会長のコラム 122
新年明けましておめでとうございます。
1月13日は、今年初めてのコンサートで、みなとみらいホールでの[神奈川フィルの名手達]と題するコンサートでした。
正月早々の3連休そのなかびのためか、みなとみらい地区は催し物が多く大混雑でした。30分駐車待ちの挙句に直前で駐車待ち禁止の処置がとられ、コンサートの開演時間には間に合わない事が確定します。
車を置くところも無いので、結局コンサートは諦めてデパートで買い物をして帰ると言う、新年早々の悔しい思いを体験した次第です。
更に悪い事に、14日は成人を祝う日の例の大雪で、被害を蒙られた方々も多いのではないかとお察しつつ私も雪かきで腰にダメージです。
と言う事で、新年早々のハプニングでしたが、遅ればせながら、本年も宜しくお願い致します。健康が続く限りこのコラムを続けますので、私が健在な証しとして、アクセスして頂けると幸甚で御座います。
1月のコンサートライフ
1.黒沼ゆり子プロデュース「アドリアン・ユストゥス/バイオリンコンサート」
2.神奈川フィルハーモニー定期演奏会
3.新国立劇場オペラ公演 ワグナー/オペラ タンホイザー
1.黒沼ユリ子プロデュース「アドリアン・ユストウス/バイオリンコンサート」
1月17日(木)紀尾井ホールにて、19:00開演で行ってきました。当日は、皇后様が会場にお見えになり、満席の客席は万雷の拍手で皇后様をお迎えしておりました。
黒沼ユリ子さんは、日本が未だ豊かでない時代に音楽界にデビューし、国内外のコンクールで優勝を果たして活躍された方です。
1980年にメキシコ市に「アカデミア・ユリコ・クロヌマ」を開設し、青少年への弦楽器教育に情熱を傾け、日本とメキシコの友好関係を深めた功績によって、「旭日小綬賞」はじめとして多方面より表彰をされています。
皇后様のご来臨もその関係からと思いますが、バイオリニストとしての腕は未だに落ちていないし、その健在ぶりをこのコンサートで披露してくれました。
アドリアン・ユストウスは、黒沼さんの愛弟子でこれから世界に飛び出す素質であります。まずは、日本国での実績を積ませたいとの黒沼さんの親心からのものと思います。
当日の演奏の第1部はメシアン、イザイ、ラベルと言った難曲が選ばれ、我々素人は凄いテクニックだなーと思うかたわら、目を白黒させられるもので有りましたが、後のステージでは黒沼さんとのデュエット演奏があり、しかも使用したバイオリンは、東日本震災の被災地で生まれ育った木材を使用して製作したもので、製作者の中澤宗幸氏を支援する「命を繋ぐ木魂(こだま)の会」の楽器であった事であります。
愛弟子の大事なリサイタルにデュユットで演奏する黒沼さんが、そのバイオリンを使って演奏すると言うのですから、黒沼さんの中沢さんへの信頼も唯事ではないし、中澤さんを支える会の方々も唯事は有りません。演奏曲が終わるたびに、その感動が拍手と歓声に支えられ、その感動は皇后様にも伝わったのでしょう、お付きの方々の退場を促す行動を避けておられた様子を痛々しく感じてしまいました。
黒沼さんは、早い時期に演奏活動から遠ざかっておられましたから、私も黒沼さんの生演奏を聴くのは始めてでした。この人は、ステージに出て来た事だけで「サマ」なる人です。根っからのエンターテイナーとはこう云う方ですね、素晴らしい演奏でした。そして、私ことスネタ音楽ファンの爺さんが、これだけ興奮したコンサートは、ここ近来経験が無いのですから、凄い事だったのです。
2.神奈川フィルハーモニー定期演奏会
1月25日(金)みなとみらいホールにて19:00開演で行ってきました。
神奈川フィルハーモニーは、債務超過のために楽団継続が危ぶまれており、楽団員の努力によって寄付金集めのコンサートを開催したり、市民からの寄付金協力に知事を始めとして、関係者が走り回ったりしています。その成果も有って何とか見通しが付いたと聞いています。
今月の定期演奏会289回は、下野竜也指揮で、シェーンベルグ編曲による、ブラームス/ピアノ四重奏曲1番でした。
この曲は、ブラームスの名曲として知られるピアノ四重奏曲をシェーンベルグがオーケストラ曲に作り変えたものです。もともと、名曲の誉れ高い曲であり、シェーンベルグが敬愛するブラームスに対して、その意図を外すことなく、ブラームスが近代的な作曲をすれば、この様になると確信しつつ編曲したとのことです。
私はこの曲の存在も知らなかったし、当然聞いたことも有りませんでしたが、不協和音の連続なども無く、聴き応えのある素晴らしい曲でありました。華やかで俗っぽい第4楽章も確りその俗っぽさを残し、ブラームスそのものでありました。定期演奏会ならではの選曲と言えましょう。
神奈川フィルのバイオリン郡の音は益々聞き応えのする綺麗な音になりました、加えてアンサンブルも良くなったように思えます。そして、コントラバス奏者達に新しい顔ぶれを多く見たのは私だけでは無かったようで、何か勢いを感じる定期演奏会でした。
3.新国立劇場オペラ公演/ワグナー/オペラ「タンホイザー」
1月23日(水)17:30開演で行ってきました。
ワグナー/オペラ「タンホイザー」は、昨年バイロイト音楽祭で聴いて来たたばかりで、それとの比較に絶好でした。
指揮にコンスタンティン・トリンクス オーケストラが東京交響楽団 コンサートマスターがグレブ・ニキティン。指揮者のトリンクスはドイツ出身の中堅で、ウイーン国立劇場にも出演予定があり、最近ではワグナー指揮者として定評を得ている人です、新国立劇場には数回出演している御馴染みであります。
今回の演出は、森を主体にした正当な演出でした。昨年のバイロイトのような化学工場のような「飛んでる」演出ではなく、素晴らしい感動を得るものでありました。特に第3幕のシーンは、絶対に森でなければならないと言う確信を得るものであったと思います。
領主の娘エリザベートがタンホイザーの身を思い、神に召されるシーンなどは、化学工場の機械に身をゆだねるよりも森に消えて行く、その後につづくヴォルフラムの歌うあの唄「夕星の歌」は、化学工場のバックでは「サマ」にならない事が良く判ります。森に消え行くエリザベートその身を案じて歌うこの歌は絶対に森がバックでなければ成らないのです。
オーケストラは、ロマンチックなメロディーを奏で続け、決してドラマチックではありません。この音は、バイロイト祝祭劇場には合いませんでした、新国立劇場の音場空間がベストマッチであったと言うことで、当日のタンホイザーの新国立劇場公演が勝さるものであり、何時までも余韻の残る公演でした。
ドイツのオペラは、ウエーバー以来森を主題に出来上がっているとおもうのです。ワグナーに付いてもタンホイザーに限らず、森の芸術、森が有ってのストリート言えるのではないでしょうか。
それは、ドイツ人以外には理解の出来ない何かマインドの様なものがあるのかも知れません。或いは、もっと音楽を極めると理解できるようになるのかも知れません。それと言うのも、ねずみ演出のローエングリーンが、観る回数が増える事で、少し理解出来るように成った気がするからです。