Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 083

本号は、平成22年1月を総括して新年号としてのコラム83であります。今月は、NHK教育TVのオペラ・ガラコンサートに始まり、イタリアのベルガモ・ドニゼッティ劇場の引越し公演と続き、音楽ライフだけでも結構忙しい月でありました。
また、新商品 USBオーディオ・インターフェースのデビューを控えて、一部のメディアに情報がフライングしてしまい、その対応に追われて忙しい年明けとなりました。

正月のサマリー
1.新商品「USBオーディオ・インターフェース HD-7A」
2.今月の音楽ライフ
NHK新春オペラガラコンサート
ベルガモ・ドニゼッティ劇場
a.ベルディー/オペラ「椿姫」
b.ドニゼッティ/オペラ「愛の妙薬」
神奈川フィル定期演奏会 ベートーベン/荘厳ミサ曲
3.追記(私事)

1. 新商品 「USBオーディオ・インターフェース HD-7A」
「USBオーディオ・インターフェース HD-7A」は、2月に発売予定の当社新商品であります。本品についてお話します。
本機は、オーディオ商品ではありますが、フェーズテックの従来商品とは変わった傾向の商品でありまして、「フェーズテック デジタル」 のブランドを冠するものであります。
従来DACと言えば、SPDIF(CDプレーヤーのデジタルアウトのフォーマット)のデジタル・アナログ変換器を意味しましたが、本機ではその機能もありますが目的はもっと違ったところにあります。
先ず、本機にはパソコンと接続するUSB端子が付きます。そして高音質再生のために、パソコンと本機との同期を取るための高精度クロック信号発信器を内蔵し、更に精度の高いルビジウムなどによる原発信器(10MHz)の出力を接続する端子が付属します。
本機によって何が出来るか。一つはパソコン付属のプレーヤーでCDを再生すること。またパソコンに接続されたHDDにリッピングされた音楽信号はUSBを経由して本機にてアナログ音として再生する事が出来ます。そうする事により、音質改善を伴った音楽ソフトのアーカイブを作成することが出来、自分のコレクションの保管場所を確保することが出来ます。
二番目に96kHz/24Bitなどの高音質音楽配信をウェブ上から受信しHDDへと記録した信号の再生が出来ます。また、DVDメディアに収録されたリニアPCMによる96kHz/24Bitなどの高音質音楽ソースが、パソコン、USBを経由しての再生が出来ます。
三番目としてMP3などの圧縮音源やインターネット上のストリーミング音源が本機に内蔵されたデータ補完機能を持つK2プロセッサーによって優れた高音質での再生が可能です。
四番目として、一般に言われるDAC機能であります。CDプレーヤーのデジタル出力(同軸、光の2種)を本機に接続する事により、本機の優れた同期信号発生器、特許申請されたアナログ回路、JVCのK2補正回路などによって、今話題の海外のハイエンド機を俊越する高音質音楽質再生が可能であります。
一般的に、パソコンを介すると音が悪くなると思われがちですが、本機の場合、内蔵する高精度クロックがパソコンに送られてパソコンがクロックに対してスレイブとして機能します。しかも、高精度内蔵クロックに加えて、ルビジウムなどの更に高精度な10MHz信号を外部から入力する事によって、スタジオレベルの精度が確保され、高音質再生への効果を更に発揮するものであります。
話は変わりますが、CDをパソコンで再生すると本当に音が良くなるのか、との疑問についてですが、本機はパソコンのクロックの影響を受けずに、データのみを取り出し、内蔵の高精度クロックを用いて再生するからです。ですから、本機のクロック信号を既存のCDプレーヤーに注入すると、音質が劇的に改善されることからもご理解いただけます。
本機の技術は、録音スタジオでは一般化している技術であり、その既成技術を我々音楽ユーザーレベルへの持ち込みを可能にしたのが本機であります。
最後になりますが、本機の販売ルートは常日頃パソコンに馴染みを持ったオーディオファン向けと考えてネット販売を主体とします。従って、従来のオーディオショップでのお求めは価格などの優位性は無くなると思いますので、各位のご理解を頂きたくお願いいたす次第であります。

2. 今月の音楽ライフ
NHK新春オペラガラコンサート
正月3日に毎年行われるNHK新春オペラガラコンサートは、何時も楽しみにしている番組であります。
今、旬の歌手達が一堂に集うのが大きな特徴でしょう。そして私が注目している歌手、林美智子 幸田浩子 大村博美そして森真紀の4人揃い踏みの番組など他では不可能でしょう。特に、大村博美のオペラ「ノルマ」は素晴らしかったと言えます。
大村博美に付いては、以前にも書いたと思いますが、私がこの人の歌を聴いたのが新国立劇場でオペラ「マダム・バタフライ」を演じた時でした。日本人の歌手でこれ程に素晴らしい歌手が居たんだと思っていたところでした。その舞台があった数日後に何と「高輪オペラの会」に出演され、狭い会場で、極めて近い距離での鑑賞は私にとって忘れられない思い出であります。

ベルガモ・ドゼッティ劇場の日本引越し公演
この劇場は、ドニゼッティの生誕地である北イタリアのベルガモ市の劇場であります。このベルガモ市はミラノから50kmほどのところにあり、ヴェローナ、ヴェネツィアに続く街道から少し入ったところにあります。
考えてみると、ミラノ、そしてこのベルガモ、ヴェローナ、ヴェネツィアと東西に繋がる街道には日本でも有名なオペラ劇場が夫々の都市にあるわけで、オペラ環境に恵まれた国であることが理解されるでしょう。それだけオペラ歌手にとって働き甲斐のある土地であり、日本から多くの歌手が研鑽のため、また音楽活動のために生活しています。
今回の演目は、ヴェルディー/オペラ「椿姫」とドニゼッティー/オペラ「愛の妙薬」の2演目でありました。私は、この2演目とも上野の文化会館で観劇しました。
先ず、「椿姫」ですが、主演のヴィオレッタを演じるのがマリエッラ・デヴィーアであります、この人はやや旬を過ぎた感がありますが、今でもベルカント・ソプラノの第一人者であり、その安定した歌唱は絶大な信用があります。当日の演奏ですが、序曲の出だしが乱れます。演奏が続く内にオーケストラが指揮者のテンポに付いていって行ってない感じのまま序曲が終わり、宴会場面に入りますが、デヴィーアが歌う場面にくるとオケが益々遅れてくるように感じ、本来オケが先行して行く場面のはずがと思いながらも、とうとうデビーアが指揮者を睨みつけるようなしぐさに見えるではありませんか。一体どうした事かと思いつつ、やがてオケも本来のペースを取り元して、流石イタリアの劇場と思わせる演奏に戻り、安心するや感激するやで、忙しい観劇でした。
休憩時間に、楽譜の判る友人に聞いて見ましたら、指揮者が悪いのかオーケストラの誰かがミスしたのか判らないが、1小節遅れたと言っていました。当日の公演は、デヴィーアの出来が良かったので全て「良し」とする事にします。
次に、ドニゼッティ/オペラ「愛の妙薬」であります。このオペラの見所聴き所は後半に集中し、オペラには珍しくハッピーエンドでありまして、終演後の清清しさはルンルン気分そのものであります。主役のアディーナ役が、デジレ・ランカトーレです。この人は若くして名声を上げましたが、その後体調を悪くしたとも聞いており、世間ではあまり良く言わない人がおられます。私はその悪い場面に遭遇していませんから何とも言えませんが、当日の出来は大変良かったと思います。オケの出来も前々日のオケとは別ものでないかと思わせるような素晴らしいものでありました、椿姫の公演とは指揮者も異なるので前々日の「椿姫」の演奏は指揮者の責任かなと思ってしまいます。
ランカトーレの出来栄えも見事なものであり、本場のオペラ劇場の日本引越し公演、流石に彷彿とさせられるものでした。

神奈川フィル定期演奏会 ベートーベン/荘厳ミサ曲
私は、このベートーベン/荘厳ミサ曲を「生」で聴くのは初めてでした。レコードは何回と無く聴いておりますが、兎に角長い曲ですから聴くときは部分的に聴く事が多く通して一度に聴く事は殆どありませんでした。やはり、本当に理解するには充分に時間をとって全曲を聴く事が大切であるかを今回思い知らされました。
この曲は、今更、何を言うかといわれそうですが、本当に素晴らしい曲です。特に、当日の演奏から感じ取った事ですが、第4曲のサンクトゥスではコンサートマスターの石田泰尚とソプラノの澤畑恵美のからみが10分ほど続きます。その音色と言いハーモニーと言い何とも心地良い感銘を受けました。この部分も何度となくレコードでは聴いていたのですが、今までのイメージを全く覆す印象を受けてしまい、録音技術の難しさパッケージメディアの難しさを思い知らされるものでありました。
この事をオペラ好きの私のお客様に話しましたら、自分もその様に思っていたと言うことで、ご自分なりに良い録音のレコードを確保されており、紹介して頂いたのですが流石に良い録音であり、この曲の真髄を表現したものでありました。しかし、私の耳に残るあの感激を再現してくれるには至っておりません。因みに、そのレコードは オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団で、EMI社のものですが、印象としてEMIにこれ程良い録音が有ったとは意外な思いでいます。
当日の演奏は、指揮:金 聖響、神奈川フィルコンサートマスター:石田泰尚、ソプラノ:澤畑恵美、メゾ: 押見朋子、テノール:吉田浩之、バス:長谷川顕、そして合唱:神奈川フィル合唱団でした。この合唱団は、アマチァでありましてこの難曲を良くこなしたと思いエールを送りますが、曲の完成度に足を引っ張る結果であった事は免れません。

3. 追記(私事)
正月ともなると、流石に行事が多くこの他にもオペラ歌手の岡村喬生の主催する「みんなのオペラの会」の新年会など面白い話もあるのですが、書き出すときりが無いし、紙面も長くなるとお読み頂く方々に嫌われるのでこの辺りで止めることにします。
2月は、月半ば頃より2週間ほど家内と南イタリアに旅行します。途中ドイツの現地法人に社員の慰問に訪問しますが、大半をイタリア旅行に割いて、この不況乗り切りへの新発想と新事業の手がかりなどを探ってくるつもりです。従いまして、次号は84号となりますが3月になってからと少し遅れての配信となります。
ご期待に添えるコラムを書き上げますので、今後もよろしくお願い致します。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

インタビュー掲載

コラムアーカイブ