会長のコラム 132
芸術の秋、食の秋、天高き秋、何れの季語も似合わない、天候不順の10月でした。気候の良い10月と言う事で、学校の同級会、ゴルフコンペ、コンサートと盛り沢山な10月の行事でしたが何か気か晴れない、それと言うのも天候不順に加えて腰痛に悩まされ通しで、ゴルフの約束をドタキャンで処理 、オーディオだけはそうは行かず、仕事ですからドタキャンと言うわけには行きません。
毎年のこの時期オーディオ雑誌社の年末行事である、当年発売の優秀商品表彰へのエントリーとプレゼンテーションが年中行事として行われ、腰痛を抱える私には重労働でした。
ライフワークとする、チャンネル・アンプシステムも佳境を迎え、難しいと言われる音場定位の解決に方向性が見えてきて、これで一件落着を期待するのですが、結論は少し先へと延びそうです。
音楽ライフは、新国立劇場の公演が、オペラ「リゴレット」と、「フィガロの結婚」の2本、神奈川フィルハーモニーの定期演奏会、そして音楽評論家加藤浩子さんの企画による「ヴェルディ生誕200年」を祝う誕生会、そしてリッカルド・ムーティーによる「ヴェルディを語る」レクチャー公演、これまた盛り沢山な行事でありました。
その他、シーズンの食に付いても語るべき事が多いのですが、これは次回に譲ることにし、誰かの言では有りませんが、「明日の心だー !」と言うことで、次回をお楽しみに。
10月のサマリー
1.新国立劇場(1)ヴェルディ/オペラ「リゴレット」
新国立劇場(2)モーツアルト/オペラ「フィガロの結婚」
2.神奈川フィルハーモニー定期演奏会
3.加藤浩子さん企画の「ヴェルディ生誕200年を祝う」誕生会
4.ムーティー、ヴェルディを語る
5.チャンネル・アンプシステム、完成近し。
1.新国立劇場(1)
ヴェルディ/オペラ「リゴレット」、10月3日(木)19:00時開演で行ってきました。
ミラノスカラ歌劇場の日本公演が終わって日が浅いこの時期に同じ演目を観る機会、は滅多にあるものではありません。
やはりミラノ公演では、主役のリゴレット役が今世界で一番人気のバリトン歌手レオ・ヌッチですから、比較するのが無理と言うものですが、新国立劇場の公演は演出が現代風に加えて、元気のいい若手歌手が主要部分を占めていたので、元気を貰った気がしました。
しかしやはり、ミラノスカラ座の後というのは部が悪いです。
当日のオーケストラは、東京フィルハーモニー、指揮がピエトロ・リッツォで、この人は、エーテボリー・オペラの首席を務めるかたわら、メトロポリタン歌劇場、フィレンツェ歌劇場などに出演しているベテランです、そして東京フィルの演奏も素晴らしいものでありました。
しかし、ミラノ公演は今話題の デュダメル ですから、比較するのは酷と言うものでしょう。それと、東京フィルのホルンは、もう少し頑張らねばと言う事を改めて提言します。
新国立劇場(2)
モーツアルト/オペラ「フィガロの結婚」、10月20日(日)14:00時開演のマチネコンサートに行ってきました。
当日の公演は、第1と第2幕の間の休憩を飛ばして、連続しての公演で1.5時間に渡る長時間公演でした、終演時間の短縮に貢献と言うことですか、結構キツかったです。
演出は、モノトーン的ですが、現代風俗ではありません。ストーリーの進行がスムーズで初心者にも分りやすかったと思います。公演費用の節約とも取れますが、やはり、モノ・トーンで無く、オーソドックスな舞台装置であって欲しいです。
このオペラは、プリマドンナオペラでは有りませんから、誰が主演と言う事はないのですが、フィガロ、スザンナ、伯爵、伯爵夫人、と言うところが主役でしょう。この主役の一人、スザンナ役で九嶋香奈枝と言う日本人ソプラノ歌手を当てていました。
この人は、新国立劇場のオペラ研修所の出身で文化庁派遣芸術家としてミラノに研修員として研鑚をつんだとの事です。
3人の外人歌手に囲まれて良く歌っていました、日本人特有の声の細さは如何ともと言うところはありますが、新国立劇場も意気な計らいか、経費節減かも知れませんが。
2.神奈川フィル定期演奏会
ホルスト/組曲「惑星」他、10月18日(金)横浜みなとみらい大ホールにて19:00時開演で行ってきました。
指揮が広上淳一、ソロ・コンサートマスター、石田康尚、演目がホルスト/組曲「惑星」でした。この曲は、前月のアルプス交響曲と同様に大架りな楽器構成を必要とし、公演の経済効率は良く無い曲と思いつつ、やはり定期演奏会ならではの演目と思います。
そして、この曲、我々オーディオを趣味に持つ者にとって良く聞く曲であります。それと言うのも、多種に亘る打楽器群を要し、それらが隙間的に演奏されるので、聞こえないままに済んでしまう場面もあり、聞こえる、聞こえない、などの音を追う楽しみがあるからと思います。
生音楽を聴いていると、目の前に演奏者がいるわけですから、動作を追うだけでも聞こえてくるのですから、ここにこんな音が有ったと思いつつ次にレコードを聴く時、そこに注力することで、曲にたいする面白さを理解することに繋がります。
この曲、やはり凄いと改めて思いました。定期演奏会万歳です。
3.音楽評論家 加藤浩子さん企画「ヴェルディ生誕200年を祝う誕生会」
10月11日(金)リッツ・カールトンホテル東京にて19:00時開演で行ってきました。
加藤さんによると、この企画は衝動的に思い付いたと言っていました。加藤さんは、音楽評論家でバッハや、イタリアオペラのツアーに同行する企画を持っています。
当日は、過去に加藤さんの企画ツアーに参加した人達に声を掛けたとのことで、ツアー参加当時の懐かしい人達と久しぶりに会えて話題が弾みました。
加藤さんは、毎年行われるドイツ・ライプツィヒのバッハフェスティバルへのツアーを行っていますが、それとは別にイタリアのオペラツアーも企画され、私は毎年ではありませんが、このいずれにも参加しております。
バッハツアーは毎年決まった時期にほとんど決まった地域に行き、バッハの音楽を聴きに行くツアーで多くのレピーターが参画します。そして、加藤さんはツアー後の参加者へのフォローを怠らない方で、毎年参加者の同窓会と称してパーティーを行っています。
しかし、オペラツアーの参画者を対象にしたパーティーは今回が初めてでした。そのためか、バッハの場合ほどに盛り上がりは欠けますが、アトラクションなどが有って楽しいひとときでした。
話しは変わりますが、当日はこのホテルに宿泊しました。そこで、リッツ・カールトン・ホテルに付いて一言、このホテルの駐車は、バレットのみで一泊6千円です。他のホテルも当然バレット駐車はありますが、ここでは、バレット以外には無いのかどか、バレット以外の利用はやりにくい環境です。
そして、ネットの一休から予約するのと、直接予約するのとでは宿泊料金が結構違いますから要注意です。
加藤さんに、随分高級なホテルで開催しましたねと挨拶しますと、それがなんと、安いからここにしたと仰います。このホテルにはまだ何か仕掛けがあるのかも知れませんね。大阪リッツ・カールトンはたいそう繁盛していると聞きます。最近チョッと問題を起こしていますが、高価な価格ですから怒る人もいるのでしょう。
そして、利用者に若い人が多いのに驚きです。この現象は、如何いう事でしょう。
4.ムーティー、ヴェルディを語る
リッカルド・ムーティーの来日を期して、ヴェルディ生誕200年記念行事の一環で企画れたもので、10月26日(土)17:00時開演で、オーチャードホールに行ってきました。
当初の公演時間は1.5時間の予定でしたが、なんと2時間を越える大熱演でありました。ムーティーといえば、何時も難しい顔をして、偉そうにみえるのですが、当日のオペラに対する情熱を熱く語る姿はイメージと異なるものでした。
当日の出演は、通訳に田口道子、ピアノ伴奏、バリトン歌手、ソプラノ歌手、の人達でしたが、名前はアナウンスのみで印刷物が無いので、思い出すことが出来ません。
舞台の前半は1時間位の間、自分のオペラに関わってきた過去や考えなどがレクチャーされましたが、後半は、オペラ/「椿姫」の第2幕で演奏される、ジェルモン父がビオレッタに息子と別れてくれと言い寄る部分をピアノ伴奏でソプラノ、バリトンの2重奏で演奏しました。
演奏時間が20分ほどで、若い歌手ですが良く歌っていると思いました。そして、ムーティーはこの部分の解説を始めるのです。歌手に対して自分の気持ちを表現する様に指導するのですが、始めの内は観客に理解させようとする姿勢でしたが、熱を帯びて来て歌手指導に展開して行きます。
この部分は歌手の方々も予期しなかった事と思います、更にムーティーの熱が上がってきまして、歌手指導の様相になってきます。更に高じて、なんと、ムーティーが歌いだし、伴奏ピアニストを退かして、自分が弾き出すと言う興奮ぶり。
この番外には我々聴衆は普段見慣れないムーティーの姿と歌手指導と言う場を体験する、明らかに筋書きに無い、意外な展開に楽しくもあり、興味もあり、興奮するムーティーに愛着のようなものを感じて、共に熱くなってしまいました。
その題材が「椿姫」と言うオペラファンにとっては、入門バージョンであるだけに、改めてオペラの楽しさ、難しさ、奥深さを感じたしだいです。
5.チャンネル・アンプシステム 完成近し
前号にて提起した問題点は、結局手付かずで解決に至って居りません。この号では、現状の進行に付いて、もう少し詳しくお話する事にします。
私の試作したチャンネル・デバイダーは、「6dB/oct」CR構成のアナログフィルターです。一般に市販されているチャンネル・デハイダーは、入出力インピーダンスの関係でオペアンプを使いますので6dB/octフィルターでも音の鮮度は失われます。
音の鮮度が失われると出てくる音のステージ感は失われ、音楽が楽しく再生されません。多くのマニアの方々でチャンネル・アンプシステムが上手く行ってないのは、此処に問題がかると思っています。この点の改善に目星をつけて、私はシステムの構築を目指して来ました。
私のミッドレンジにWE-22A+WE-555を用いたシステムでは、このWE-22Aカールホーンの音がウーファー、ツイターに対して1.7m遅れます。それによって、音の鮮度は良いのですが、再生音のステージ感が損なわれます。その装置の写真が下です。
WE-22Aホーンをゴトーのショート・ホーン(カットオフ600Hz)に変えて、各ユニットの時間ずれをユニットの設置位置の調整で試みたのが下の写真です。
この場合のショートホーンに使用したユニットは、WE-22Aと同じWE-555 です。
ここでは、当然ながら各ユニット間の音の時間差は有りません。試聴してみると予想通り音の鮮度を保ちつつ、ステージ感は抜群であります。
私の目的とするチャンネル・アンプシステムは、これにて一件落着と言う事なのですが、当初の目的は音道の長いホーンの使用でした。
それが時間軸のずれと言う問題に遭遇し、この新たな問題に挑戦する事になり、此処まで来て音道の長いホーンでの正しい音を再生しない訳には行きません。
ショートホーンによるチャンネル・アンプシステムが構築出来たことは、用途に限って商品化を企画する事が出来ると思うし、時間軸調整をこれに付加する方向で近々商品開発に着手します。
世に、デジタル音場補正器なるものが数機種販売されています。代表的なものを全て購入しましたが、満足の行くものに遭遇しませんでした。しかし、問題解決の可能性を持ったカナダのデックスと言うメーカーのものに遭遇し、結論まではもう少し追い込む必要がありますが、その結果を出して、後日、本紙面にてレポートするつもりです。
そして、私の提唱するハイブリッド式アナログ・チャンネルデバイダーとデックスの長所を生かした、優れたチヤンネル・テバイダーへと昇華させて、本件を落着させる予定です。