会長のコラム 074
1. オーディオ評論家の柴崎功氏のご来社
2. 新国立劇場の楽劇「ワルキューレ」
3. 神奈川フィルの新年度プログラム
1. オーディオ評論家の柴崎氏のご来社
当社のフォノイコライザーアンプ第3弾でありますEA-5は、低価格高性能でのご提供を目的に設計され発売がスタートして、4ヶ月を経過し好調な売れ行きを続けています。本器は、電源トランスをAC12Vのアダプター形式にして供給するようになっています、電流容量的には全く問題ないものの、オーディオ的に考えますともっと奢るべきところであり、我々メーカー人としてはコストの狭間で悩ましいところと考えていました。今般、この点を鋭く突かれたのが、オーディオ評論家の柴崎功氏でありました。
氏は、ご自分で桐の箱(純米吟醸の酒が入っていたとの事)に当社の物より電流容量の4倍大きなトランスに多重ノイズ対策をしたものをL,R別々に電源供給するように純米吟醸酒箱入り電源アダプターを作られ、我々技術陣に提案すべく手に提げて当社の試聴室にお越しになられました。
氏の提案は、電源アダプター部を強化かつローノイズ化し、EA-5をモノラル動作にして左右別々に2台同時に使うと言う事で、柴崎氏らしい発想に我々脱帽でありました。兎に角、音質向上度合いは掛かった費用も2倍プラスアルファーで有りますが、費用対効果はそれ以上である事は言うまでもありませんでした。柴崎功氏曰く、これは純米吟醸の桐箱が良いのだと言う、こんな冗談が、通じるからオーディオは益々面白くなります。
本件の詳細は、音元出版 analog 2009 SPRING vol.23 のP81 に柴崎功氏が寄稿されているのでご覧下さい。
自作電源とモノ動作のEA-5 |
自作電源の内部 | 自作電源の内部 |
2. 新国立劇場の楽劇「ワルキューレ」
新国立劇場は、3月公演が「ラインの黄金」であったのに続いて、4月は「ワルキューレ」でありました。1ヶ月置いて続きに相当する第1日「ワルキューレ」を見るとストーリーの連続性が理解出来てこの楽劇の素晴らしさと偉大さを改めて認識する事になりました。
「今更ストーリーかよ」と言われるかも知れませんが、音楽の専門家でない私としては、細かい言葉のやり取りと音楽との絡みが判ると面白さは倍化します。クラシック音楽の愛好家は大勢いらっしゃいますが、ワグナーは近寄りがたいと言う人は意外に多く。それは、ストーリーの複雑さや一度嵌まると世に言う「ワグネリアン」と証する特殊なファンを連想してしまう等の事も有ると思います。
しかし、楽劇「ニーンベルの指輪」のストーリーが不雑で理解出来ないと言うのは間違いと思います、ワグナーの主張している事は人間の持つ「さが」に付いて、とつとつと語っている事であり、その内容が現代に通用すると言う事が理解できれば、音楽も殊更難しい訳でもなく実に楽しく素晴らしいものであります。今回の「ワルキューレ」では、前回の「ラインの黄金」に出てきた「主紳 ヴォータン」と「正妻 フリッカ」以外は新しい登場人物でありますが、この二人は「ラインの黄金」と同じ配役で出ており、ストーリーの連続と雰囲気を保っています。
指揮と演奏も念入りに「ラインの黄金」と同様に、ダン・エッティンガーと東京フィルでありまして、オーケストラぐらいは変えてみるのも面白かったのでは無いか思う次第でありました。演奏は相変わらず素晴らしいもので、実質4時間半に及ぶ演奏も緊張しっぱなしで、尻が痛く成るのも気が付かないほどの緊張ぶりでありました。しかし、時々トチル演奏もご愛嬌で、同行した友人も私が一幕目の休憩時間にその事を話しましたら、その後の演奏が気になって仕方なかったと言っていました。まあ、言われなければ気が付かないほどに素晴らしかったと言うことで、ハッピーな一日であり余韻を感じつつ終演後に飲むワインの味は格別でありました。
因みに、第二日の「ジークフリート」は新国立劇場の来シーズンのプログラムとして用意されております。この楽劇「ニーンベルの指輪」は、序夜、第一日、第二日、第三日とありますが、夫々が独立したオペラとして楽しむ事ができますから、新国立劇場の来シーズンは9月から始まりますので、税金を使ったオペラ公演を是非観劇して貰いたいと願っています。
3. 神奈川フィルの新年度プログラム
神奈川フィルハーモニーの定期演奏会は、4月から新年度のプログラムとなり、4月25日の土曜日マチネが第一回となります。今シーズンは、100年に一度の不況で不本意ながら、スポンサー企業としての役を下ろさせてもらい、私個人の定期会員として座席を確保しての観賞となります。
今シーズンから常任指揮者が、金聖響に代わり、この定期演奏会はその第一回定期演奏会でありました。この人は、在日韓国人と言う事でありますが、大阪生まれで自然な口調の関西弁はなんともひたしみを感じるものでありました。なによりも、その音楽界に於けるキャリアは小沢征爾の薫陶を受けることや、国際指揮者コンクールでの優勝そして国内外での活躍での評判であり、この人の公演は集客力抜群と言われています。
当日の演奏曲目は、ハイドンの交響曲第101番時計とベートーベンの交響曲第三番「英雄」でありました。演奏は、歯切れが良くスピード感に溢れるものですが、何と言っても弦の音がとても印象に残るものを感じ、これからが益々楽しみになります。そして、定期演奏会でのアンコールは始めての経験でありました。
この神奈川フィルも一流プロオーケストラとしての地位を踏み出したのは、現田さんの常任指揮者就任から始まったと言っても良いでしょう、そして今シーズンの金聖響によって完成の域に進んで行くように思えます。
当日は、公演終了後記念パーティーが行われ、楽団員と共に金聖響も出席し、関西弁でしゃべりまくっていましたが、このファンサービスがこの人の人気の原点なのでしょう、今年39歳と言う事ですから将来が楽しみであり、神奈川の横浜が音楽文化の発祥となるようこれからの活動に期待しています。