会長のコラム 211
3月のコラムです。新型コロナウイルス問題が、益々深刻になってきました。3月の売りは2月以上の減少が予測され、些か気が滅入ります。世界経済に及ぼす影響が問題視されています。当社の経営には今のところ影響は有りませんが、政府の企業支援などと大きく報じられると、やがては我が身にも、などと余計な心配が涌くと言うものです。
新国立劇場の公演も中止となり、3月は全ての音楽鑑賞スケジュールが無くなりました。劇場担当者の忙しさを覗き見ると大変な騒ぎです。
私の入居する高齢者マンションも部外者の出入りが厳しく管理され、館内のイベントは全て中止となりました。入居者は、何もすることが無く時間消化に苦慮しています。私は過去に撮り溜めたNHK の音楽番組の整理に絶好のチャンスとばかりに、励んでおります。いずれ、私も介護の身となるので、その時の為に映像をHDD に移し、検索の容易化を進めているのです。その作業中にも、ついついソフトの内容を観てしまい、ここで作業が止まってしまう、それも元気だからそうなるのですが、その内に、好き者を呼んで音楽談義などを夢見ています。
今月の音楽ライフは、残念ながら書けません。この際ですから、毎号遠慮しがちの、オーディオ技術に関する話をすることにします。
私、技術者としての社会人時代は、アナログ技術での計測技術者でした。当時の計測機器は米国のヒューレット・パッカードがダントツのレベルでしたが、デジタル技術の進化に伴い、学校で習った理論が机上の理論で無くなり、計測可能な理論として実用化され、「サイン、コサイン、何になる」などと言う流行り歌が歌われた時代を一変しました。そうなると、旧来のトップメーカーで有ったヒューレットはアジレントとブランドを変え、業態までをも変えてくる。業界はデジタル一色と化して、アナログ技術の出番は全くと言う程に業界から姿を消しました。
オーディオ機器もデジタル化へと進みますが、人間の感性はそれ程単純では在りませんで、最近ではアナログ回帰等と言われ、アナログレコードが見直されています。
音楽に関わらず芸術に「良い・悪い」の絶対値は有りません。音楽愛好家が、この点に気が付いた結果が、アナログ回帰と言う現象なのです。企業業績を上げるために、ハイ レゾリューション デジタル技術による再生音楽が、便利で高音質として持て囃されますが、如何でしょうか。デジタル再生の良いところは、手間が省ける(手放れが良い)こと、加えて日々技術が進化し、その都度、新しいフォーマットが誕生し、伴ってビジネスモデルが生まれ、業界は潤うのです。気付けば、優れた筈のハイレゾ デジタル オーディオ。「これ一体何だ! 」 誰が聴いてもアナログの方が良い「音」なのです。
初代のCD によるパッケージ・メディアについて、我々は、44.1kHz のスタンダード規格と呼んでいます。このメディアが発表された時は、アナログ ステレオ LPの黄金期でありました。そこにCDと言う新しいフォーマットが生まれました。このフォーマットも極められないままに、欠陥と称してハイレゾやSACD が出現し、それが現在であります。
歳を感じる、古き音楽愛好家でもあり、技術者の端くれでもある私は、「もういい加減にしてくれ」の心境であります。
その一方で、その旧来CD フォーマットが、最新技術で益々深堀され、新しいフォーマットを俊逸しています。LPレコードとは違った扱いやすさのパッケージ・メディアとして、音楽ファンの琴線に触れるのです。改めて言って置きますが、ハイレゾ フォーマットの音楽メディアは、未だに世に存在していません。
古いものを深堀する技術、やはり芸術に関わる先端技術者は一味ちがうのです。音楽愛好家の方々は、CD やLP 等の音楽メディアが棚に並んでいて、コレクションとして眺めるのも楽しみの一つと思います。特にアナログディスクは、保管場所をとるとか言うけれども、ジャケットを見る楽しさ、レコードをかける時の慎重なる気分は如何でしょう、その時再生される音への集中力が有ってこそ、「音楽への期待、魅力が涌く」と言うものではないでしょうか。
今月は、時間に余裕が有って、余計な戯言を言ってしまいました。異論がある方は遠慮なく仰って下さい。私も勉強最中の音楽ファンです。