会長のコラム 082
毎年、暮れにはその年に発売された商品の中から優れたものを表彰すると言う行事が、オーディオ各誌の恒例として行われます。その影響で12月は、プレゼンテーション作業やら新商品の店頭展示に追いまくられた月であり、その最中に、忘年会や顧客との商談による疲れからと思われる下痢の現象に悩まされる月でありました。
12月のサマリー
1.昨年の新商品プレゼンテーションの過程
2.主なコンサートライフ
金子由香里ラストコンサート
新国立劇場のオペラ/トスカ
日本ロッシーニ協会主催のオペラ・セリア ロッシーニ/湖の女
3.低音再生の話
1.昨年の新商品プレゼンテーションの過程
この年、当社が目指した受賞商品は、ハイブリッド/パッシブATT CM-1とプリアンプのCA-3Ⅱであり、この2機種をエントリーしました。プリアンプの CA-3Ⅱは初期の期待通りの結果でありましたが、パッシブATTに付いては、一部の選者からアンプの入っていない機器はオーディオ機器としての商品ではない、とのご意見を頂くなどで我々にとって波乱含みのものでありましたが、他の先生方からはその音質評価において高いご評価を頂いていたのも事実でありました。そんな訳で目的とした賞の選から漏れてしまいましたが、「評論家が喝采を送る」として評さるに至り、我々の目的も概ね達成したと思っております。確かに、このパッシブATTと言う商品CM-1をオーディオ機器として考えた場合そのカテゴリーの存在には、難しいものが有ると思っています。この商品がケーブルや除震台のようなアクセサリーと言うのとは違いすぎますし、機能から言うとコントロセンターそのものでありまして、アンプの付属しないものはコントロールセンターにあらず、と言われれば、それは考え方でもあり、方針でもありますから仕方のない事でしょう。
当社のホームページでこのハイブリッド・パッシブATT CM-1の特徴を説明していますが、アクティブ素子の無いボリュームコントロールでありながら、電力損失を伴わないと言う優れた特性のもので、当社の考案による特許取得の技術に裏付けられたものです。その音質は評論家先生がご指摘されるように素晴らしいものであり、ご試聴頂いた方やご購入頂いた方々から素晴らしいとのお言葉を多数頂いております。是非オーディオ店でのご試聴をお勧めするものであります。
2.主なコンサートライフ
・金子由香里ラストコンサート
シャンソン歌手の金子由香里と言えば、芸能人離れした実力歌手としてインテリー層に人気があり、私も彼女の歌の上手さには印象深いものを感じていました。
12月5日彼女のラストコンサートと称したコンサートが、横浜県民ホールで開かれ知人に誘われていって来ましたが、彼女の声には既に往年の輝きは失せていました。彼女は、毎年この時期にコンサートを催しており、確固としたファン層を抱えているようで、私を誘ってくれた知人も毎年来ているとの事でした。今年は最後だからと言う事で私を誘ってくれたようです。
私も昔のイメージを期待して行ったのですが、昔のイメージとは遠くファンとは有難い存在と思い知らされ、同時にクラシックコンサート以外でこの県民ホールを訪れてみて、その雰囲気の違いに改めて感慨した次第でした。世の在りようと言うと大げさですが好む音楽もいろいろ、他人の趣味もいろいろ、増してオーディオも色々有って然るべきと、思いを新たにしたものです。
・新国立劇場のオペラ/トスカ
12月の新国立劇場の公演は、プッチーニの代表作オペラ/トスカでありました。オペラファンにとっては至極ポピュラーな曲でもあり、若かりし頃に思い出を多く残している曲ではないでしょうか。
今回の公演は、指揮がフレデリック・シャスラン、この人はメトロポリタン、パリオペラ座、などに出演する傍らマンハイム州立歌劇場の音楽監督を務める現代の実力派指揮者であります。そしてオケが東京フィル、コンサートマスターが三浦彰広でありました。トスカ役のソプラノがイヤーノ・タマーこの人はヨーロッパで活躍する旬のソプラノ歌手であります。オペラの主役男性歌手二人は例によって外人であり、とくにスカルピアの悪役バリトン歌手ジョン・ルンドグレンは声に張りがあり、適役でありました。
何時もの事ながら、舞台装置は実に見事なものでありました。この舞台装置であれば主役の3人が全て白人でルックスの優れた役者である事は舞台効果の上で必須と思った次第であります。
この豪華な舞台装置をプログラムの表紙の写真ですが実物と変わり有りませんので見てください。税金で公演しているオペラですよ。このコラムを読んでいただいている人に是非行ってみることをお勧めします。
・ロッシーニ/オペラ・セリア≪湖の女≫
日本ロッシーニ協会が主催するロッシーニのオペラ・セリア≪湖の女≫が津田ホールで開催されました。この日本ロッシーニ協会と言うのは、音楽評論家の水谷章良氏が会長を務める会で、ロッシーニに関心のある人達の集う会であります。
当日は、会長の水谷さんが解説を勤めピアノ伴奏による演奏会形式の公演でありました。現代でロッシーニのオペラが公演される演目は限られる傾向にあります。ロッシーニの活躍当時は今で言う売れっ子タレントであった事が色々な資料で残されていますが、この≪湖の女≫もそうですが、出演者全てに難しい技能を要求します。したがって、現代的に言うと経済効率が極めて悪い事が、公演を妨げていると思います。
しかし、当日の公演はこれが全て日本人の歌手かと思わせる様な素晴らしい出来で、現代日本のオペラ界のレベルの高さを認識させられ、ロッシーニのオペラの楽しさを再認識させられたコンサートでした。新国立劇場にもっと日本人を出演させろと言うプロ達の声が解るような気がしました。
3.低音再生の話
オペラの生演奏を聴き続けていると、どうしてもオーディオ再生音の低音に不満が生じます。当社の比較的近くにお住まいのオペラファンのお客様がおられます。その方は、タンノイ・オートグラフ・ミレニアムをお使いになっており、アンプは当社のシグニチアシリーズの300Bシングルと845シングルを低音部、高音部としてバイアンプでお使いになっています。
私が言うのも何ですが、これ以上に良い音でオートグラフ・ミレニアムをお使いの方を私は知りません。この方も、常々低音再生を気にされており、それは私の「らしさ」の追求と言う観点で同調できるものであります。
氏は、最近タンノイのキングダムに目をつけ、私に相談されましたが、私とてこのような大型スピーカーは経験が有りません。オーディオ雑誌などでは何千万円もする海外のアンプでないと実力を発揮しないなどと記されています。高音再生はカネさえかければ何とかなると言う自信はありますが、低音となると、やれストレートホーンでなければとか、天井の無限バッフルだとか、ビクターのIK-38が良い、などと色々云われています。私は殆ど全ての良かれと言われるものを聞いていますが、私の「らしさ」には程遠いものばかりでありました。
キングダムに付いては、私も興味がありますので、氏にはやってみないと解らないから、飾りのつもりお買いになったらどうですかと無責任な事を言っていたら、何とほんとに買ってしまったのには吃驚。最初に当社の845シングルで低音部を駆動してみると全然歯が立たない、この方のコネで色々なアンプを接続してみましたがピンと来ません。このキングダムの低音部は100Hzまでが帯域ですから、音質よりも馬力が必要と考えまして、海外製品の1300Wと言う馬鹿でかいモノアンプを繋いでみたところ見事にこの重いコーン紙を駆動するではないですか。待ち望んだ低音が出てきました。そして、100Hz以上の帯域は当社の845シングルアンプで駆動しています。
私は、これほど良質な低音を聞いたのは初めてです
このスピーカーは、重さが130kで46㎝のウーファーが付いており、ウーファーの駆動時でもこの箱は微動だにしません。よく言われることですが、低音再生はある程度箱を鳴らさないといけないなどと言う人もいますが、このキングダムはそんな事は有りません、大口径の重たいコーン紙を力尽くにて駆動するのが低音再生の極意であったか、今のところの私の経験では、これが正解のようです。