイビジョン放送の録画は、私にとって宝であり大切に保存しており、他人からダビングを要請されるのですが、時期的に1回録画しか出来ない時期のもので、ダビング出来ないのが残念でたまりません。それだけに、この度のコンサートは私にとって待ち焦がれたものでありました。
当日の神尾真由子の演奏曲目は、チャイコフスキーのV協で、演奏は、ロシア・ナショナル・フィルハーモニーとのアンサンブルが抜群に良く、それは、米国ツアーの後と言う事も影響しているのでしょうが、NHKハイビジョン放送で聞いたものより遥かに良いものでありました。この若さでこの舞台度胸を伴った演奏はしばし圧倒されるものであり、今後の彼女の進歩が楽しみであります。ちなみに、彼女のバイオリンはストラディヴァリウスであり、18年前に優勝した諏訪内晶子のものも同様であった事は興味があります。
当日の演奏会場は、横浜みなとみらいホール、そして、オーケストラは2003年にプーチン大統領の肝いりで設立された新しいオーケストラ「ロシア・ナショナル・フィルハーモニー交響楽団」で、指揮は、芸術監督・主席指揮者のウラジミール・スピヴァコフであり、演奏曲目は神尾真由子のチャイコフスキーV協の他に、幻想序曲「ロメオとジュリエット」そして交響曲5番でした。
そして、私にとって、久し振りの海外大物オーケストラのコンサートでありました。このオーケストラに付いてですが、オーケストラの音が良いとか上手いとかの評価を超えて、音楽に独特の魂を感じた事です。嘗ては、ムラビンスキーの5番に痺れましたが、この「ロシア・ナショナル・フィル」にもそれと同じ香りを感じ、同じ感動を覚えてしまうのは不思議であります。
この交響曲5番は、「歌謡曲」と暴言を吐くファンも間々居り、そのように思わせる演奏もありますが、ムラビンスキー同様にこのオーケストラの演奏も高い次元の音楽表現を持ったものであり、私としては久し振りの感動ものでありました。

3. 神奈川フィルハーモニー定期公演
4月から始まった、神奈川フィル定期公演も今シーズン2回目の演奏会となります。5月が休みであったので、6月27日(土)が第2回目で、前回に続いて新就任の常任指揮者 金聖響 の指揮によるものでありました。
最初の演奏曲目が、横浜開港150周年記念委嘱作品で武智由香作曲の「オーケストラの為のオ・ルミエール・タン」でした。横浜在住の私にとっては誇りに思う事でありますが、この曲、何とも眠気を誘う曲でして午後2時過ぎの眠い時間帯ですからよけいです。コンサート会場では眠らない努力が大変でした。
続いての演奏が、ハイドンの交響曲100番「軍隊」、ワグナー「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」、そしてドビッシー「海」でありました。
いよいよ、金聖響もオーケストラとも馴染んできたようで、この人のカラーのようなものが感じ取れるようになってきました。一口に言うとオケの音に厚みが出て、弦の音が変わったと言う事もありますが、私の感じは、聞き手に音楽を面白く、或いは印象深く聞かせる作り込みに力を入れているように感じます。元々、ハイドンの曲はモーツアルトの匂いがしますが(表現は逆かも)、金の演奏はよりモーツアルトに近い感じがする仕上がりでした。ワグナーの演奏はより引き込まれる緊張感とこれから何かが起こる予感の表現が緊迫感を以って演奏されていました。前任の現田さんと比べて、より音楽を大衆にわかり易く伝える努力がなされているように感じます。これがこの人の集客力に繋がっているのでしょうか、開幕前のプリ・トークも関西弁混じりのユーモアたっぷりで、観客も楽しんでいましたし、定期演奏会でのアンコールまで付いてのサービス精神は抜群でありました。
今シーズンは、不況風をまともに受け、自社の業績低迷に加えて、贔屓の神奈川フィル主席コントラバス奏者の黒木さんの退団などで、ブルーな気分でありましたが、コンサート会場に来てみると、その気分も紛れてアルファー波が出ているのが感じます。今の様子では、神奈川フィルの来シーズンには演奏内容がもっと充実するような予感を感じます。そして、当社も今シーズン停止した定期演奏会プログラム「そのりて」への広告掲載も復活したいものだと願っています。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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