会長のコラム 210
2月のコラムです。
中国発コロナ肺炎、続くオリンピック前夜、この特殊事情とも思うが、売り上げ激減する2月でした。この現象はこれからも続くのか、手強い予感がしてなりません。
高級オーディオ機器を標ぼうする当社には関係無い筈ですが、命の安全を脅かすとなると、心理状況への影響は大きく、コンサート会場でも、隣の席に変な人が来ない事を願ったりするぐらいですから、あり得る事かも知れません。
中国への販売を真剣に考え始めた矢先の事件に出鼻をくじかれ、スロースタートに切り替えなければならない、いやな状況に至っています。
チャンネル・アンプシステムのその後と、進捗状況をお話しします。しばらくの間、装置の構成に悩んで仕事が止まっていました。
「ステレオ再生は、演奏ステージでの楽器の位置、恩行き、広さ、高さ、などのステージ再現にある」、この当社の方針から、蒸気機関車の音、雷の音、ガラスの割れる音、大砲の音などの再生もオーディオの範疇であることを否定はしないものの、音楽の再生を求める立ち位置を不動とし、「音楽有ってのオーディオ」を目指す立ち位置を改めて、皆様にご認識頂き、以後の話を進めさせて頂きます。
今は亡きオーディオ研究者であられた、池田 圭先生のシステムは、WE-15A の大型ホーンスピーカーを低音、中音にセクトラルホーン、高音もホーンのオールホーンでした。そして重低音にJVC-IK38を隣接する別室をキャビティーとしてセットした3D方式でした。
そして、高城重躬 先生は、更に大きなコンクリートホーンを天井から下に向け、建造物として構築されていました。その他、当時のオーディオの有名な先生方もホーンでなければオーディオに有らずと、論陣を張られ、一介の回路技術者たる私には、先生方の見識に異論をはさむ力など有りませんでした。
音楽好きの若造たる私も、余裕が出来た将来は、やってみたい憧れの分野であったことに違い有りません。しかし、演奏会への回を重ね、オーディオ機器の進化に接する機会が増えてくると、ステレオ再生への先輩方の考えに疑問を感じるようになり、前出の社是、ポリシーへと進化するに至るのです。
演奏ステージの再現性を求めるには、この大型ホーンでは、映画館の様な広大なスペースでなければ実現は不可能です。前出の先生方の部屋では、ステレオの再現は出来て居なかったことになります。
私の求めるステレオ再生音について、今進めているスピーカーの状況を写真掲載します。ここでは、ユニット毎の時間軸を合わせる事、回析効果を避けることが必須と考え、その為に、試聴位置での音像定位が容易に調整出来るユニットの配置構造物が必要で、その結果がこの写真に至りました。
加えて、チャンネル間の位相問題が生じることから、チャンネル・デバイダーにも手を入れました。そこには、デジタル式では無く、アナログ式であることが、現時点では重要な要素となります。本件は、過去の当コラムにて再三、述べておりますから、割愛させて頂きますが、何れ総括の意を込めてドキュメント化する予定です。それまでは過去の当コラムを繰って頂けると幸甚で御座います。
今月のコンサート ライフです。
2月8日 日曜 14:00 開演で、みなとみらいホールへ神奈川フィル定期演奏会に行ってきました。演奏曲目が、ビゼー=シチェドリン/カルメン組曲、これが前ステージ。そして後ステージが、ショスタコーヴィチ/交響曲第14番でした。指揮が井上 道義、コンサートマスターが石田 泰尚。
ビゼーのオペラ/カルメンは銘旋律の連続で、色々な組曲が作曲されています。中でもシチェドリンは、バレエの舞台用に編曲、作曲したもので、それと言うのも、バレリーナの妻のために企画し、作曲をショスタコーヴィチなどの有名人に依頼したが全て断られ、仕方なく自分で作曲したと言われるものです。
初演まで、紆余曲折有ったようですが、バレエ音楽として素晴らしい曲に仕上がり、当時の巨匠に並ぶ出来栄えは、「不遜な輩だ」と巨匠たちから疎まれるほどに良い曲と評価されました。この曲は、ビゼーの曲を頂いたのですから、名曲に違いは有りませんが、定期演奏会でなければ、聞く機会の少ない曲と言えましょう。
後ステージが、ショスタコーヴィチ/交響曲第14番でした。この交響曲は、11楽章まであります。作曲者は、オラトリオにするつもりだったと言われ、出来あがってからシンフォニズムに溢れると確信して交響曲と名付けたとのこと。この曲を聴くと、ショスタコーヴィチが活躍した時代の悲惨さが滲み出ていて、決して楽しい曲ではありませんが、人生の終局を迎える、我が身の立ち位置を思わされるのは、井上道義と言う才能ある指揮者の表現力もあるのでしょう。
私、この曲のCD、LPとも持ち合わせの無いことに気が付きました。良い体験をし、定期演奏会ならではの選曲に感謝であります。
2月14日 金曜 14:00 開演で、新国立劇場 ロッシーニ/オペラ「セビリアの理髪師」に行ってきました。
指揮がアントネッロ・アッレマンディ、この人は、ミラノ生まれ、ヴェルディー音楽院で学び、フィレンツェ歌劇場でデビュー、「ザ・イタリア オペラ」の典型的な人です。ヨーロッパでの活躍の多い人で、新国立劇場には2008年以来久しぶりの登場です。
教科書にも出て来る有名オペラで、誰でも曲名を知っていると言うもの。フィガロ役とロジーナ役が要ですが、オペラ・ブッファであることから、歌唱力以外の演技力も求められるので、日本人には難しい役かも知れません。当日のキャストは、ロジーナ役以外主役処の4人が外国人でした。
そのロジーナ役が、脇園 彩でこの人は、東京芸大卒業後イタリアへ留学し、藤原歌劇団でデビューしたものの、今はイタリアで活躍する人です。過去、テレサ・ベルガンサ、ヴェッセリーナ・カサロヴァ、等の名歌手の実績が揃う役柄ですが、当日の脇園は素晴らしい歌唱力で聴かせてくれ、新たなロジーナ役を担保したものと思いました。この人は、新国立劇場には過去「ドンジョバンニ」、「フィガロの結婚」に出演しており、久しぶりの新国立劇場出演には、観客の皆さん大満足のようでした。
2月22日 土曜 15:00 開演で、県立音楽堂へ神奈川フィル定期演奏会 音楽堂シリーズに行ってきました。
指揮:川瀬賢太郎、コンサートマスター:石田泰尚、ピアノ:菊池洋子。演奏曲目の前ステージが、モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲、細川俊夫/月夜の蓮、そして後ステージがモーツァルト/ピアノ協奏曲23番でした。
細川俊夫/月夜の蓮は、2006年、モーツァルトの生誕250年を記念して、北ドイツ放送が細川に条件付きで作曲を委嘱したものです。その条件とは、モーツァルト曲と同じ楽器編成で演奏出来る曲ということです。細川が選んだ曲がピアノ協奏曲23番をカップリングし作曲したのがこの曲です。
細川は、生け花に素養があり、これを表した曲とのことです。評論家の白石さんの解説では「かすかにモーツァルトの音楽への憧れが託され・・・」とあり、「緩徐楽章をほのめかす嬰へ音・・・」と有りますが、素人の私には何やら解らない、でも音楽は聴いて良い感じ、癒されれば良い、と思うので、難しいことは言わずに「良し! 」としましょう。