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colums会長のコラム

会長のコラム 186

 2月末〆のコラムです。「ニッパチ」と言って、この時期は小売の荷動きが沈滞気味となります。当社のオーディオ機器の出荷もご多分に漏れず低調でありました。一方、ビジネスの面では、稼働日数が少ない上に、遊び気分と義理の付き合いに翻弄された1月の後始末に忙殺されるのが例年2月の常であり、加えて、今年の2月は何故か新国立劇場の公演が2演目続くのです。身近な仲間からの誘いも多く、「助けてくれー ! 」と叫びたくなる状況でした。と言う事で、2/28公演予定の新国立劇場の月末公演「オペラ/ホフマン物語」のレポートは、次月のコラム187に延期して記載させて頂きます。予めご了承頂きたく。

 今の季節は、私の年齢から推しても、身近な方のご逝去が多いのはやむを得ないのですが、中でも当社の広報をお願いしている西松君の奥様のご逝去には、身の詰まる思いでありました。やがて我が身に迫る事に思いが走ります。西松君は私の後輩でもあり、常日頃より老いの進む私の活動を支えてくれる人材であります。これからは、今まで以上に私の我儘が進むであろうと考えられ、複雑な思いに至るのです。湿った話で申し訳ありませんが、時節柄のことゆえお許しください。

 2月16日金曜 新国立劇場の公演で細川俊夫/オペラ「松風」に19:00開演で行ってきました。この松風と言うオペラは、能のレパートリーの中でも人気の作品を題材に、細川俊夫が作曲したものです。このオペラは、ヨーロッパでは過去50回も公演されているのに本邦初公演と言うからビックリであります。
 能もオペラも物語を音楽と踊りで表現することは同じですから、作曲家細川の創作意図もそこからスタートしたものと思います。外国で50回の過去歴に対して日本初とは一体何なのか、私なりに考察してみます。
 伝統的オペラの物語は「惚れた、腫れた」の内容が多いのですが、能の松風も「惚れた、腫れた」の物語内容に変わりは有りません。
 ヨーロッパの伝統的オペラの物語では、ベルカント唱法により実態を極限まで表現する舞台芸術として進化したと考えます。一方日本の能では精神構造を極限まで表現するものと考えます。オペラ芸術先進国のヨーロッパには無い日本の「能」のエキスが、芸術好きなヨーロッパの人たちに新たな感動を与えた結果と思うのですが、如何でしょう。
 武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」なども一脈通じるのでしょうが、細川の音楽は私には馴染めません。加えて、バレーに興味の無い私でありますから、今更芸術の勉強でもなかろうと思い、この新型オペラには拒否反応であります。
 当日の演奏が、東京交響楽団で日本のもの、それ以外の主要役どころの指揮、演出振付、台本、美術、衣装、照明すべて外国人、主役のキャスト3人が外国人で、「能」のマインドをこのように理解し、海外で評価されたということには、素人の私が口を挟む余白は無いと心得るべきで、やがて将来の人たちが過去を評価するのかも知れません。複雑な思いに至るのであります。

 2月17日土曜 横浜みなとみらいホールにて神奈川フィル定期演奏会に14:00開演で行ってきました。演奏曲目が、ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲、グリーグ/ピアノ協奏曲の2曲が前ステージ、そしてブラームス/交響曲第1番が後ステージでした。指揮が、小泉和裕、ピアノが小山実稚恵、コンサートマスターが石田泰尚でした。
 前ステージのグリーグのP協は、小山実稚恵のピアノ演奏、バックのオケをグイグイと引っ張ってゆく、負けずに付けて行く、一種バトルを感じる演奏は、小泉和裕ならではの指揮によると思います。普通であれば、前ステージは軽い感じの曲なのですが、最初から飛ばす演奏ぶりにすっかり興奮してしまいました。
 後ステージがブラームスの交響曲1番です。これまた素晴らしい演奏で、流石にカラヤン指揮者コンクール1位の小泉和裕であり、その指揮に従い実力を発揮するオーケストラも流石と言うものでありました。ヨーロッパ、アメリカで活躍する旬の実力指揮者として、納得させられた久しぶりの充実生演奏に快い疲れを感じ、演奏者の方々本当にご苦労様との思いから、鳴りやまない拍手は久々のもの、これからの神奈川フィルに期待できる、新たな側面を見る機会となりました。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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