会長のコラム 168
9月は、芸術の秋の始まりです。八ヶ岳高原ロッジの音楽堂で「ジョン・健・ヌッツォ・テノールコンサート」が、10日土曜に行われ、私のコンサートライフの始まりの筈でした。
コンサート当日の土曜日に中央高速を下ることは、渋滞の常なので前日の金曜に出て前泊し、気持ちに余裕を付けてコンサートに臨み出かけました。ところが、翌土曜の朝に目が覚めると猛烈な「目まい」に襲われ前後不覚に陥ってしまいました。持病の不整脈によるものと思い、計測してみると不整脈に加えて血中酸素濃度が90前後を行ったり来たりで、ヤバイ数値を示しています。今まで、血中酸素不足の現象は未体験でした。ホテルフロントに相談しますと、救急車を呼ぶ以外に近くに医者は居ないと言います。
この現象は、以前、スイスのモンブランのケーブルカーに乗った時と同じ現象の様に思い、ここの海抜高度が1600mでフロントが言うには、時々その様な人が居ると言います。私も歳による影響か高々1600mで高山病の症状が出たと思い、小淵沢に住む息子を呼び出し運転させて小淵沢まで降りると、ケロッと治っていました。再発するのもいやなので当日夜のコンサートは息子に代わって貰い残念ながら横浜に帰る事にしました。
前夜は、ホテルのバーテンがブロック氷から削り出す丸い氷の入ったロックグラスでウイスキーを飲みすぎたかもしれません。バーテンが削るイベリコ豚の生ハム、そして、既に薪ストーブが似合う時期となり、バーの環境に酔い痴れてしまったのでしょうか。それとも歳のせいか、その歳と如何付き合うか、新たなる問題の発覚にそろそろ終活に入れとの警告かもしれません。考えるといやですね。
9月20日から3泊4日で香港に行って来ました。私の亡き父母を祀ったお寺が関係する旅でした。中国本土には、嘗ての日本の高僧たちが修行に渡った由緒ある寺が沢山あり、10年程前にここを訪れた時の事、文革時に破壊され見る影も無い酷い荒廃に中国庶民の心をみました。今回訪れた香港の寺には、その被害が無く温存されているとのことで、訪問したわけです。
私、香港には日本の電子機器産業の華やかな成長期に仕事で何度も訪問していましたが、その後の情報などから香港に行く価値は無いと思っていました。しかし、行って見ると凄い状況で大いに参考になりました。「何事も前向きに考えろ」と経営指南の先生は言います。まさしくその通りであると実感しました。
新しく移転した香港の新空港が立派であること、既に金融センターの役割は昔ほどでない筈ですが、この空港へのアクセスは実に見事であります。そして、利用者は昔に劣らずどころか格段の繁盛ぶりに成長しています。そして市内の騒々しさは私の思う昔のイメージ以上であります。これは、中国本土からの爆買い集団と贅沢を求めにやってくる若者集団と観ました。驚いたことに、市中の昔からの商店の価格よりもデューティー・フリー・ショップの方が1.5倍程高いのです。そして、市中の商店には昔ながらの品ぞろえに見えますが、客足はまばらです。この現象、中国らしい、香港らしい現象であります。
さらに驚くことは、香港とマカオの間に海上橋を建設している事です。この工事が今盛りに行われており、一見して中国の建設ラッシュの凄さが伺えます。加えて、お寺であります。二つのお寺を訪問しましたが、新空港の近く山の上に聳える大仏、この山を登るロープウェイ、そこから眺める新空港の立派な姿、その横を通るマカオへの海上橋工事、以前の香港の姿からは全く想像出来ない姿であります。
中国政府による香港市民の取り込みかも知れませんが、マカオは遊びの場、遊びに庶民を誘導するのか、工業都市に改造する計画か、いよいよ分からなくなった中国の方向は、深読みすると恐ろしい結果が出現するのです。私だけの深読みでなければ良いのですが。
9月17日土曜、神奈川フィルの定期演奏会がみなとみらいホールにて午後2時開演で行って来ました。
当日の演奏は、ウイーンフィルコンサートマスターのライナー・キュッヒルさんのヴァイオリンによるゴルトマルク/V協第一番で、指揮がサッシャ・ゲッツェルでした。
これは、もう最高のコンビであります。二人ともウィーン生まれのウィーン育ち、一歳違いの幼馴染と言うことで、開宴前にお二人の事前トークがあり、興味深く聞かせてもらいました。続く後ステージがマーラー/交響曲5番ですから、この日のプログラムはこれ以上望めないお買い得、素晴らしいコンサートでありました。
ライナー・キュッヒルさんは、今年8月31日でウイーンフィルを定年退職されたとの事、その最初のコンサート出演が、神奈川フィルの定期と言うのも首席客演指揮者のサッシャ・ゲッツェルさんのご縁と思われます。日本贔屓のお二人の演奏は素晴らしかったし、私の若かりし頃のこと、キュッヒルさんの追っかけだった自分にとって、氏のオーケストラをバックにV協演奏と言うのは初めて聴く経験でした。
作曲者のゴルトマルクは、1915年没でマーラーと同世代の作曲家です。演奏されたV協も後期ローマン派の聴きやすいもので、カデンツァなどは、キュッヒルさん好みの曲だと感じ入ったものです。
私が初めて家を建てたのが東京都と相模原市の境に近い古淵で、限りなく町田に近いところ、会社を立ち上げた時期と一致する人生のスタートの地でした。ここも、今では青山学院、国学院大学、日大三高等があって、学生の街になっています。ここに高級ホテル?エルシー(当初は小杉会館)があって何かと重要な地域の行事が行われるホテルでした。このホテルが、ベストウエスタンと言う米国のホテルに買収され、私の贔屓の店が追い出されることになったのです。町田には、まだ数軒の贔屓店が残っているものの寂しい限りであります。ここの日本食レストランが今月で閉店とのことで、思い出を含めて家族で会食し、シーズンの[鱧シャブ]を思い切り食べて来ました。
焼き魚と言えば、家庭の料理でプロの出番では無いと思いがちですが、私に言わせればこれほど難しい料理は無いと言えましょう、秋刀魚の塩焼きにしてもここのシェフ以上に上手に焼く職人は銀座の吉本以外に知りません。そのオーナーシェフの寂しそうな顔が後々まで印象に残り、再起を約束して別れました。私好みの店がここ町田から無くなって行く現象、そして都心のマンションが売れている、これ反面現象で有りましょう。嘗てのドーナツ現象と言われた地域は沈んで行く、そこに残るのは誰かと考えると不安になります。
さて、来月は忙しいぞ。今年発売の新商品へのオーディオ各誌の表彰行事があります。今年もこの賞を取りまくりますぞ! 応援を宜しくお願いする次第です。