会長のコラム 088
1. 神奈川フィル定期演奏会
2. コントラバス奏者 黒木岩寿さんのライブ
3. 神奈川フィル40周年記念演奏会
4. オーディオ機器の音創り
1. 神奈川フィル定期演奏会
今シーズンの2回目に当たる定期演奏会は5月21みなとみらいホールにて行われました。
指揮が、ローゼン・ゲルゴフでこの人は、ウイーン国立音楽大学で学んだあと、小澤征爾に認められタングルウッド音楽祭に招待されており、その経歴は金聖響の後を追うような金の後輩に当たるもので、今回の公演に於けるローゼン・ゲルゴフの出演も金の招待もしくは提案によるものと思われます。
指揮者のローゼン・ゲルゴフの希望で日本の作曲家の曲を演奏したいと言う事で、池辺晋一郎作曲による「照葉樹林」と言う曲が演奏されました。曲は9分程度のものでしたが、現代音楽そのもので、私には理解出来無いもので有りました。当日は、作曲者の池辺晋一郎が会場に来ておりその席が私の直前でありまして、スポットライトの余光が私にも当たり眩しかったです。氏は、その後の自分の曲以外の曲もコンサートの終演まで熱心に鑑賞しておりました。
さて、その他の演奏曲目ですが、ショパンのP協2番を仲道郁代が、そして、ベートーベン/交響曲6番田園の2曲が演奏されました。私は、仲道郁代と神奈川フィルそしてローゼン・ゲルゴフと言う組み合わせによるショパンのP協に特に期待しておりましたが、その演奏は予想通りのスリリングな名演で鳥肌が立つ思いの緊張した観賞は久しぶりのものでありました。交響曲ベートーベン/「田園」ですが、この重たい曲をよくぞ初顔あわせで取り上げてくれたと、定期演奏会会員へのサービスと言うか聴衆への取り組みに主催側の熱意が感じられ、久しぶりに充実したコンサートにこれこそ定期演奏会の醍醐味ではなかろうかと思うものでありました。
2. コントラバス奏者 黒木岩寿さんのライブ
私が、贔屓にしている音楽好きのマスターの店、代々木上原のレストランボンテにて、黒木岩寿さんのライブが行われました。当日は、招待客のみで20名ほどの顔見知りの音楽ファンの集まりで、ピアノ伴奏によるコントラバスの演奏でありました。
黒木さんは神奈川フィルの主席奏者を勤めておりましたが、現在では東京フィルハーモニーの主席を勤める傍らサイトーキネンオーケストラやN協へのゲスト出演などもこなす旬の実力コントラバス奏者であります。コントラバス奏者と言うと、ゲリー・カーをイメージしますが、まさしく、黒木さんは日本のゲリー・カーであります。そして黒木さんが言うにはこの大きな存在が自分にとっての励みになる傍ら、如何にゲリー・カーを意識せずに超える事が出来るか、そして自分の演奏を創るかに苦労すると言っていました。その気持ちは、私の息子が絵描きである事からも痛いほどに通じて来ます。
ピアノ伴奏の田中麻紀さんは、東京芸術大学の同級生との事で演奏コンビの実績が永いと言うことでしたが、私は始めての出会いであります。流石に素晴らしい奏者でありまして、黒木さんとのコラボレーションによるスリリングな演奏は聴く者に息もつかせないような迫力であり、時間の経過を忘れさせるものでありました。
当日演奏の曲目にも、黒木さんの気合がにじみ出ており、特にG.ポッテリーニ/メロディーなどは、イタリアオペラのアリアを思わせるような、こんなに良い曲が有ったのかと改めて思わせるものであり、高度な演奏技量も求められる難曲でもありました。安易に日本の歌曲などを演奏して聴衆に迎合しないその芸術家魂のようなものに改めて惚れ込んだしだいでありまして、何時の日になるか、私がスポンサーになってこのコンビの曲をCD化したいと思った次第であります。
3. 神奈川フィル40周年記念演奏会
5/29は、横浜県民ホールに於いて神奈川フィルハーモニーの創立40周年記念演奏会が行われました。演奏された曲目は、マーラー/交響曲2番「復活」でした、この曲は大曲でありまして生演奏で聴くことは貴重な機会であります。ましてこの様な記念行事ですからそれなりに気合が入った公演でありまして、正規のメンバーだけでは足りず、ゲストプレーヤーの参加も有ったと思いますが、合唱団も自前の「神奈川フィル合唱団」、ソプラノが澤畑恵美、メゾ・ソプラノが竹本節子、そして指揮が金聖響、しかも金が得意なマーラーの曲だけあって言う事無しの素晴らしい演奏でした。
ただ、県民ホールと言うのが些か残念でありましたが、このコンサートの性格から考えてこのホールでの公演は仕方の無い事でしょう。なにしろ、県知事、横浜市市長とその関係者の方々そして音楽関係の招待者だけでも大変な人数ですし、神奈川県が運営する県民ホールと言う立場もありますから当然な事でしょう。また、楽器編成も大掛かりですから「みなとみらいホール」ではセットしきれないのではと思います。この県民ホールは、前にもお話しましたがオペラハウスの形態でありまして、舞台にオーケストラが上がったときの音響がチョットと言うところであります。舞台前方にセットされた楽器の響きはプアーに感じてしまいます。しかし当日の熱の篭もった演奏がそれを感じさせませんでした。
4. オーディオ機器の音創り
久し振りにオーディオの話です。CDプレーヤーの出力レベルは、メインアンプを駆動するのに充分な出力レベルを備えており、聞きやすいレベルに絞る事を操作するだけと言っていいでしょう。ですから、CDプレーヤーとメインアンプの間にプリアンプと言う増幅器は本来必要無いのですが、音楽を聴く装置としてセレクター機能やリモコン機能が必要となり、それらが消費する電力を補うためにアンプを入れる結果になります。
音の鮮度を求めるとどうしてもこれ等の機能が邪魔になりますが、鮮度を失う機能と言う考えに立たず、その機能によって音の化粧とか使い勝手の機能を付加する事によって、プリアンプの存在意義が在ると考えますと、そこに我々メーカー側の出番であります。しかし、だからと言って鮮度は音楽鑑賞上大切な要素であり、疎かにはで来ません。その鮮度を損なう機能の最右翼がボリュムコントロールであり、増幅器の質であります。そこで、プリアンプには各社が色々なボリュームコントロールの機能を提案し工夫がなされて搭載されていますが、当社の提案はハイブリットゲインコントロール回路と称する特許取得された技術であります。
ここでこの回路の原理をお話することはしませんが、鮮度を失わないボリュームコントロールが有れば、CDプレーヤーの本当の音は何か、メインアンプの音はどうなんだと言う疑問が明確になるはずです。そこで、当社が提案するものがプリアンプの機能からボリューム機能を切り出して、「CM-1」と言うパッシブアッテネーターの商品化であります。このアッテネーターは、音創りに熱心なメーカーの技術者や販売店の技術者に大変好評でありまして、プリアンプの本質を見極めるツールとして使用されていますが、一部のアマチュアの方々はプリアンプを排除して本器に入替えて聞いておられる方もおります。
しかし、オーディオ機器は音楽を聴くツールでありますから、鮮度だけではなく色気のある化粧も大切でそれがプリアンプの存在価値と考えられます。
今回は、プリアンプの存在価値について敢えて問題を提起して見ました。