Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 111

このコラム111は、商売が低調となる「ニッパチ」現象の2月のものであります。
今月のコンサートは、定例の神奈川フィル定期演奏会、新国立劇場の沈黙、そしてみなとみらいホールでの「マタイ受難曲」と戸塚区民オーケストラでした。
今月は、商売低調の影響か、落ち着いた雰囲気のスケジュールでしたが、それでも「積み残し懸案事項」の消化には及びませんでした。
その「積み残し懸案事項」最右翼、ライフワークと位置付けた、写真のチャンネル・アンプシステムです。リアルサウンド社のデジタルイコライザー「コネック」の導入によって一件落着したはずのその音に今一納得が行かないのです。周波数特性、位相特性はデジタルイコライザーが補正してくれていますから、理想的な物理特性になりました。
確かに音場定位や奥行き感は申し分ないし、音質もF特フラットですから言う事無しです。人に聴かせてもお世辞とは思えない意見で、素晴らしい音と言います。しかし、私としては一口で言うと、縛られた音、自由に弾まない音、鮮度を感じない音と言うことで、改善に向けて引き続き継続作業を続けなければなりません。と言うことでこれからも、レポートする事になりましょう。
知人の紹介で、と或る音楽評論家の保有する貴重なLPの音源をCD化して欲しいとの依頼が有りました。お預かりした音源は、全てロッシーニの作品で、オペラや弦楽合奏などの、私の知らないものばかり、その音源を見たとたんに、俄然とファイトが沸いて来ましての取り組みでした。

2月のサマリー
1. 積み残しの懸案事項 チャンネルアンプシステムのその後
2. 貴重なロッシーニ作品、LP音源のCD化
3. 新国立劇場 松村禎三/オペラ「沈黙」
4. 神奈川フィル定期演奏会、マーラー交響曲第1番
5. ライプチッヒ・ゲバントハウス/マタイ受難曲
6. 戸塚区民オーケストラ 創立30周年記念コンサート

1.積み残し懸案事項 チャンネルアンプシステムのその後

チャンネルアンプシステム

上記の写真とブロックダイヤは、取り組み中の拙宅チャンネルアンプシステムで苦戦中のものです。写真のセンターウーファーは、動作していません。
デジタルイコライザーのコネックは、システムの裸特性の±6dB範囲内をフラットに補正する機能を備えています。同時に周波数レンジ間のSPユニットの相対位相を揃える機能を持っています。
ですから、システムの初期特性がこの範囲い内に収まる様にアバウトに調整しておけば、デジタルイコライザーが正確に補正してくれます。何も苦労せずにチャンネルアンプシステムを構築出来ると言う事です。
その特性的に完璧に補正された「音」を聞いて見ますと、冒頭に申し上げました様に私的に納得し難いものなのです。
コネックのイコライザーを外してみますと、音は束縛から開放されて、のびのびと弾み、鮮度の高い音がバリバリとでてきます。しかし、その音は、私が求める音場定位の再生に難があります。従って、このイコライザーが補正する数値と同じ状態になるように、アナログ的に物理特性を調整すれば良いと言うことが解ってきます。
コネックに付属する周波数特性測定機能を用いて、拙宅システムの裸の特性を計測してみると、WE-555+WE-22A(当システムの中域)の特性が8kHzまで伸びていない事と、左右で特性と音質が多少異なる事が解ります。また、ゴトーのツイターSG-16BLが8kHzをカバーしていない事が解りました。更に、ウーファーの200Hz辺りの谷と400Hz辺りに山があります。
その原因を考えてみると、夫々に心当たりが思い浮かんできて、どう解決するかポイントを考えてみました。中域と高域の繋がりですが、中域のユニットWE-555の右側ユニットをエール音響の遠藤さんに修理して貰った時に、「左も同じように再生した方が良いのでは?」と言われたのを思い出しました。
ゴトーのツイターは左右同時に修理しましたからチャンデバの常数選択で対応する積もりですが、悪くするとこの間にもう1チャンネルユニットを追加と言う事になるのかも知れません。
次に、ウーファーと中域ユニットの繋がり問題です。400Hz近辺の山は、中低ユニットの下限カットオフより少し高域で、ユニットが効率よく動作し始めた辺りで、ウーファーの音圧が落ちていない問題です。そして200Hzの谷はWE-22Aホーンの減衰特性が加算されて谷を形成し、特性を一層乱していると思われます。
ウーファーのアルテック416については、そもそも、この箱自体がフォステックの40cmウーファー用の300ℓものを調整せずに使用したのが原因と思われます。
こうして、考えて行くと、オーディオと言うのは実に悩ましくも面白い趣味と思います。何かを対策している間は音楽を聴くことは出来ませんが、解決した時の音が醸す音楽を想像しながら、先を急ぐのでありますから苦痛にならない。このレポートを書いているだけでも、皆様に申し訳ないと思いつつも楽しくなるから不思議です。
この先も、ご期待頂きまして、続けてのお目通しをお願い致します。
補足しますが、チャンネルデバイダーは、CRのみの6ddB/octです。素子の入口出口にはインピーダンス補正のアンプが無いのがミソであります。これは、当社のハイブリットATTを使用するから出来る事で、普通の抵抗系では不可能です。特徴は、系が極めてシンプルになり、音の鮮度を失いません。次回はこの辺りの事に付いても触れたいと思います。

2.貴重なロッシーニ作品LP音源のCD化
アナログ音源のCD化には色々な方法があります。最も手軽なのは、2万円程度でアナログプレーヤーとCD録音機/再生器が一体になったレトロ調卓上蓄音機もどきと言うのがあります。これでも目的を達する事はできますが、資料の保管とか音源の本質を理解するには充分では有りません。
次に、CD録音機と言うのがあります。アナログ音源をデジタルに変換するADCが一体化されて組み込まれています。これは、レトロ調卓上蓄音機もどきよりも本格的でありますが、もっと記録品質を上げるにはこのADCを専用器として外部に繋げる必要があります。
更に、品質をあげるには録音機とADCに個別に搭載されている同期信号を高精度にして外部に設ける必要があります。
当然の事ですが、アナログ再生にはそれなりのグレードのものを使用しないと、音質品位を上げることは出来ません。たまたま、当社の新商品企画のMONOカートリッジ試作品が出来たところで、ますますファイトが沸いて来たと言うことで、早速これを使用しました。
ターンテーブルは、Σ5000、ADCがJVC-K2スーパーコーディングに使用されているフェーズテックADC-500、外部クロックがアンテロープ、CD録音機がヤマハ CDR-1000、と言うスタジオ機器の使用に及びました。
方法として、アナログの再生音をコンピューターを通してROMに記録し、ここで編集してCD化すると、出来上がったCDにミスの無い、使い勝っての良いものが出来るのですが、私の拘りで、いきなりCD-Rブランクメディアにダイレクトカッティングを行いました。
失敗すると振り出しに戻ると言う緊張の作業をあえて実行することにより、高音質化を計ったのですが、果たしてそこまでやる必要があったのか、疑問がのこります。これは、商売ではなくあくまでもマニアの拘りと言うものであります。
お預かりしたLP音源は10枚ほどになりますが、内容は控えさせて頂きます。

3.新国立劇場 松村禎三/オペラ「沈黙」
2月15日水曜、新国立劇場中劇場にて6.30開演で行って来ました。
このオペラは遠藤周作の小説「沈黙」を松村禎三がオペラとして作曲したものです。プログラムの解説によると松村がサントリー音楽財団から作曲依頼されたのが1980年で完成したのが13年後の1993とのことです。私自身としては、R・シュトラウス以降のオペラは理解出来ない面白く無いものとの思いがありますから、行きたくなかったのですが、シーズンセット券を購入しているためにチケットが送られて来ているので、勿体無いし、事前の評判も良いので「まあ、行ってみるか」程度のお出かけでした。
公演の行われた新国立劇場の中劇場は、贅沢な劇場でありましてオーケストラピットにはフルオーケストラが入り、観客数は700人程度が限度ではないでしょうか、従って音響は実に理想的な響きであり、舞台の見通しも先ず以って人の頭で見えないと言う事はありません。この劇場は、2度目の観劇となりまして前回はヘンデルのバロックオペラを鑑賞し、大変感激したのを覚えています。
当日のオペラ「沈黙」は、プログラムの解説によりますと、音楽的に良く出来た作品との事ですが、私には全く理解のおよぶものでは無く、この中劇場の贅沢さの中で音楽を聴くと言うよりも「音」を聞いていました、当日の演奏が東京交響楽団で例によって素晴らしい弦楽器群の「音」でありますから。
当日は、初日の公演でしたから、音楽評論家やNHKに出てくる見慣れた方々の姿が目に付きました。しかし、現代音楽のメロディーと言うのは毎度の事ながら面白く無い、この出演者たちは2度と同じメロディーを奏する事が出来るのか、などと極めて素人的な疑問が湧いてきて、現代音楽と言うのは「楽しくも悲しくも」何も感じない代物である事を再認識した次第です。

4.神奈川フィル定期演奏会 マーラー交響曲第一番「巨人」
横浜みなとみらいホールにて2月17日金曜午後7時開演で行ってきました。演奏曲目は、第一ステージがベートーベンP協第1番で演奏が今旬のピアニストであります横山幸雄、そして金聖響指揮によるものでした。横山幸雄のピアノは、流石と言うものでありまして、客席からの声援もひと際大きなものでありました。
さて第二ステージの本公演メインであります、マーラー交響曲第一番、ポピュラーな曲ですが、これは大作であります、聴く時は構えてしまうのが常であります。神奈川フィルの演奏は、実に素晴らしく、1時間に及ぶ演奏中は身動きも出来ずに金縛り状態で聞き入ってしまいました。
改めて思うのですが、自室オーディオルームにてLPなりCDを聞いていると、いくら良い曲良いソフトであっても1時間に及ぶ大曲となると全曲に渡ってこれだけ集中することは出来ません。お茶を頂いてみたり、新聞の記事や仕事を思い出したりで、途中でやめてしまったりもする、それが可能と言う贅沢もあるのですが、やはり、これは生演奏の力であり音楽の宿命と言うものでしょう。
特にマーラーやブルックナー、のような大編成の大曲と言われる曲は、絶対に生演奏を聴かないとその本質を理解することは出来いと思うのです。オーディオファンの方は積極的にコンサート会場に足を運んで貰いたい、生演奏を聴かずしてオーディオを語ってもらいたくない、とは言え雷の音やSLの音を聞くのもオーディオですが、この趣味の方々は例外なく現物(生)を聞いていますから、音楽ファンを自認する方々は生音楽に接する機会を出来るだけ多く作って貰いたいものです

5.ゲバントハウス バッハ/マタイ受難曲
2月24日土曜 横浜みなとみらいホールにて午後3時開演で行ってきました。とにかく素晴らしい曲、素晴らしい演奏であり、自分がバッハを理解出来る趣味を持って良かったとつくづく思うコンサートでした。
この曲は、賛美歌の集大成と言えるのではないでしょうか、合唱は無論ですし、バイオリンソロと歌手の絡みやフルートとの絡みなどなど本当に痺れます。自分の葬式にはこの部分を演奏して送って貰いたいと思う箇所がありますが今は言う訳にはゆきません。
当日の演奏は、ゲバントハウス管弦楽団と聖トーマス教会合唱団、指揮がゲオルク・クリストフ・ビラート言うこれ以上バッハのマタイを語るに価値あるコンビは無いと思うのであります。
そのコンビがみなとみらいホールで演奏すると言うことですから、長生きしていて良かったとつくづく思うしだいです。先ず、指揮者 のビラーですがトーマス教会カントールとしてバッハから16代目であります。そして、合唱団がその聖トーマス教会合唱団であり、バッハがカントールを勤めた27年間を含めて800年の歴史を持った合唱団であります。
オーケストラがライプチッヒ・ゲバントハウス管弦楽団、ご承知のように世界最古のオーケストラであり、メンデルスゾーンが音楽監督であった時代にバッハの音楽を蘇らせたと言われております。歴代の音楽監督にはニキシュ、フルトベングラー、ワルター、コンビチーニ、ノイマン、マズア、プロムシュテット、そして現在はシャイーと言う具合で、世界最古に相応しい実績と言えましょう。
加えるに、当日のコンサートには日本語字幕が付くことは何にも変えがたいものと言えましょう、この曲こそ字幕の存在が曲の演奏に重要であります。
当日の演奏で特筆すべき事として、合唱団の声量が信じがたく大きく、日本のプロ合唱団とは比べようの無いものを感じました。また、ビオラダガンバ、チェンバロ、バイオリンなどのソロ演奏などもその音量は、我々の常識を逸するものであると感じたのですが、専門家はどう見るのでしょう。
みなとみらいホールと言う優れたホールでの演奏は、きわめて貴重なものと思いつつ、すっかりリフレッシュした気分で土曜の夕刻を向かえ、お馴染みのすし屋でこれまた家内共々、この平和は何時まで続くのか怖くなりました。

6.戸塚区民オーケストラ 創立30周年記念コンサート
私は、常々アマチュアのオーケストラは時間の無駄と考えて行かないことにしているのですが、今回はチェロ奏者の古川展生の出演とみなとみらいホールのオルガンが聞きたくてあえて出かけてきました。それと、久し振りの井崎正浩の演奏もです。
この日は、私の懇意にしている元TDKの常務であられた江崎さんの絵画個展が銀座の画廊で開催され、その初日でありました。この年になって1日に2つのイベントに行くのはチョッときつい感じでしたが、あえて両方をこなしました。
古川展生は、都響の主席奏者であり、私の好きなドヴォルザークのチェロ協奏曲を彼が弾くのでゆきましたが、期待に沿ったなかなかの名演でした。バックの戸塚区民オーケストラも良く付けていましたが、個々の楽器奏者の技量は如何ともしがたく、練習によるアンサンブルの努力は流石と思いましたが、仕方ない事でしょう。
そして、当日のメインプログラムでありますサン=サーンスの交響曲3番オルガン付きですが、オーディオマニアの方々は、この曲の音源を以って低音の豊かさや性能を評価する風潮があります。
しかし、実際に生を聞いて見ますとそれ程吃驚するような低音は感じません。もちろん、聴く場所によって響きが異なると思いますが、どうもオーディオ機器による低音とは大分違います。地を這う低音とか、風圧を感じる低音などと言いますが、ここ横浜みなとみらいホールでの低音はもっと音楽的であり、オーケストラとのハーモニーが程よく響く心地よいものでありました。
それにしても、最近のアマチュアオーケストラは上手になったものです、私も認識を改めねばなりません。しかし、個々の技量は如何ともなし難し、と言うところはあります。特に管楽器はソロとしての出番が多いだけに目立ちます。あとは、観客の品位が些か問題ありと言うところでしょうが、それも結構気楽な雰囲気で良いのかも知れません。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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